暴食の村 3
「……ん? なんじゃ? 扉が勝手に開いたぞ……」
村長が扉が開いたのに気付いてこちらにやってきたので、俺達は慌ててそこからどいた。
「え……イリアは?」
「うーん……たぶん、この村長が知っているはずだよ」
そして、村長は扉を閉め終わると、それまで座っていた椅子に座り直した。
「ふ……ふふっ……あははっ!」
と、村長はいきなり狂ったように笑い出した。俺もウェスタも同時に驚いてしまった。
「な、なんだ……?」
村長はしばらく笑った後で、なぜかじゅるりと舌なめずりをした。
「聖女か……ウマそうな身体をしておったわい……どこから喰ってやろうかのぉ……腕か、足か……楽しみだわい」
村長はニヤニヤしながら、とんでもないことを口走った。俺とウェスタは顔を見合わせる。
「……えっと、これって……」
「うーん……あんまり考えたくないけど、この村長さん、ちょっと特殊な食事を好む人だったみたいだね……」
「お、おい! どうすんだよ! イリアはどこいったんだ!? まさか、もう食われちまったんじゃ……」
「まぁまぁ、落ち着いて。村長の言葉を聞いただろう? まだイリアは食べられてないみたいだよ」
ウェスタに言われて俺は正気を取り戻す。
それにしても、一つ目からなんていう場所にやってきてしまったのか……まさか、ここで食べられて終了ってことじゃないんだろうか?
「さて……今日は明日のごちそうに備えて、早く寝るかのぉ……年を取ると眠くなるのが早くなって仕方ないわい……」
そういって村長はそのままベッドに入ってしまった。
「え……ど、どうすんだよ!? 村長寝ちまったぞ?」
「落ち着いて、ニト君。村長は特殊な食事情を持った人とはいえ、老人だ。イリアを長時間運ぶことはできないはず。何より、僕達は家の前に待っていたけど、村長が家から出てくるところを見ていないよ?」
「そ、それじゃあ……イリアはどこにいるんだよ?」
すると、ウェスタは得意気にニヤリと微笑んだ。
「つまり、イリアはこの家のどこかにまだいるってことだよ」