カメのカメによるカメのためのカメの世界のお話
カメのカメによるカメのためのカメの世界
そこはカメ島
数え切れない程のカメたちが住まうカメの都
雨が振れば 皆いっせいに顔を上へと伸ばし その口から流れ込む雨水を味わう
風が吹き荒れれば 皆いっせいに体をすぼめ その硬く丈夫な家に引きこもる
波が押し寄せれば 皆いっせいに島の中央へと足を運ばせ 一つ二つの多きくいびつな山を作る
眩しく太陽が光れば 皆いっせいに岩の上へと上り詰め その場で日向ぼっこを始める
しかしその太陽が輝き始めると 皆いっせいに島の湖の奥底へと沈んでゆく
ある日 数匹のカメが殺害されていることに一匹のカメが気づいた
その話がカメ島にいる全てのカメへと伝わったのはそれから数週間後
その期間 一匹 一匹 とカメが殺害されていった
島のカメたちが一ヶ所に集まり 群れをなす
そこで カメたちは悲しみ そして怒りが芽生えていった
それから時間をかけて とうとうカメたちは決意する 戦おうと決意する
カメたちの決意の表れであるカメたちの作戦は とても簡単で単純なもの
そしてカメによる カメのための カメだけで行われる作戦 名をカメの城
その日から カメたちがその体を動かすことは殆どなくなった
数日後 カメ殺害犯はカメたちのもとへとやってきた
全体的に深い緑色をしていて その肌もカメに似ていないこともない
だがしかし その殺害犯は自分たちカメとは違うと その場にいるカメのすべてが思った
体は丸くなく その口も 尾も 目も 全てが鋭く 太く 恐ろしい
カメたちはその体をゆっくりと揺らし さらにその陣を狭めていく
カメたちが考えた カメの城作戦
それは 体の大きいカメが大きく丸い陣を描くように並び
その後では 島では中ぐらいの大きさをしたカメたちが その巨大なカメの背中を押すように体を寄せ合い 支えている
さらにその後ろ 中心部のあたりに集まるのは 島でも小さい方に入るカメやその子供たち
そうして出来上がったカメの城へと 恐ろしき殺人犯は歩み寄る
殺人犯を目の前にして 巨大ガメはひるみはしたが 後ろにいる多くの仲間たちを守るため その硬く丈夫な家へと体を収める
一匹の巨大ガメから ゴリ ガリ と嫌な音がひびきはしたが 最初の襲撃はそれだけに止まることに成功した
それから 二度 三度 とたえ間なく襲撃はあったもののその勢いは日に日に弱くなり いつしか殺人犯がカメの城のもとに顔を出すことはなくなった
なくなったはいいが カメたちとて無傷とはいかない
激しい空腹と ストレスにより若き同士が次々に倒れてしまった事にまた悔やみ その晩は皆で泣いた
泣いて 泣いて 泣き止んだら皆で食べ物を探して
そしてゆっくり ゆったりと生きてゆく
いつかまた こんな騒ぎが起こるかもしれない
あの生き物にまた仲間が食われる もしかしたら 次に食われるのは自分なのかもしれない
そんな 強い思いや こみ上げてくる感情
しかし その思いや感情 襲撃されたという事さえも忘れるほどに
カメたちは長く生きる
ゆっくり ゆったり
ゆるやかに まったりと 長い時間の中を生きてゆく