居候との出会い
僕「おい、零!朝だぞ」
まだ、重いまぶたを擦りながら、僕は目の前で寝ている少女が被っているタオルケットを力いっぱい剥ぎ取る。
零「う、うーん…まだ眠いぞ小太郎よ。」
そう言って目の前であくびをする少女は、もう一度うずくまろうとしている。
この〜、居候のくせになんだこの態度は!
僕「早く起きろよ!朝飯抜きにするぞ!」
零「わかった、わかったから〜あと五分だけ待ってくれ〜」
そう言いながら、少女はむにゃむにゃと口を動かす。
僕「たく、せっかくの夏休みだっていうのになんだってこんなことに…」
そもそも、単なる大学二年生である僕、神峰小太郎と
目の前で寝ている居候の少女、零との出会いは2週間前にさかのぼる。
ーーーーーー2週間前
僕「あー、今日もアチ〜な」
僕はあの日、商店街の清掃活動に勤しんでいた。商店街といっても活気も人気も少ない、いわゆるシャッター商店街というやつだが、町内会の行事ということもあり、休むわけにはいかない。
僕「ていうか、ゴミ全然落ちてないんだが」
普段から主婦連中が掃除しているためか、ゴミなどほとんど落ちていない。
そのくせ温度ばかり高く、予報だと30度越えとか言ってたな…
主婦A「ちょっと神峰さん、あんた会長に、呼ばれてるよ。」
僕「え?あぁすみません。」
僕を呼んだのは、町内会長の元さんだ。
元さんは昔、国の研究所で「エアロイド」
の研究をしていた人だ。
え?エアロイドって何?
確かに、これについて説明は多少なりともいるだろう。
エアロイドとは、日本と国連加盟国の共同開発により誕生したアンドロイドのことだ。
その特徴は、戦闘機や旅客機など世界各国の飛行機の性能を持つこと。
そして、エアロイドは総じて女の子の姿をしているということだ。
なぜ女の子の姿をしているかは、まぁ国のお偉いさん達の趣味かなんかだろう。
僕「元さん、なんですか?」
僕は元さんの経営する喫茶店のドアを開け元さんを呼んだ。
元さん「おぉー、来たか小太郎。実はお前に預かって欲しいものがあってな。」
そう言って店の奥から出てきた元さんは、奥から1人の少女を連れてきた。
元さん「実はな、こいつをお前さんに預かってもらいたいんだわ。」
にこやかに笑う元さんをよそに、僕は驚きを隠せなかった。
僕「あ、あ、預かるってその子を!?」
元さん「そうじゃが?なに不思議な顔しとる。」
不思議な顔もなにも、年下だろうか?
身長160cm前後の少女を預かるとか、明らかに普通じゃないよな?
元さん「まぁ、そういうことじゃから頼んだぞ。」
そう言って、元さんは少女を僕の方へ歩かせた。
ちょちょ、まじで?
僕「元さん、マジで?」
元さん「とにかく、頼んだぞ!」
元さんは店の奥へ消えていく。
零「おい」
少女が僕に話しかけてくる。
とても綺麗な声だが、どこか僕のことを下に見ている感じの…
零「なにをしておる?早くせんか」
僕「ね、ねぇ君?本気なのかな?」
零「本気もなにも、仕方ないじゃろう?」
ジジくさい喋り方で話す少女は僕の手を引いて、店から足を踏み出す。
その横顔は、少し口元が緩んでいるように見えた。
ーーーーーーーーそして今
零「あ〜あ、まだ眠いぞ〜」
零が椅子に座る。
僕ら住んでいるのは築60年のアパートだが、僕が越してくる前に改装されていた。現在住人は僕と零だけだ。
なぜ、アパートなのに居候なのかって?
それは、零が家賃や水道代なんかを払えないからだ。
管理人はもちろん僕がこなしている。
そして、今は住人の共同スペースであるキッチンなどが併設されたホールで食事をとっている。
ふたりでは少し広すぎるくらいのホールの丁度真ん中あたりに設置された長机に座っていると、ボサボサの頭をかきながら降りてきた。
僕「やっと起きたのか…」
零「まぁ、そう言うでないぞ。ワシは朝に弱いんだ。」
僕「まぁ、冷めないうちに食べちゃえよ。」
零「うむ、ではいただくとするかの」
零は目玉焼きをハムっと口に含んで笑みを浮かべる。
僕「こうして見ると、結構可愛いんだけどな…」
零は口調こそジジ臭く、性格はワガママな女の子そのまんまだが見た目はまぁ、世間一般のイメージでいう美少女なのだろう。
本当になんで、こんなことに…
まぁ、今のところは特に問題も起きてないけど女の子と二人きりなんていつまでも耐えきれないぞ…
零「ところで小太郎よ、今日はなにか予定はあるのか?」
僕「あぁ、今日は元さんの所に行くぞ。」
零「ほう、親父殿の所へ?それはワシも言っていいのか?」
僕「あぁ、良いんじゃないのか?なんでもまた頼みごとらしんだが…嫌な予感しかしないよ全く。」
零「ふむ、確かに嫌な予感がするな。」
珍しく零が冷静な表情だな、とにかく早く飯食って早く用事済ませて、早くゆっくりしよう。
こうして、僕と零の1日が始まる。
少しでも読んでくださったら、うれしいです
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