「第三話」 AllKi&Frost Briefing 003(前編)
本当は1本で投稿する予定でしたが思ったより上手く書けないので前後編に分けて投稿します。
オルキ達を乗せた輸送ヘリ〈ヴェノム〉が基地上空に到着する。操縦士のNPCが「着地の順番待ちのためもうしばらくかかる」と無線で伝えてきた。
オルキが端末を開くと本来電波が表示される所に安全地帯と表示されていた。
端末を操作してクランメンバー一覧を表示させると、その中の一人を選択して呼び出し(コール)する。
呼び出し音がしばらく鳴った後に相手が電話に出た。
「はいよー。どちら様で?」
「電話に出る時は相手確認しろっていつも言ってるだろおっちゃん・・・」
「その声はオルキか。何の用だ?」
「人の話を聞け。で、おっちゃんクランホームに居るの?俺達いまベースに帰ってきたところなんだけど」
「ああ、ホームで皆でケーキ食って騒いでる。一応お前たちの分も残してあるがリサ嬢が狙ってるぞ」
「リサも居るのか。こっちはスプリーとクーラは今一緒にいるけど他の二人は?」
「マックの馬鹿がSMAWを買って今色々弄ってたぞ。ファンキーお嬢ちゃんは居ないな、何処かのバーで飲んでるんだろ」
「あいつまた新しいのかったのか・・・。まぁ俺も人の事言えないか。おっちゃんちょいと待ってて」
クランルームとは、クランごとに設定できる拠点のことだ。クラン対抗戦で一定以上の勝ち数をあげると購入することができる。もっともサイズによって値段も高くなるし、月々の維持費も必要になるのだが。
オルキは一旦通話をミュートにして、無線のスイッチを入れるとスプリーとクーラに呼びかけた。
「おい!他の奴らは既にホームで待機してるらしいけどお前らどうする!?ちなみにケーキがあるらしいぞ!」
二人はケーキのワードにピクッ、と反応してこちらを見ると、
「私はルームに行く」
「同じく」
凄い食いつきようである。
〈FoW〉のゲームエンジンは味覚についても再現していた。〈調理師〉クラスのスキルを持っていれば誰でも作ることができる。
そして何よりVR空間上なのでどれだけ食べても現実の肉体は太らない。
安っぽいVRゲームだと料理は充実してなかったりするが、〈FoW〉では世界各国の料理をスキャニングしてデータを採取しており、非常に豊富な種類と完成度を持っていた。そういったことが〈FoW〉が人気ゲームとなっている一つの要因となっている。
そんな感じで戦闘には全く役に立たないクラスではあるが、〈調理師〉はかなり人気のサブクラスだ。
「あいよ。おっちゃんに伝えとく」
二人が頷くのを確認した後、ミュートを解除して通話を再開する。
「おっちゃん聞こえてる?スプリーとクーラの二人はそっちに行くってよ
「あいよ。オルキはどうするんだ?」
「俺は弾を追加で買ってくるわ。新しく買ったHK417用の7.62ミリ弾を備蓄しておかないと」
「お前さんの分のケーキは俺が責任もって食べておくから安心しろ」
「こら、残しとけ。イベント始まる前にはそっちに着くようにするわ」
「あいよ。もう他に用はあるか?」
「いや、大丈夫。じゃ通話切るぞ」
「また後でな」
通話が終わると同時にヘリの揺れが止まった。ちょうどのタイミングでヘリパッドに着陸していた。
端末で装備メニューを開くと、武装解除状態の装備セットを選択した。銃や防弾ジャケットなど武装が解除されてラフで身軽な格好になる。
スプリーも同じように武装解除状態になっていたが、クーラだけは至るとこに装着されていたナイフが消えただけで服装は変わっていなかった。
別にいつものことなので気にせず3人はヘリから降りて、近くの建物に歩いて向かう。
「俺はちょっと買い物してからホームに行くから先に2人で行ってて。何か買うモノあったら買っておくけど?」
「いや、大丈夫だ」
「あ、私は閃光手榴弾何個か買って欲しいかな。さっきので最後だったのよ」
「あいよ、いつもの種類のでいいよな?」
「勿論、よろしくね」
建物に到着して中に入る。途中、改札があったがそこも端末をかざして通り抜けると奥には大型リフトがあった。
ちょうど扉が閉まろうとしていたので走りこみ搭乗する。
扉が完全に閉まるとゴゥン、と音を出して降下しはじめた。エレベーター特有の身体が浮くような感覚がする。
3、4分ほど経過すると目的階に到着した。ゆっくりとリフトが止まって扉が開く。
そこは巨大な地下都市だった。ただの都市ではなく要塞都市だ。地上に有る基地はあくまで全体の一部に過ぎず、本体はこの地下にある要塞であった。
赤を基調とした都市内部には居住スペースや商店、工房や司令部が存在する。そして全プレイヤーの3分の1をも内包する途轍もない規模で巨大だった。資料には直径3kmと書かれていたが、βサービス中のアップデートで何度も規模が拡張されたのでその数字もアテに出来ない。
常時3万人以上のプレイヤーが滞在していると言われる最前線にある巨大な赤き基地。
その名は―――『レッドベース』。
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12月13日誤字修正




