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順平の心

本編では完璧ホモ要員としての登場だった順平。


なぜ順平は、最後に美樹と付き合っていたのかっていう話です。



「順平。待ってよ。」

俺のとなりには、小さい頃から彼女の姿があった。

「順平ってば、聞いてるの?待ってよー。」

息を切らす彼女。

俺は、彼女に意地悪をするのが大好きだ。

「早くしろよ。おいていくぞ。」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

彼女の名前は信濃美樹。

俺の幼馴染だ。

家もお隣さんで、母親同士が幼馴染ときてる。

そのせいか、生まれたときから俺と美樹はずっと一緒だった。


俺の隣に、美樹がいなくなったのは、小学校4年生になった時からだ。

可愛い美樹は、女子から訳のわからない痛い目線を浴びるようになっていた。

「●●君に色目つかうな。」だとか、身に覚えのない名前が女子からあがってくるそうで、美樹が女子に囲まれているときは、常にたすけていた。

だけど、そんなある日。

「順平。もう美樹に構わなくて良いよ。」

「え?」

いつものように、一緒に帰ってるときの事だった。

「美樹、今好きな人いるんだ。順平を好きって疑われたら嫌だし。」

「何…ソレ。美樹の好きな人って誰?」

「…大橋先生ッ」

美樹の口からでてきたのは、担任の美形の先生の名前。

「先生?無理にきまってるじゃん。歳がはなれすぎだよ。」

「良いのっ!とりあえず、美樹に構わないでね。」

そう言って、走り去った美樹の背中。

美樹は泣いていた。

俺はそんなに邪魔だったようだ。

自分の気持ちに気がついた瞬間の失恋だった。


高校に入って、初めて美樹以外の奴に惹かれた。

一目惚れだった。

同じクラスの相馬達也。

人目を惹く顔立ちをしていた。

肌も女子みたいに綺麗で、ワックスで盛った茶髪の髪は、柔らかそうで俺の頬を赤くさせた。

「なぁ…、木下だっけ?」

「えっ、あ。うん。」

不意打ちだった。

前の席だった相馬達也は、授業中、急にふりむいて俺の目を見据えた。

誰とも話さない、暗そうな相馬。

そんな相馬の声を、まともに聞いたのは俺が初めてだったのかもしれない。

「消しゴム借りる。」

「は?」

それは、貸してではなく借りるだった。

拒否権はなかった。

その日から、俺と相馬は仲良くなった。

「おい、木下?」

「んっ?何。」

「馬鹿かおまえは。これ、違うぞ。」

授業中、俺のノートを見て、指をさす。

数学の計算の間違いを指摘された。

「え。」

相馬は、顔も良く、部活入ってないくせに運動もできて、頭も良い。

完璧な奴だった。

その綺麗な顔に女共も惹かれていた。

相馬は付き合ったり別れたりを繰り返していた。

告られたら、とりあえず付き合う。みたいな。

ただ、それが遊びでしかないのは俺はわかっていたし、そのうち女達もわかって傷ついていた。

「お前は好きな奴いないの?」

「…いるよ。けど、どこに居るかわかんないし。」

そう言った相馬はなんだか辛そうだった。

もともと同性だし期待はしてなかったけど、今回も失恋だな、と思った。




達也の好きな奴が分かったのは、2年に進級したときだった。

美樹とも同じクラスになっちゃって、気まずさを感じていたとき、保健養護の教師である原田が俺等の学校に赴任してきた。

女子がキャーキャー騒いでる中で、達也は泣きそうな顔で、原田を見ていた。

着任式が終わって、保健室に向かった達也の後をつけた俺はその時聞いた会話で、達也が原田を好きだってわかった。

2度目の失恋が確定。

俺は、原田が嫌いになった。




達也を犯した。

いや、正確には犯しかけた。

美樹が勝手に達也に俺の気持ちをバラしたから、その腹いせに美樹が欲しがっていた達也の初めてを貰うことにした。

無理やり押し倒して、達也が気にしているであろうことを言って、傷つけた。

本当に初めてだったみたいで、泣いて嫌がった。

そんな達也を可愛いと感じた。

俺は、自分が歪んでることに気がついた。

いや、そんなことはないのかもしれない。

だけど、達也がまっすぐすぎて、自分が歪んでいる気がした。


そんなまっすぐな筈の達也が、原田を忘れるために、俺を利用した。

「友達として好き。」そう言ってくれた達也の事が、俺も好きだった。友達として。

達也が好きだった。

達也には人をひきつける何かがあったんだ。

だけど、それは過去の話。

俺は、その時点で、達也のことを友達として好きだった。

だって俺は…。




「美樹、好き。」

「え?何、急に。」

自分の気持ちに気づいた俺は、美樹を呼び出して、何気に初めての告白。

美樹は驚いていた。

「俺、小4のときに、美樹に突き放されてから、ズット美樹が好きだったんだ。達也も好きだけど、美樹に対する好きと、達也に対する好きの大きさは全然違うんだ。…付き合ってくれませんか。」

「じゅ、順平…、別に嬉しくなんてないんだから!ずっと、ずっと、美樹も達也好きだったけど、でも…、本当は順平に嫉妬して欲しかったとか…あり得ないし!」

「はぁ…。」

俺は、はじめて美樹がツンデレだって知った。


「順平。」

「うん?」

何気に初デートで遊園地に来ていた俺と美樹。

夕方、観覧車にのろう、といわれて乗った矢先、美樹が俺の名を呼んだ。

「順平…。」

「ん?」

「…好き。」

「う…ん。」

赤面する俺。

なんだか、余裕がない。

「順平は、美樹をずっと好きでいてくれる?」

「ううん。」

「へッ?」

美樹の目に涙が浮かぶ。

「俺は、一生美樹を愛すよ。」

「なっ、なによぉ!美樹だって、愛してやらないこともないよ!」

観覧車の頂上。

プロポーズに近い、愛の告白。

ありきたり過ぎるシチュエーション。

俺は美樹には初めてのキスをした。


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