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「第一話」 AllKi Briefing 001

いきなり戦闘シーンです。

回りを見渡せるビルの屋上に彼は居た。

目立たないように床に伏せて双眼鏡を覗き、回りを索敵している。しばらくすると彼の双眼鏡の動きが止める。


そのレンズの先には道路の端を密集形態で移動する集団が居た。連携して素早く移動してる様子から、玄人プレイヤーということがわかる。

その集団を観察しながら彼は無線を使い仲間と通信を始めた。


「スプリー、聞こえる?」

『こちらスプリー、バッチシ聞こえてる』

「こっちのビルから南に距離100地点に敵3人確認、密集隊形で移動してる」

『了解、3人って事は敵は全員固まって移動してるワケね。私の位置わかる?そっちから同じ方向で距離50ぐらいの民家の上だけど』


双眼鏡のレンズを十字路から10mほど北にいったところにある家の屋根に向けると、そこに2人の兵士がしゃがんでいた。

二人の内の、腕に赤いバンダナを付けた兵士がこちらのビルに手を振り、もう一人の黒ずくめの兵士もこちらを注視している。

二人とも彼の仲間だ。試合(マッチ)開始即座に別れて行動していた。


「見つけた、敵集団はその通りを十字路側から北に移動してる。このスピードだとそっちと1分後ぐらいにぶつかるかな、強襲しちゃうか?」

『もちろん!敵の装備は?』

「M16が1人、もう一人がP90を持ってる。もう一人は・・・・・・ダメだ、こっからじゃ隠れて見えない」

『了解。こっちはいつでもいけるからオルキに合わせてこっちも動く。けど私達のも残しときなさいよ』

「はーいよ・・・・・・、通信終了(アウト)


双眼鏡の中で通信を終えた彼女らは、強襲に備えて準備を整え始めていた。

味方にオルキと呼ばれた彼も連絡を終えると双眼鏡をバッグにねじ込んで、背中に背負っていた銃を構える。

スコープとバイポットが取り付けられ、艶消しが施されたそれは〈HK417〉と呼ばれるDMRだった。

DMRとは多数の目標に素早く対応し、遠距離にも対応できるように設計された半自動(セミオート)・スナイパーライフルだ。

 7.62x51mm NATO弾という人間に対して強い効果を発揮する弾丸を、短いスパンスで撃つことの出来る強力な銃である。


コッキングレバーを引いて戻し、マガジンから薬室に初弾を装填する。二脚(バイポット)を立てて銃を安定させると、ゆったりと呼吸をしながらスコープを使い先ほどの敵集団を再び探しはじめた。

しばらくして敵集団を見つけると、その中のM16アサルトライフルを構えている兵士をスコープの中心に捉える。倍率を操作して拡大し頭をクロスヘアの中心に捉えた。


「準備OK、M16持ってる奴を狙撃する」

『了解』


オルキは無線を送った後、再びライフルを構え直してスコープを右目あてる。

セレクターをセーフティからセミに切り替え、同時に頭を狙撃用の静かなものに切り替えていく。

トリガーに指をかけてクロスヘアにM16持ちの頭を合わせてじっとタイミングを待つ。


すべての神経がトリガーに掛かる指に集中するような錯覚を感じる。瞬きもせずにスコープでひたすら敵の頭に意識を集中させる。

大きく深呼吸をしたあと息をスゥーッ、と吐いて呼吸を止める。全身の筋肉に力を込めて体勢を維持してブレも抑えこむ。


そして敵集団が味方の隠れる建物に到達する――――指先に力を入れてトリガーを引く。

銃声が轟き肩に反動が伝わった。スコープの中で敵が頭に銃弾を喰らい吹き飛ぶように倒れる。

薬室から空薬莢が弾きだされてコンクリートの床に転がった。

反動で跳ね上がった照準を抑えこんで地に倒れている敵に更にもう1発撃ち込んで確実に相手の(ヘルス)を消し飛ばす。


仲間を狙撃された敵が慌てているのがスコープでよく見えた。

だが彼らも優れたプレイヤーだ。すぐに落ち着きを取り戻してこちらの位置を特定し、銃弾を撃ち込んでくるだろう。

マガジンにまだ弾は残っているのだから残りの敵を狙撃しても良かったのだが、そんな事をすれば向こうの屋根の上で獲物を待ち構えている彼女達から大ブーイングが送られてくる。


肩に伝わる反動で思考の中から現実に引き戻されると、彼は跳ね起きて二脚バイポットを畳み背中にHK417を背負う。

爆発しそうなほどに跳ねる心臓を無理矢理押さえつけ、無線で連絡を取りつつ予め設置しておいたロープを掴む。

「1KILL!あとの2人は残しといてやったぞ!」

『そんなの当たり前よ、クーラっ!』

『了解』


オルキはロープを使いビルから飛び降りるとレッグホルスターから〈M9〉ハンドガンを引き抜き、安全装置(セーフティ)を外して初期動作コッキングをする。交戦地点へ視線を向けると、閃光手榴弾(フラッシュバン)の閃光とクラッカーのような爆音が聞こえた。

生き残っていた敵は爆音と閃光にノックダウンしていた。それぞれの敵を上空から押し倒す。黒ずくめは手に持つハンティングナイフで首を掻き切り、赤いバンダナの方は構えたMP7で心臓と頭に数発づつ打ち込んでとどめを刺した。


首をナイフで引き裂かれた敵兵士と銃弾を撃ち込まれた敵兵士が動かなくなると、近くの電柱のスピーカーからブザーが大音量で鳴り響く。そして目の前に【Your Team WIN!】と書かれたウィンドウが表示された。

それはこちらのチームが勝利した事を知らせていた。








オルキはM9を安全装置(セーフティ)を掛けてレッグホルスターにしまうと、大きめのマガジンポーチからスマートフォン端末を取り出した。リザルト画面を開いて試合経過時間を確認してみると、そこには00:08:33と表示されている。


Flame of war、頭文字をとって〈FoW〉と呼ばれるこのゲームの試合は、ルールや人数次第で2~3時間もかかる時もある長期戦になりやすいゲームバランスだ。少人数戦、尚且つ作戦が奇襲戦法なことも含めても、今回の試合は早く終わったといえる。


次にスコア表を確認すると、敵陣側のリストの名前は全て灰色になっていて全滅していることが読み取れた。

自陣側のリストには自分の名前である〈AllKi〉の他に〈Catspree〉と〈CoolMan〉が生存を表す白色で表示され、彼ら3人の名前の前には〈SoF〉と表示されていた。

クランタグと呼ばれるもので、彼らが一つの軍団(クラン)に所属している事がわかる。


次にオルキは報酬画面を開くと真っ先に額を確認する。ファーストキルボーナスとヘッドショットボーナスと勝利ボーナスが追加されてかなりの金額になっていた報酬額を見つけて思わずガッツポーズしながらニヤニヤ、と笑ってしまう。


すると向こうもこちらに気づいたようだ。腕に赤いバンダナを付けたスプリーがゴーグルを外して、こちらに怪訝な表情を向けてきた。


「オルキー、キモいよー」

「うっせー、報酬が良かったんだよ!最近銃を新調したせいで金欠なんだからそのぐらいいいだろ」

オルキはクルリ、とターンして2人に背中のHK417を見せる。


「はぁ・・・何を弄ったの?オルキがいつものアサルトライフルじゃないでセミオートのスナイパーライフルを使うなんて珍しいとはおもったけど」

「バレルを精密バレルに変えてフルオートを無理矢理追加したんだけどさ。いやーまさかカスタム費用だけでまさか5万Gも取られるとは思ってなかったわ!」

「なんで狙撃銃にフルオートなんて追加してるの!?というか5万Gってアサルトライフル一丁買えるじゃない! あいっかわらず無駄遣い多いわね」

「うっさい、全距離対応のスナイパーライフル欲しかったんだよ!後カッコイイし!」

「それならハンドガンに持ち変えればいいじゃない。あと最後が本音でしょうこの馬鹿」

「馬鹿だな・・・」


2人に気に入っていた銃を散々酷評されて、オルキは「んーだよ格好イイじゃん・・・」と不貞腐れると、チョコレートバーをポーチから取り出して食べ始めた。


そんな思わず「子供か・・・・!」と言いたくなるような少年の名は<オルキ>。

身長175cmぐらいの男で、彼らの所属クラン[Soldiers of Festival]こと〈SoF〉のマスターだ。彼はこのゲームのイベントが始まる前にスナイパーの勘を取り戻すため、そして銃を新調したので試し打ちも兼ねて今回の試合(マッチ)をプレイしていた。


それを呆れ顔で見ている〈Catspree〉こと〈スプリー〉と呼ばれていた女性兵士は〈SoF〉のメンバーであり、ポイントマン(PM)担当である。ポイントマン(PM)とは分隊行動をする時に前方を警戒する役割で、彼女はそのためにメインクラスを偵察兵(スカウト)にしていた。




 ーーーーーーーーー

彼らが戦っている【FoW】。

VRゲームにおいてほのぼのとしたRPGばかり発売される中、鉄とオイルと硝煙の匂いのするシューティングゲーム〈FoW〉が登場した。当然、MMORPG(いい子ちゃんの馴れ合い)にいい加減うんざりしていたFPS、TPSゲーマーが大喜びして飛び付いた。


現実との差がわからないほど完成されたゲームエンジン、PvP(対人戦)だけでなくCOOP(対CPU戦)も遊べる、運営の対応が非常に優れている、高い自由度、などなどオンラインゲームとして売れない要素が見当たらないゲームだ。




FoWのプレイヤーはメインクラスを1種とサブクラスからスキルを15個設定することができる。

高い自由度を謳う〈FoW〉にはライフルマンや援護手(SAW)や狙撃手(スナイパー)、他にも整備士や医者・調理師・破壊工作員、変わったものだと教育者やダイバーなど様々なクラスがある。

それらを組み合わせることで〈FoW〉では自分だけの兵士(プレイスタイル)を作ることができるのだ。

それぞれのクラスには熟練度が設定されていて、それぞれの得意分野において多少のボーナスが発生する。

一年間のβテストでクラスや技能(スキル)の数は増え続け、攻略wikiに載っているクラスの種類はなんと100を超えていた。



オープンβテスト開始から1年になる今日までほぼ毎週のように新しい要素が追加されて、全ての要素を把握しているのは〈FoW〉のプロデューサーのみとまで言われている。

 ーーーーーーーーー



オルキとスプリーが今回の作戦の改善点について話していると、輸送ヘリ〈UH-1Y〉、通称ヴェノムが近くの広場に着陸していた。

3人全員が乗り込んで操縦士のNPCに離陸準備が整ったことを、運転席を叩いて伝える。回転翼の速度が上がってゆったりとした動きで機体が離陸していった。


チョコレートバーを食べ終えてスッカリいじけ状態から回復したオルキは包み紙を空からポイと投げ捨てる。戦場に不法投棄なんて関係無い。

端末を取り出して時間を確認すると午後5時30分ジャストを示していた。


「あーそれにしてもホント楽しみだわ。正式サービス開始のイベントって何時開始だっけ?」

「日本時間で午後7時開始だ」

「ってことはあと1時間30分か。他の〈SoF〉メンバーもあつまってんのかな?」


そう呟くとクーラが端末を取り出して少し操作すると画面をこちらに見せてきた。

そこには〈SoF〉のメンバーリストが映っていて、メンバー全員にログイン中であることを示す青いLANマークがぴこん ぴこん と点滅していた。

「ほーみんな揃ってる揃ってる」とオルキが軽く驚いてると、横からスプリーが覗き込んできた。


「何見てるの? ・・・ってうっわぁ、全員揃ってるのひっさしぶりに見た!」

「なんだかんだいってメンバー全員集まるのは久しぶりだよな。運営も広告バンバン出してたし、俺のフレンドリストもログイン率すごいことになってるよ」

「前回のイベントの≪四つ巴戦≫は面白かったわね。プレイヤーだけじゃなくモンスターまで湧いてきてカオスで面白かったの憶えてる」

「ああ、楽しみだ」


そう言ったクーラは常に冷静な彼にしては珍しく興奮しているようで楽しそうに端末を弄っていた。

クーラだけでなくオルキとスプリーもかなり興奮している様子で、どんなイベントになるのかの予想をヘリのローター音に負けないぐらいの大きな声で話していた。


〈FoW〉のβテスト期間中にも≪四つ巴戦≫や≪ゴーストパニック≫など何回かイベントは開催されたが、どれもかなりの好評だった。そんな〈FoW〉の運営が今回特に力を入れていると噂が立っている今回の正式サービス開始記念イベントだ。プレイヤーとして興奮しないほうがおかしい。



3人がそうこう騒いでいるうちにヘリがマップの端に差し掛かる。視界に、

《マップ移動が始まります》

とシステムメッセージが表示され、夕暮れのオレンジ色に染まる彼らの視界が黒く塗りつぶされていった。

少しでもこの小説に興味をもっていただけたら評価や感想を書いてもらえると嬉しいです。

間違えの指摘や感想をいただけると私が頑張ります。


用語説明

バイポット:銃を安定させるための2脚です。様々な種類があります。

クロスヘア:スコープを十字に切る照準のことです。

クラン:チームのことです。オンラインRPGでいうギルドに相当します。

M16:アメリカ軍で使われいるアサルトライフルです。メディアへの露出も多く、アサルトライフルというと大抵の方がまずこの銃を思い浮かべるのではないでしょうか

P90:サブマシンガン、1マガジンあたりの弾の多さが魅力


11月28日誤字修正 クラン名をSoFに変更

11月29日加筆

11月30日1話と2話を合体

12月1日 加筆

12月5日 大幅加筆 HK417について指摘を受けたので加筆

12月6日 加筆 ゲーム名をMWOからFoWに変更。

12月10日 加筆 

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