引越しと幽霊
前に済んでいたアパートに男の幽霊が出ると噂が立ったのは三ヶ月ほど前。
はじめは気にしていなかったのだが、目撃情報があまりに多かったため気分が悪くなって引っ越すことにした。
引越し先はまたなんとも出そうなボロいマンションだった。
電気はつきにくいし隙間風も吹く。
全く俺もついていない。
数日ここに住んでいるが、時々背筋の凍るような瞬間がある。
本当に幽霊がいるのかもしれない。
噂では、男の幽霊が出没するようになったらしい。
前のところからつれてきてしまったのかもしれない。
今度お払いでも頼もうか。
住み始めて一週間がたった。
何か寒気がすると思って振り返ると、そこには真っ白な顔をした女がたっていた。
「ああ、本当にいたのか。幽霊の女よ、落ち着いて暮らせないから早くあの世とやらへ行ってくれ。」
両手を合わせて言う俺に、女は震えながら男の背後を指差して答えた。
「何を言っておられるのですか、あなたこそ死んでおられるじゃないですか。ほら、今も向こうが透けて 見えていますよ。」