66、運命の女
翌日、学校内は誘拐未遂事件の話題で持ちきりだった。
教室に一歩入った瞬間、クラスメイトの視線が突き刺さり、思わず足が止まる。
パンダってすげーな。こんなの比じゃないってくらいのたくさんの視線に晒されながら、笹食ってんだぜ。
「お、おはよー」
いつもどおり、いつもどおり。
引き攣りそうになる表情を取り繕いながら、自分の席に向かう。先に登校していた甲斐君が「おはよ」と普段どおりの挨拶を返してくれた。
心の友よ!!
誰だよ、男女の友情は成立しないって言ったやつは。今ここに、私と甲斐君との確固たる友情が樹立されたじゃないか。一方的にだけど。
ニヤつきながら近づくと、甲斐君は若干呆れた顔をしていた。
「今日って英語の宿題の提出日だよね。未来完了がワケ分かんなかったんだけど、甲斐君できた?」
「まあまあできたかな」
「マジか。ちょっと見せてよ」
席に座って教科書とノートを取り出す。体操服の入った手提げ袋を机の横にかけ、後ろを振り返った。その間、注がれる視線に気づいていないフリをしなくてはならなかった。
「未来はまだ来てないのに何が完了してんだって話だよね」
「吉村って英語に苦手意識持ちすぎだろ。もっと素直な心で取り組めよ」
「素直どうこうの問題じゃないんだよ。これは日本の英語教育の問題だと思うね、私は」
大学受験のための英語教育に、一体なんの意味がある。今は必死こいて覚えた英単語も、試験終了と同時にすべて忘れ去る自信があるぞ。
宿題の見せ合いっこをしていると、クラスメイトのひとりが近づいてきた。あまり喋ったことのない男子だった。
「なあ吉村、誘拐されそうになったってマジ?」
やっぱり来たか……!
これまでもずっとこちらの様子を窺っていたのは分かっていたので、それほど驚きはしなかった。私が普通の会話をしているのを見て、好奇心を押さえ込んでいる子たちだっていたというのに、どうやら彼は己の欲望に対して忠実であったようだ。
「犯人の顔見た? ていうか吉村んちって金持ちだっけ?」
そんなに仲良くもないというのに、喋る喋る。こいつは街頭でインタビューされたら張り切りまくって喋り倒し、結局は編集でカットされるタイプだな。
「おい、やめろよ」
見かねた甲斐君が口を挟んでくれた。相手は一瞬、不満そうな表情を浮かべたが、すぐに馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
「なんだよ、お前も聞きたいくせに」
「吉村が話したがってないことくらい、見てたら分かるだろ」
「えーでもさあ、誘拐だぜ、誘拐。なんか、すごくね?」
無責任な台詞を連発するクラスメイトを半眼で眺めながら、さてこの展開をどう収めるかなあと考えていた。
話したくないと一方的に会話を切るのは得策じゃない。こういう手合いは逃げれば追いたくなる。ならば仕方ないという状況を作り出せばいい。よし、英語は苦手だが冴えてるぞ、私。
「先生たちに喋るなって言われてるから、ごめんね」
これは本当のことである。しかも『吉村なら喋らないだろう』という信頼付きの。
信じてくれた先生達を失望させるわけにもいかん。ここは踏ん張りどころだ。
ふぇえ、私が先生に怒られちゃうよぉ……と気弱な表情でクラスメイトを見上げた。
「別にいーじゃん。ここだけの話ってことにしてさ、教えてよ」
が、効果なし!
腐っても女子高生の上目遣いだぞ、もっとありがたがれよ!
「誰にも言わないからさ、な?」
世界一信用できない台詞を言われ、案の定、私の心は微塵も揺るがなかった。
先生が来るまであと十五分もある。このままのらりくらりと躱すしかないのか。はあ、めんどくせえ。
しつこいクラスメイトから半分顔を逸らして適当に相槌を打っていると、前後のドアがほぼ同時に開き、部活の朝練組が入ってきた。先頭には真柴さんがいて、私と目が合うと小さく手を振ってくれた。
あえて話しかけてこなかった彼女の気遣いに感謝している間も、隣では「なあなあ教えてよ」とクラスメイトの男子がうるさい。
視界の端で、真柴さんに耳打ちする女子の姿が見える。一瞬にして顔色を変えた真柴さんは、ずんずんとこちらにやってきた。
「あんた、しつこいわよ。リホリホが嫌がってるの分かんないの」
「じゃあ真柴が教えてよ。お前、目撃者だったんだろ?」
色々と情報が漏れてるなあ。
この分だと、兄が乗り込んできたことも知られていそうだ。まあこっちはただの不良のカチコミと思われているかもしれないけど。
「いいからもう席に戻んなさいよ。ここにいたって誰もあんたに喋らないからね」
女子のリーダー的な存在である真柴さんに強い口調で言われ、男子は怯んだように顎を引いた。そして不貞腐れた表情を浮かべながら、踵を返す。
よかった。そう思ったとき、去り際に男子が聞こえよがしに言い放った。
「こういうとき真っ先に騒ぎそうな奴が、何イイコぶってんだよ」
真柴さんが目を見開いて硬直するのが分かった。でもそれは一瞬で、すぐにフンと鼻を鳴らし、彼女は自分の席に戻ろうとした。
「待ってよ」
真柴さんが立ち止まった。でも彼女じゃない、お前だお前、そこの男子。
私は立ち上がって、歩き去ろうとする男子を呼び止めた。
「勝手なことばっか言って、怒られたらその態度? 恥ずかしくないの?」
「はぁ?」
振り返った男子が私を見る目は、「何言ってんだコイツ」だった。
「はぁ、じゃないよ。さっきの何? 怒られたからって、真柴さんを悪く言うとかこっちこそ『はぁ?』なんだけど」
まさか私が言い返してくるとは思っていなかったらしい。クラスじゃ目立たないし、大人しいと思われている私だ。寸の間、彼は黙りこむ。しかしすぐに表情を歪め、不機嫌をあらわにした。
「んだよ、謝れってこと?」
「普通はそうでしょ」
「あっそ。すいませんでしたー」
「私に謝ってどうすんだ」
あと面倒くさそうにすんな。腹立つなーコイツ。
「ここでちゃんと謝ってケジメつけとかないと、あんたのクラスでの立場が微妙なことになんのが分かんないの?」
周りを見ろ、お前に味方なんていないからな。
ここでようやく男子は自分を見る周囲の目に気づいたらしい、途端にバツの悪そうな顔をした。
もうすぐ先生が来る。それまでに手打ちにしとかないと、時間がたてばたつほど気まずくなる。ちゃんと謝ったら、真柴さんは許してくれるんだから、変な意地張るなよ。
「それとも修学旅行でぼっちになりたいの?」
男子の目に激しい動揺が走った。
それでもまだプライドが邪魔をするのか、彼は虚勢じみた威嚇の視線を私に向けてくる。
「なんだよ、俺のこと吊るし上げにして、楽しいかよ」
「味方がいないのはあんたのせいだろうが」
とは言ったものの、彼の主張にも一理ある。これ以上はたしかに吊るし上げになりかねない。
でも真柴さんを傷つけたこと、ちゃんと覚えておくからな。修学旅行で後悔するがいい。
もういいよ。投げやりに言い放った。
私がもう相手にするのをやめたと悟ったのか、彼は悔しげな表情を浮かべた。普段は気にも留めていなかった私にやり込められたことが許せない、そういったところだろうか。
しかし不意に、彼の目に意地悪な色が浮かぶ。
「そういえば、吉村の兄貴ってヤンキーなんだろ。聞いたぜ、昨日乗り込んできたって」
「……それがなに。今、関係ある?」
ひ、否定できねー。
大型バイクで正門突破して、教師と押し問答した事件は誘拐事件に勝るとも劣らず学校をにぎわせているようだ。
でも兄のおかげで、誘拐事件だけにスポットライトが当たらずに済んだというプラスの面もある。プラス、そうプラスだ。決してマイナスじゃない、たぶん。
「案外さあ、吉村もそうなんじゃねえの。大人しそうな顔して、裏では、ってよくある話じゃん」
含みをもたせた実に嫌な言い方だった。
でも残念だったな。その手の誤解は中学から受けてんだよ。さっきの私の上目遣いと同じだ、まるで効果がないぞ、バカめ。
「は!? ふざけんなっ、アンタ最っ低!」
受け流したと思った嫌味は、しかし別のところで受け止めた相手がいた。真柴さんと、立ち上がった甲斐君が相手に詰め寄っていく。
心の友たちよ、どうか落ち着くのだ!
慌てて両者の間に入ろうとした私を、誰かが腕を掴んで引き止めた。
「……岩迫、くん?」
確かめるように名前を呼んだのも、無理はない。
岩迫君の顔に、表情と言えるようなものは何も浮かんでいなかった。天真爛漫な彼らしくない態度に、続く言葉が出てこない。
いつから教室にいたのだろう。そしてどこから会話を聞いていたのだろう。彼の整った顔を見上げながら、私は問いかけることができなかった。
「なあ」
それほど大きくもなく、また抑揚のない岩迫君の声を聞いて、言い争っていた三人はぴたりと動きを止めた。
「なあ、今の、なに?」
岩迫君の眼差しが、私に絡んでいた男子を見据えて離さない。いつの間にか、教室にいるすべてのクラスメイトがおしゃべりをやめて、私たちを注視していた。
「教えてよ。俺、よく聞こえなかった。吉村が、なんだって?」
私の腕を離し、一歩、また一歩と男子に近づいていく。甲斐君がふらつくように道を譲り、真柴さんは目を剥いていた。
青ざめる男子の正面に立った岩迫君は、少し屈んで顔を近づける。
「言えよ」
授業開始まであと五分。
――ご、ごめん。
男子の小さな、そして震える声がした。
「なんか意外だったなあ」
そう言ったのは、クラスメイトのちよちゃんだった。
お弁当を手早く食べ終わった彼女は、コンビニで買ってきたというプリンにスプーンを入れながら、今朝の出来事に触れた。
「岩迫君って、あんなふうに怒る子だとは思ってなかった」
いつも一緒にお弁当を食べるちよちゃんと村っち、私の三人は、四時間目の授業が終わると教室を出て、演劇部の部室にいた。
休み時間のたびに現れる野次馬を避けるためだ。私はパンダほど神経が図太くないので、村っちが所属する演劇部の部室で食べようと提案してくれたときは、正直とても助かった。
「私もびっくりした。岩迫君って爽やかな、いかにもスポーツマンタイプでしょ。怒るとしたらもっと分かりやすく怒るっていうか、正義感たっぷりにビシっと叱るんだろうなって思ってた。だからああいうふうに静かにキレるっていうのが、予想外だったなあ」
同意している村っちの隣で、私は無言のままお弁当をつつく。
今朝のちょっとした騒ぎは、岩迫君に対する印象を百八十度変えてしまった。村っちの言うとおり、私だって彼があんなふうに怒るなんて想像すらしていなかった。他のクラスメイトも同意見だろう。
おかげで一時間目の授業担当の先生は、いつもと違う生徒たちの様子にしきりに首を傾げていたし、騒がしいはずの休み時間は普段よりもずっと静かだった。
ときどき様子を窺うように注がれる視線の先にいるのは、私ではなく岩迫君。誘拐未遂事件で浮き足だっていたクラスは、今や彼の一挙一動にびくびくしていた。
「リホちゃん、岩迫君どうだった? 何か話した?」
「雑談したけど、いつもどおりだったよ」
「ヨッシーはいつもどおりじゃなかったでしょ。目がめっちゃ泳いでたよ」
「そ、そうだった?」
「うん。岩迫君が悲しそうな顔してたね」
だって仕方ないじゃん、岩迫君、超怖かったんだからよ!!
「好きな女の子守ってびびられたんじゃ、岩迫君も浮かばれないよね」
「だよね。ヨッシーはひどい女だ」
私が悪者にされている。
というか二人とも、岩迫君が私のことを好きって知ってるんだな。あんなにあからさまな態度取ってりゃ、バレるのは当たり前だろうけども。改めて言われると冷や汗が出る。
「正直、誘拐未遂事件よりも、リホちゃんと岩迫君の恋の行方のほうが気になるのよね」
「私も。今度の修学旅行で何か進展があるんじゃないかと思ってるんだけど、そこんとこどうなの?」
「どうなの、って」
「自由時間あるでしょ。そのとき二人で消えても、先生には黙っておいてあげるからね」
「い、いや、そういう気遣いはいらないから」
あと二人で消えるつもりはないから。せっかくの修学旅行じゃん、団体行動の大切さを学ぼうぜ。
コイバナに乗ってこない私を、プリンを食べ終えたちよちゃんがそれはそれは残念そうな目で見つめてきた。
「リホちゃんって、この手の話になるとすぐに『自分には関係ありません』って顔するよね。本当に女子高生なの?」
ちよちゃんが人畜無害そうな顔でけっこうひどいことを言ってくる。
「岩迫君なんてイケメンな上に性格もいいじゃない。まあ怒ったら怖いけど。普通ならとっくにロマンスが始まってるはずなのに、一体何をウダウダやってんの?」
村っちの呆れ顔から視線を逸らす。
理不尽だ。私が何したって言うんだ……何もしてないから責められているのか。
でも岩迫君は何もしなくていいって私に言ったし、だからこれでいいんだよ。
……いいんだよな?
午後八時。
食後のコーヒーをお客さんに出すと、今日のバイトは終了した。
「おつかれさまです」
オーナー夫婦に声を掛け、更衣室で学校の制服に着替える。ついでに兄へとメールを送信した。
迎えが来るまではカウンターに座り、みゆきさんが淹れてくれた温かいお茶を飲みながら兄を待つ。手持ち無沙汰になった私は、紙ナプキンを整えたり、爪楊枝の残りを確認したりしていた。
一番混雑する時間は過ぎていたので、お客さんの姿はまばらだった。食べ終わった食器を片付けるみゆみさんをなんとなく眺めていると、ドアベルが鳴る。反射的に「いらっしゃいませ」と言った私は、入店したお客さんを見て目を丸くした。
「こんばんは、リホコさん」
虎さんのお孫さんである倉崎実ことミノりんだった。スーツ姿に、今日はノンフレームの眼鏡をかけている。
彼の背後で閉まった扉は、再度開くことはなかった。続けて入ってくると思った人物を探していた私に、ミノりんが手を横に振って否定する。
「お祖父ちゃんは今日いませんよ」
「ミノりんひとり? 珍しいですね」
「ええ。今日はリホコさんにお話があって来たんです」
私に?
一体なんだろう。不思議そうにミノりんを見上げると、彼は「ここではちょっと」と言葉を濁す。
「外に車を停めているので、中で話せませんか?」
「いいですよ」
カウンターから立ち上がると、ミノりんについていくことにした。お店から出る直前、心配そうな顔をしたみゆきさんに声を掛けられたけれど、相手が虎さん、倉橋さんのお孫さんだと聞くと納得してくれた。
お店の外にある車は、前に倉橋さんに乗せてもらったものとは別の車だった。跳ね馬のエンブレムが何かくらいは、さすがの私でも知っている。
ドアを開けたミノりんに促されて、助手席に座った。ミノりんも運転席に乗り込むと、ドアを閉め、ちょっと困ったように眉を下げてこう言った。
「無用心ですね」
「はい?」
「誘拐されかけたばかりなのに、貴方は無用心だ」
「もう知ってるんですか」
ミノりんはニヤっと笑って肯定した。倉崎家の情報力はどうなってんだ。
訊いたらさらっと教えてくれそうな気もしたけれど、違法なニオイがぷんぷんしたのでやめておいた。
「で、話ってなんですか」
「その前に、渡しておきたいものがあるんです」
彼は後部座席に体を伸ばし、ブランドものの紙袋を取り出した。それを私に差し出したので、面食らってしまった。
「なんですか、これ」
「見たら分かりますよ」
プレゼントかと思ったが、彼が私にそうする理由もない。疑問に思いつつも紙袋を開いて中身を確認することにした。
暗い車内で、私にはそれが何なのか、一瞬分からなかった。
「……え?」
分からなかったけれど、見覚えがあった。黒、いや茶色の鞄。取っ手の端っこのほうは革が少し裂けている。たしか盗られた鞄にも、同じ傷がついていた。
「ミ、ミノりん、これ、」
「中も見てください。無くなっているものはありませんか?」
慌てて鞄を開く。動揺が収まらない。震える指で鞄の中を漁った。
教科書、ノート、生徒手帳、キタちゃんから借りた小説。全部、全部そろってる。
「どこに、あったんですか……」
鞄を抱きしめて、ミノりんの顔を見上げる。彼は視線を逸らし、ハンドルに上半身を預けて俯いた。
「今はまだ、言えません」
「なんでですか! もしかして、犯人、知ってるんじゃないんですか!?」
「それもまだ、言えません」
言えないってことは、それは、知っているということだ。
「すいません。でも近いうちに、必ずすべてをお話するとお約束します。それまでは、警察には黙っておいてくれませんか」
ハンドルから顔を離したミノりんが頭を下げる。
でも、納得できない。だってこれは私の鞄なんだ。私の、盗られた鞄。
「僕のことは、信用してくれなくてもかまいません」
今度は私が視線を逸らし、俯く番だった。
「でも、お祖父ちゃんのことは、信じてください。彼は貴方の味方です。それだけは決して疑わないで」
ミノりんの手が私の肩に触れた。ほんの少し加えられた力には、彼の懇願が込められていた。
沈黙はどれほど続いただろうか。
私は迷った末に、彼にひとつの質問を投げかけた。返答次第では、私は明日、警察に届け出ることになるだろう。
「偶然、だったんですか」
発した声は、ひどく掠れていた。唾を飲み込み、再度訊ねる。
「虎さんが、お店に来たのは、偶然、だったんですか」
ずっと疑問に思っていた。
初めて来店したときから、虎さんの、私を見る目はどこか普通と違っていた。これ以上はないというくらいに優しくて、そして懐かしんでいた。それがずっとずっと、不思議だった。
否定してほしい気持ちと、認めてほしい気持ち、両方を抱えながら顔を上げると、ミノりんと目が合った。気づいていたのか。彼はそんな表情を浮かべていた。
やがて、観念したかのようにため息をついた。
「偶然なんかじゃ、ありませんよ」
「……やっぱり」
「でもそれは、事件とはまったくの無関係です。ねえ、リホコさん。覚えていますか? 僕が前にした、運命の話」
なんだって今、そんな話を。
隣に座るミノりんの顔を見た私は、ぎょっとした。シリアスな空気に似つかわしくないほどに、彼の横顔は恍惚としていたのだ。
「貴方なんです」
「ミノりん?」
「貴方が、お祖父ちゃんの、運命なんですよ」
前からやってくる車のヘッドライトが、ミノりんの横顔を真っ白に照らした。
呆然とする私の耳に、メールの着信音が届く。きっと兄からの、迎えの知らせだ。