美しき想い
私は一言で言ってしまえば、才色兼備。
容姿端麗、家柄もよくて、勿論勉強もできる。
家事だって掃除からお料理までできるし、茶道も華道も、すべてマスター済み。
女の模範。
そんな私に近づいてくる男は、たいしたこともないのに自信満々な奴だけ。
見た目が好みなら付き合うけど、やっぱり付き合い出すとうまくいかなくて、結局すぐ別れてしまうことが多かった。
顔も頭も申し分ないけど、家柄があまりよくない3流会社の御曹司に告白をされているとき、私は彼にであった。
彼が私の視界へ入った瞬間、まるで時が止まったようだった。
彼のまわりをキラキラと綺麗な光が覆っていた。
まるで天からの使いのような彼に私は魅入られ、そのまま惚れてしまった。
彼の名は、原田亮平。
大手医療グループ大原医院長の息子である。
顔はこの世界の人じゃないような美しさだし、声もとても綺麗。
この進学校でオール100点に近い、本当に神のような人。
私の運命の相手に違いはなかった。
「原田くん…!」
振り向いた彼の瞳に頬を染めた私が映る。
「…二宮さん?どうしたの?」
ドキドキと心臓がうるさい。
こんな気持ちになるのは初めて。
「私…」
こんな気持ちにした責任、とってくれるわよね?
「原田くんのことが好きなの…!付き合って欲しいの…。」
少し驚いた顔をしてから、ふっと優しく微笑み、よろしく、と言った彼はやっぱり天使にしか見えなかった。
原田くんと私の関係は怖いくらいにうまくいっていた。
それなのにあの日、一気に全てが壊れたの。
「二宮?」
「…ん?亮平くん起きたの?」
ベッドの上で汗ばんだけだるい体を起こし、愛しい彼を見る。
空いた窓から風が入り込んで、カーテンを揺らす。
彼の綺麗なカラダにカーテンが触れる。
「二宮。アイス食べたくない?」
「……食べたい!」
にっこり笑って微笑みかけると、彼も優しく微笑み返してくれる。
二人で服を来て、部屋から出てコンビニまで歩く。
公園では子供達が水遊びをしていて、楽しそうだった。
ぼふっと彼の背中に衝突して、びっくりして数歩下がると、彼は止まったまま、動こうとしなかった。
「……?りょうへ…」
彼が見つめる先にいたのは一人の少年。
歳は小学校高学年くらい。
愛しい彼には劣るけれど、容姿端麗で、綺麗な男の子。
その男の子は信じられないものでもみたかのように目を見開き、その場に佇んでいた。
「たつ…」
彼の口から男の子の名であろう言葉が零れる。
私はわかってしまった。
彼は、この男の子が好きなんだと。
彼とは高校卒業まで良い関係を築いた。
男の子の名をだすことは滅多になかったし、私に優しく触れるから。
寝言であの男の子の名を呼ぶことはあった。
そんな時は、彼が目を覚ます直前まで口と鼻を塞いだ。
さぞ悪い夢を見ただろう。
でもそれは夢なんかじゃない。
現実なの。
あなたは男で、あの男の子も勿論男なの。
その想いは悪夢なのよ?
高校卒業後、彼は突然姿を消した。
悲しむこともできないくらいショックだった。
あの男の子は、彼がどこへ行ったのか知ってるのかしら?
私は、高校生活すべてを彼に捧げたのに。
3年もずっと一緒だったのに。
私の方が彼を愛している。
なのに、あの男の子より私が下だと言うの?
ショックで寝込み、大学の入学式には出れなかった。
熱も引き、落ち着いてから、彼の家を訪れた。
中には入ったことがなくて、どうしようかと家の前をうろついていると、綺麗な声が後ろからかけられた。
振り向くと、そこにはあの時の男の子。
「…あなた、あの時の子よね?亮平がどこ…」
「お姉さん!!亮平の彼女なんだよね!?」
亮平がどこにいるか知ってるんでしょ?
私の言葉はかき消された。
「……そうだけど。」
そうよ。
別に、別れたわけじゃない。
「亮平……どこに行ったの?」
男の子は目に綺麗な涙を浮かべていた。
「……」
私も知らない。
この男の子も知らない。
一体彼はどこへ行ってしまったんだろう。
私が答えないのを見て、男の子は泣き崩れた。
私は男の子に優しくしてあげる義理もなかったので、そのままその場を立ち去った。
あの男の子に負けたわけじゃない。
やっぱり彼は私を愛していてくれた。
その後ずっと私は彼の帰りを待ち続けた。
彼を見かけたのは5年後。
彼の横には、見覚えのある綺麗な高校生の男の子がたっていた。
男の子が笑いかけると、彼も優しく笑いかけ、彼は私に触った時より優しく、愛おしそうに彼に触れていた。
涙が頬を伝った。
短編で投稿してたけど、一応番外編だからこっちにあげておきます。
「心と体は別物」思考の亮平が達也と付き合う前(亮平が高1だから達也は小5?)のときに付き合ってた女の子目線。
どんなに優しくしても愛さない。心はあげない。
それが亮平のスタンス。
心と体は別物っていうか高校生が小5に手だしたら犯罪すぎる(笑)
まじで亮平ショタコン変態。