異世界の神様事情 1
ウェスタの言った言葉と反して、その街並みは完全に中世ヨーロッパそのものだった。
もちろん、俺は実際に中世ヨーロッパを見たことはないが、あまり突拍子もない状況となっていない。
何が言いたいかといえば、魔法の存在を感じさせないのである。魔法を使っているヤツは見かけないし、魔法使いや魔女っぽいヤツも見られない。
しかし、人通りはかなり多かった。たくさんの人々が道を行き交っている。
また、道に面して多くの店らしきものが並んでいる。この街はどうやらかなり繁栄している街のようである。
「……えっと、ウェスタ。ほんとに大丈夫なんだよな?」
ただ、やはり俺は魔法の件が不安だったので、ウェスタに訊ねてみた。
すると、ウェスタはニコニコと微笑んで俺を見る。
「うん。大丈夫さ。間違いなくこの世界には魔法が存在している。もっとも、ニト君の想像しているように魔法が使われているとは限らないけどね」
「はぁ? なんじゃそりゃ……」
俺が不満そうにそういうのも構わずに、ウェスタはそのまま歩き続けた。
しばらく歩くと、ウェスタは1つの場所で止まった。
「ほら。ここ」
立ち止まった場所は、教会だった。
それも相当大きな教会だ。教会というよりもヨーロッパに存在するいわゆる大聖堂って感じの場所である。
大きく開かれた扉から多くの人間が出て、それと同じくらいの人間がその中に入っていっている。
「デケェな……」
「そうだね。それだけこの世界の神様が信仰されているってことなんだろうけど」
「あ、ああ。で、ここに何があるんだ?」
「ほら、あの部分を見てよ」
ウェスタが指差す先を見ると、教会の屋根の部分になにやらシンボルらしきものが設置されている。それは、燃え盛る炎をかたどったような、不思議な形のシンボルだった。
「ね? 君の住んでいた世界の教会のシンボルとは違うだろう?」
「それはそうだが……違いってこれだけなのか?」
「まさか。ほら、教会の中に入るよ」
「え? 勝手に入っていいのか?」
「当たり前じゃないか。僕達はこの世界の神様なんだから」
ウェスタの言葉に、確かにそうだと俺も納得し、俺達は大聖堂の中に入った。




