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「第二話」 Frost Briefing 002

場面と主人公は一度切り替わって現実世界へ。

ただし本来の主人公はオルキ1人の予定。

「電源ケーブル良し、コントローラーにケーブルもちゃんと刺さってる」


まだ顔に幼さが残る少年はそう呟きながら手に持った機械を確認していた。


彼の手にはヘッドホンとサングラスが合体したようなものが握られていた。その機械はケーブルでDVDプレイヤーのような母機に繋がれており、耳が当たるところと母機の上面にTitanと刻印されている。

少年が母に1ヶ月間の交渉の末、中学校卒業祝いに買ってもらったタイタンというVRゲーム機だ。


「LANケーブルもちゃんと繋がってる。後は・・・あ、ソフト挿すの忘れてた」


ゲームショップのビニール袋からパッケを取り出し、包装のビニールを引き裂く。


パッケには半年間ゲーム雑誌やレビュー記事で何回も見た<FoW>の文字があった。

陳列棚を眺めている時は悲しみのお小遣い3ヶ月分の値札も、購入済みの今となってはようやく買えた達成感とゲームへの期待を煽るものだ。


「ソフトもOKっと」


そう言いながら母機にソフトを差し込む。

(あとは、めんどくさいけど母さん伝えておかないと。ついでに飲み物とってこよう)

ドアを開けてリビングに向かうとソファーに母が突っ伏していた。


「お母さん、今からゲームで遊ぶから邪魔しないでね」

「お母さんはもう寝る・・・おやすみ」

「寝るならベッドで寝なよ、おやすみ母さん」


VRゲーム機で遊んでいると基本的に外からの刺激は遮断されるので、タイタンで遊ぶことを先に親に伝えておく。


プレイ中に無理矢理起こされてゲームに棒立ちの自キャラを残したまま、緊急ログアウトする羽目になるになんてなりたくはない。

街の中でならそれでも大丈夫だが、戦闘MAPに出ていたら良い的になってしまうので要注意だ。


冷蔵庫を開けて中身を確認するとDr.Pepperがあったので、

「Dr.Pepper貰うよー」

と母に声をかけてプルを開ける。流石にこの時間になると眠かったので目を覚ますにはちょうどいい。


必要なことは伝えたのでDr.Pepperを飲みながら部屋に戻る。途中姉の部屋のドアが少し空いていて、隙間から姉がベッドに突っ伏してるが見えた。

(危なっ、横着して部屋から叫んで伝えてたら姉貴キレてたなこれは)

と夜型人間の面倒な姉がまだ寝ていることに少し安心して部屋に戻った。



部屋に着いたら飲み終えたDr.Pepperを机の上に置いてタイタンのコントローラーを手にとる。

ベッドに横たわり、今度こそタイタンのコントローラーと、声帯マイクのような神経接続用のコントローラーを装着する。


ゲームを購入して初めて起動するときの胸の高鳴りを感じながら、耳元のスイッチをONにすると一瞬で真っ暗闇になる。

身体が空に浮くような感覚の後、神経接続が完了して再び重力と足裏に硬い床を感じる。

周りが明るくなってタイタンのホーム画面が壁に表示された。

既に初期設定は終わらせていたので少年はコンソールに呼びかける。


「今の時間は?」

《現在時刻は17時27分です》

「やべっ、急がないとイベントまでに準備出来ん!えっと、FoWを選択っ!」

《【FoW】でよろしいですか?》

「YES!」

《【FoW】を起動します》

《注意 《FoW》がインストールされていません。インストーラを起動します》

《インストール中・・・・・完了》

《神経接続適切化中・・・・完了》

《脳波紋認証中・・・・・・完了》

《プレイヤー登録中・・・・完了》


中々ゲームを始められなくてイライラしてしまう。進行度を示すゲージが100%溜まるのが待ち遠しい。

やることもないので準備体操をしながら待っていると、ついにゲージが右端に到達する。インストーラーのウィンドウが消えてクライアントのウィンドウが表示される。

《全ての作業が完了しました。【FoW】を起動します》


《Welcome to the Flame of War!》

タイトルロゴが表示され、周りの空間が瞬く間に燃え上がった。

轟々と暴れていた炎が規則的な動きを始めた。まるで見えない型に炎が流し込まれてるように形作られていく。

やがて炎が変質して壁や屋根が整形される。

少年が突然の炎に驚いてる暇もなく部屋が完成された。


まわりを見渡して現状を確認すると正面にドアが一つだけ存在し、他に出入り口は見当たらなかった。

彼はよくわからないが取り敢えずドアを開けようと一歩踏み出すと、ドアから一人の女性が入ってきた。彼女はそのままこちらに近寄ってくると5歩分の間合いを残して立ち止まり、敬礼をした。


「ようこそ〈FoW〉の世界へ!私は新兵育成担当官のエレナと申します」

「えっ、あっ、あれ?」


突如現れたエレナと名乗る女性に理解が追いついていない少年。

彼女はこちらの様子を無視して話し始めた。


「チュートリアルの短い間ですがよろしくお願いします。まずは貴方のプレイヤーネームとキャラクタークリエイトを設定します。何か質問がありましたら受け付けますがありますか?」

「えっと、あなたはどなたで・・・・?」

「私は〈FoW〉のチュートリアルを担当しているシステムキャラクターのエレナと申します。貴官が戦場に出撃する為に少し手助けさせていただきますので少々お付き合いください」


彼女(エレナ)の説明から幾つかゲーム用語が出てきてゲーマーの少年はようやく理解が追いついてくる。

つまりここはゲームについての説明やプレイヤーに関する設定をするための場所で、彼女(エレナ)はその案内役なのだろう。


「・・・大丈夫です。続きお願いします」

「では、まずはプレイヤーネームを設定致します。10文字以内半角英字で設定する事ができます。既に使用されている名前は使えません。いまの説明で何か質問はありますか?」

「いや、大丈夫です」

彼女(エレナ)はこちらの返事に満足げに頷いて手を一回パンッと叩くと、少年と彼女(エレナ)の間に音も無く机が出現していた。上には紙が挟まれたクリップボードとペンが置いてある。


「ではプレイヤーネームが決まりましたらこちらに記入してください。ゆっくり決めてもらって大丈夫ですよ」

「・・・・・はい」

(ほんとさっきから非現実的な・・・。リアル過ぎてゲームだってこと忘れちまう)


そう頭の中でボヤきながらペンを取ってクリップボードを見る。プレイヤーネームはゲームの資金を貯金している間に考えておいた〈Frostburn〉に決めていたのでさっさと書き終えると、彼女(エレナ)が机の向こう側からクリップボードを奪っていった。


彼女は(エレナ)クリップボードにサッと目を通してこちらを見る。

「こちらの名前で本当によろしいですね?名前の変更には追加料金がかかりますのでご注意ください」

「それで大丈夫です」

「では、〈Frostburn〉で登録します。呼び方はフロストバーン様でいいですか?」

「いや、フロストでいいです」

「了解しました。ではプレイヤーネーム〈Frostburn〉にて登録します。本当にこの名前でいいのですね?」


問いかけに頷きで返す。

するとエレナがクリップボードを放り投げ、それを目で追うとクリップボードは空気に溶けるように消失した。

「手品みたいだなぁ」と声を漏らして視線を下に戻すと机とペンも既にに消失していた。


「ではフロスト様、続いてキャラクタークリエイトについて説明します。〈FoW〉においてキャラクタークリエイトはシステムの方で設定させていただきます。身体的問題の為、又ストーカー対策の為ご了承ください」


これにも頷いて返答の代わりにする。


「キャラクター生成前に、希望がありましたらそちらを参考に生成いたしますが何かありますか?」


フロストは少しだけ考えた後

「東洋系っぽい見た目にして欲しい。それだけかな」

「了解しました。それでは候補を生成しますので少々お待ちください」

そういうと男は何処からかタブレット端末を取り出して操作しだした。


VR空間において肉体は本来自分の好きなように設定することが出来る。身長を伸ばしたり縮めたり、体重を増やしたり減らしたり。犬や猿などの肉体も操れる。

しかしその肉体を操作するのは本来の肉体に最適化させてある脳だ。実際に変化させた肉体を操ろうとしても非常に難しい。


そしてVR技術が出来たて当初の頃、VR空間で大きく変更を加えた肉体を操作し、現実に戻ったら脳が突然の肉体の変化でショック状態に陥る事故が多発した。

死亡者や障害者も出てきて、一時はVR技術自体が封印されることもあった。

現在は安全装置や法整備による規制が入り安全が確保されたのでVR技術も解禁されたが。


なのでVR技術を使ったゲームは脳を読み込んで自分に最適な現実のモノに近い肉体がキャラクターとして生成される。

オンラインのものは顔についてもストーカー対策や他人とダブりがないようにシステムの方から数種類提案されてその中から選択する方式が一般的だ。



「お待たせしました。それではこちらから選択してください」


彼女(エレナ)が端末を操作し終えると数人の男が突然現れた。

しかし現れた男は全員顔に生気がなく、マネキン人形を連想させた。


その中でフロストは一人の男が目についた。他の男と違い、何故か自然に自分がこのキャラで動くことが頭に思い浮かぶ。

近寄ってその男を凝視する。背格好は自分と全く同じ、顔も自分に共通する部分がある。

けれどもそれ以上の何か存在感のようなものが自分とピッタリ一致してるように感じた。


「そちらが気に入りましたか?」

「・・・・・ああ、これで。このキャラクターが良い」

「了解しました。ではこのキャラにデザインを変更します」


エレナがそう言うと男達が消失した。

続いて自分の身体が輝きだす。どんどん輝きは強くなり視界が真っ白に染まると、身体が突然軽くなる。

そして光が散り、ようやく目が見えるようになって自分の身体を見ると先ほどの男の体になっていた。


「キャラクターの変更が完了しました。その身体が〈FoW〉において貴方の身体となります」


エレナは何回も満足げにうなづくと、次の説明を始めた。


「それでは最後に物資の支給を行います。

まずスマートフォン端末が既に貴方のズボンの左ポケットに入っていますので確認してください」


そう言われて確かめてみると確かに端末が入っていた。

取り出してボタンを押してみると電源が入りメニュー画面が表示される。


「この〈FoW〉において装備の変更やコミニケーションなどの操作で端末を使用します。所持者(オーナー)しか操作が出来ず、所持者(オーナー)から一定距離離れると指定した保持ポイントに自動回収されます。今貴方の端末は左ポケットが保持ポイントに指定されていますね」

「電話とかも使える?」

「フレンド登録をしていて、非戦闘区域にいる方には可能です」

「なるほど・・・」


色々いじっていると〈アイテム〉と書かれたボタンを見つけたのでタップして開くと、アイテム一覧が表示された。

既に数点アイテムが表示されている。


「次に支給物資はハンドガンSIG Sauer P226が1丁とその弾倉(マガジン)4本、サバイバルナイフ1本、そしてハンドガンとナイフのホルスターとゲーム内通貨50,000Gになります」


たしかに言われた物と同じものが一覧に表示されていた。

それぞれの数と重さの表示もある。

重さの説明、アイテムの使い方や装備の装着方法の説明が次になされると思いエレナの方を見る。


「それでは以上でチュートリアルを終了します。質問は受け付けません」

「へっ?」

(いま受け付けないって言ったか?というか他の説明は!?)

「ちょ、アイテムの使い方とか教えてもらってなーーー」


文句を言おうとしたら目の前からエレナが消えた。と思ったら背中に思いっきり体当たりをされたような衝撃を受けて前に吹き飛ぶ。

なんとか体制を立て直そうと顔を上げると、勢いの先にドアが見えた。

(このままじゃぶつかるッ!)と咄嗟に身体を強張らせたがドアは一人でに開いて、ぶつかることなくドアの向こうに身体が吸い込まれた。


「いってらっしゃい新兵(ルーキー)!Good Luck!」

セレナの声が後ろの部屋から聞こえる。ドアが閉まって漏れ出ていた光が遮断される。真っ暗闇の中、ドアの反対側に光が見えた。


状況が把握できていなかったが、フロストはとりあえずそちらへ歩いて向かう。光に近づくにつれて人の声やエンジン音が聞こえてくる。光に更に近付くと、音が大きくなった。

心臓の鼓動が早くなり、歩く歩幅が段々大きくなって遂には全力で走りだす。そして暗闇から飛び出した。


急に明るいとこに出たので目が痛い。

太陽の光を手で遮り目を細めると周りが見えるようになる。


大きな道だった。プレイヤーらしき沢山の人が、グループで談笑しながら道を歩いている。店で買い物をしてる人が居たり、銃を持って店員と大声で交渉してる人も居た。




そこはゲーム特有の賑やかさがある市場マーケットだった。


まぁそんな感じで。

戦闘シーンはしばらく後の予定。

感想やご意見等お待ちしてます。


12月8日 誤字修正と加筆

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