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チートだらけの異世界で、俺だけ少年漫画の主人公です  作者: 小鳥遊 千夜


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第0話 世界をなろう化する男

 

 その男は、机に向かっていた。


 深夜2時。小さなアパートの一室。


 机の上には漫画の原稿用紙。


 ジャンルは王道のファンタジー漫画。


 弱い少年が仲間と出会い、


 修行し、強敵を倒し、世界を救う。


 友情。努力。勝利。


 男が子供の頃から大好きだった、

「少年漫画の王道」そのものだった。


 ペンを握る男の名前は――


 神野真哉(かみのしんや)


 ペンネームは天城(あまぎ)ゼン。


 だが――


 売れなかった。


 担当編集は困った顔で話す。


「神野先生……。今回の件ですが……」


 真哉は分かっていた、

 それでも聞かずにはいられなかった。


「その連載は……」


 編集は頭を下げた。


「申し訳ありません。打ち切りになります。」


 真夜の視界が揺れた。


「そんな……まだ伏線もありますし、」


「魔王四天王も出てきます!」


「主人公もまだ覚醒します。まだやれます!」


 編集は静かに言った。


「……残念ですが、既に決定していることなので……」


「どうしてですかッ!!」


 真哉は机を叩いた。


「王道ですよ!」


「仲間と修行して強くなる!熱いバトルもある!……なのに」


 編集は少し困った顔をしながら話す。


「……今は、そういう時代じゃないんです」


 真哉の手が止まる。


「時代?」


 編集はパソコンを回した。


 そこにはランキングが映る。


 ・転生したら最強でした

 ・異世界でチート無双

 ・レベル9999の俺が世界最強


 似たようなタイトルが並んでいる。


 編集は言った。


「今はこういう作品が人気なんです」


「最初から強い主人公、チート能力…

 効率よくスマートに勝つような作品です。」


 真哉は呆然とした。


「努力は……?」


 編集は答えない。


「友情は?」


 沈黙。


「勝利は?」


 編集は小さく言った。

「もう読者には求められてないんです」


 真哉の頭が真っ白になった。



 失望のまま、外を出ると既に日は落ち雨が降っていた。


 ネオンが濡れた道路に映る。


 真哉はスマホを見ていた。


 どのランキングにも並ぶのは


 異世界。チート。最強。


 同じような作品が並んでいる。


 真哉は笑った。


「……なんだよ。これ」


「…努力しない主人公…最初から最強。」


「楽して勝利。…かぁ」


 笑いながら、涙が落ちた。


「俺の漫画は……」


 子供の頃から夢、


 何作も何作もネームを送り続け、やっと掴んだ連載だった。


 それがたった半年で打ち切り――。


 おまけに時代遅れときた。


 あの血の滲むような努力は何だったのだろうか…?


 真哉は空を見た。


 ――努力なんて意味がない――


 ――熱い展開も意味がない――



「だったら……」


 信号が赤に変わっているのにも気付かず

 真哉はフラフラと歩き出した。


 その瞬間――


 トラックのクラクション。


 振り向くが、

 既に遅く世界が白く弾けた――





 目を覚ますと、そこは巨大な城だった。


 黒い玉座に魔物達。


 そして頭の中に流れ込む世界の知識。


 魔力にスキル、それにレベル。


 ゲームのような世界。


 真哉はゆっくり笑った。


「異世界……か」


 体の中に感じる、圧倒的な魔力。


 チート能力。


 真哉は玉座に座ると、魔物たちがひざまずく。


 真哉は静かに言った。


「…なるほど、そういう世界か…」


 目を閉じる。


 編集の言葉が思い出される。


「今はチート主人公の時代です」


 真哉は笑った。


「そうかよ。…だったら」


 立ち上がり、魔力が城を震わせる。


「俺が作ってやる!」


 真哉の目が赤く光る。


「努力なんていらない世界!最初から最強の世界!

 効率だけが正しい世界を!」


 拳を握る。


「この世界を――」


()()()()()()()にする!」


 闇が広がる。


 友情なんていらない――


 修行なんていらない――


 勝つのは強い奴だけでいい――


 真哉は宣言した。


「この世界をなろう化してやる!!」


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