永遠の片思い。
俺は、教師であり、幼馴染である原田亮平が好きだ。
去年までは付き合っていたのに、今は俺の事すらわからない。
…あと1ヵ月で俺は高校3年生になる。
あと1年くらいで卒業だ。
卒業したら、俺と亮平は本当に何一つかかわりがなくなる。
でも…、たまに亮平の実家に遊びに行こう、亮平と一緒に。
今はもう、恋人じゃないけど、亮平には幼馴染だった記憶すら無いけど、俺達は幼馴染だ。
だから…。
「達也ー!!」
「んだよ。」
教室に入るなり、ベタベタしてくる順平を、引き剥がす。
「美樹が全然優しくしてくれない。」
「あはは。…美樹ツンデレだからなぁー。」
大笑いしながら言う俺を横目に切実そうに順平も反論する。
「俺は、本気で悲しいんだ。」
「だから、美樹はツンデレだろ?ツンの割合が多いだけだろー?」
「そうだよ、達也は分かってるね、美樹の事。」
「まぁな。元カレだし。」
亮平の前で、わざと俺は美樹とイチャイチャしてみた。
「―――ッ。やめろ達也。美樹に触んな…。」
「!」
まじめな顔で怒った順平に、俺は少々おどろく。
少し前まで俺の事を好きとか言ってたコイツが、まさかそんなに美樹を好きだとは思ってもみなかった。
「べっ、別に、嬉しくなんかないからッ!順平なんて、大嫌いなんだからッ。別に、もっとカマって欲しいとか、寂しい…なんて、思って無いんだから!」
美樹が頬を赤らめる。
「ほら、寂しいって、カマってやれよ、順平?」
「だ、だから、美樹は別にそんな事…」
反論しかけた美樹の頭を、順平は撫でた。
途端、美樹の顔がトマトみたいに真っ赤になる。
「はぁー。まったくお前等めんどくさいな。」
俺は笑いながらそう言って、席に着いた。
なんだかんだ、あの2人が羨ましいのかな。と少しだけ思う。
でも、俺は…、別に方恋で一生を終えれるのも良いと思ってる。
だって…、俺は一生をあいつに捧げるって決めたんだから…。
放課後、保健の提出物を渡しに、保健室へ行った。
「なぁ、原田ー。」
失礼します、すら言わずに保健室へ入ると、夕日に染まった綺麗な顔は、目をつぶっていた。
寝てるのかよ。と心の中で舌打ちする。
亮平の寝顔をジッと見つめた。
…油性ペンで落書きでもしてやろうか?
俺は一人で、落書きをされた亮平を思い浮かべ、クスクスと笑った。
それにしても、本当に美形だ。
それを証拠に女子生徒によく告られてるし。
睫毛は女みたいに長くて、肌も綺麗で、唇なんて…。
…唇。
俺鼓動が早くなる。
亮平の唇に触れると、とても柔らかく、暖かかった。
キスしたいと思ってしまう。
しちゃダメかな…。
「いやいや、ダメに決まってんだろ、俺。」
独り言をつぶやく。
はたからみたら、変人だ。
でもしたい。どうしても。
欲情してる…。
方恋ってきめたのに。
でもキスだし…、寝てるし…ばれないと思う。
バレても、悪戯ってことでどうにかなる…。
「亮平…。」
いいだろ?
別に。
愛しの保健室の天使の唇が俺の唇と重なる。
久しぶりのその感覚に鼓動が早くなる。
「へっ!?」
ガバッと不意に伸びてきた亮平の腕が後頭部にまわり、もう1度唇を重ねさせた。
亮平の舌が、俺の口の中に入ってくる。
熱くて、甘くて…。
それは久しぶりに俺の欲を満たす。
「…ん…はぁっ…りょ…っん…」
亮平はキスをやめようとはしなかった。
…なんで?
なんで、こんなこと…?
だってコイツ、俺の事忘れてるんだろ?
「ん…ちょっ、まっ…は…っ」
酸素を求めても、亮平は俺の唇をはなさない。
本当に息ができなくて気が遠くなりかけて、やっと解放された。
「…はっ…はぁ。りょ、亮平…?」
「…。俺…いま…。」
亮平に声をかけると、亮平は驚いた顔をしていた。
…自分でやったくせに。
辛くなって逃げ出そうとする俺の腕を、亮平は掴んでとめた。
「―――ッ!離せッ!!」
「逃げんなよ、お前は俺のだろ…?」
「…え?」
…今、俺のって…言った?なんで?
だって、記憶…。
俺の目から涙が零れ落ちた。
「何泣いてんだよ、タツ。」
その微笑みだけで俺はすべてを理解した。
記憶が戻ったんだ。
「亮平!亮平!りょうへえ!…ぐすっ。馬鹿!…俺が、どんだけ…どんだけ、苦しんだと思ってんだよ?…俺が、どんだけ待ったと…。…馬鹿野郎!」
「あはは。ごめんごめん。…おまたせ?」
優しくそう言ってひろげた腕の中に、飛び込んで俺はわんわん泣いた。
亮平の匂い。
久しぶりの亮平の腕の中。
「一生俺から離れるな。そう言っただろ?」
「馬鹿。俺だって人間なんだよ。ずっと片思いなんて…辛いよ!」
「知ってる。俺も前まで片思いだったしね?」
亮平はそう言って、もう一度熱くて甘いキスをした。
「おかえり」
「ただいま…。」
俺はもう、2度と亮平を離さない。
だって俺は、亮平のものだから。
だからズット俺の隣は亮平で、亮平の隣は俺なんだ。
俺は満面の笑みで保健室へ向かう。
「りょうへー!…え。」
目の前に広がる光景に俺は絶句する。
女子生徒と亮平がキスをしている。
「…。」
女は涙を流しながら、無言で走り去る。
亮平は何事もなかったかのように、書類になにかを書きはじめる。
「な、何。今の?浮気じゃん!…最低!」
「チガウ。勝手にされたんですよ。馬鹿に馬鹿とは、言われたくないものですね。」
「はぁー?」
俺は学生。アイツは教師。
俺は学生でアイツは成人。
俺は男で、アイツも男。
俺の悩みはこれからも尽きそうにはない。
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