第8話 条件
「おかえりー」
3日目の夕方ごろに、爺ちゃんと祖母ちゃんが帰って来た。
「おお、壮太。一人で大丈夫だったか?」
「俺も子供じゃないんだから、問題ないよ」
「ははは。そうじゃったな。それにしても壮太……お前、なんというか体が……」
爺ちゃんが俺の体を見て、戸惑った様に祖母ちゃんの方を見た。
「ずいぶんとまあ、たくましくなったわねぇ」
爺ちゃんと目を合わせてから、祖母ちゃんがそう言う。
そう、俺の肉体はこの三日で見違える程たくましくなっていた。
三日前までは寝たきりだった事もあってかなり細かったのだが、今は細マッチョレベルに筋肉がついていた。
まあたった三日で、孫にモリッと筋肉がついたらそりゃ戸惑うよな。
俺自身も変化に気づいてびっくりしたし。
男子三日会わざれば刮目して見よ。
何て言葉もあるけど、それは内面的な成長で会って、肉体的な成長ではないからな。
因みに、体が筋肉質になったのは訓練効果アップの影響だ。
剣術訓練は筋トレ効果もあるから、パワー、要は筋肉がついた訳である。
因みに、レベルアップによるステータス上昇では、筋肉なんかは付かないっぽい。
リハビリ中に3回上がったけど、ガリガリのままだったし。
……これだけ体格が変わると、隠し続けるって訳にも行かないよな。
「それなんだけどさ。実は爺ちゃんたちに話す事があって……あ、とりあえずお茶を出すよ」
祖父母も疲れているだろうと思い、まずはお茶を用意する。
そして三人でテーブルにつき、俺は自分に何が起こっているのかを二人に説明した。
神様との邂逅や、そして特殊なチート能力を貰った事を。
「ふむ、にわかには信じがたい話じゃな。ま……ダンジョンや覚醒が起きる前までなら、の話ではあるが」
爺ちゃんがにっと笑う。
どうやら俺の話を信じてくれた様だ。
まあ、三日で目に見えて筋肉質になったってのが大きいんだと思う。
流石に証拠っぽいものが無かったら、孫のいう事でもそう簡単には信じてくれなかったはず。
神様云々なんて話は。
「リハビリが凄く早く終わって祖母ちゃんびっくりしてたんだけど、そういう理由だったんだねぇ」
祖母ちゃんは気にしつつも、聞かずにいてくれた様だ。
「うん。黙っててごめん」
祖父母にリハビリ中に言わなかったには、実は大きな理由が……などはない。
こういう力は隠しておいた方が良いっていう、先入観的な思い込みからそうしていただけだ。
なので、二人を信じる信じないってレベルの話ですらなかった。
「いいんじゃいいんじゃ。こうして話してくれたんじゃからな」
「ええ、そうですね」
爺ちゃんと祖母ちゃんは、気にしていないって感じで優しく笑ってくれる。
「それで俺……神様から貰ったこの力で強くなって、ダンジョンで生計を立てようかと思ってるんだ」
「む……」
「それは……」
俺の言葉に、二人が困惑の反応を見せる。
「壮太。それは流石に……」
「ええ……」
そりゃ反対するよな
ダンジョンって、最悪人死にする様な場所だし。
まあ、そんな場所に祖父母の二人も言ってる訳だけど……それとこれとは話が別か。
二人はソーサラーとして優秀でその名を馳せてるけど、俺の力は未知数だからな。
ただ、俺は行けるって確信している。
「神様から貰った力だけあって、凄いんだぜ。三日でもうほぼ別人レベルでさ。このまましっかり訓練したら、魔物退治だって十分行けると思うんだ」
この三日の成果は本当にすごい物だった。
誇張や見た目だけじゃなく、俺の身体能力は数倍に膨れ上がっていると言っても過言ではない。
きっと今なら、熊とだって戦えるだろう。
たぶん。
まあ現状は兎も角、このペースで強くなれるのなら、俺は魔法なしでも魔物を狩れるようになる筈である。
「しかしのう……」
「壮太には、祖母ちゃんもっと普通の仕事について欲しいわ」
「俺、コミュ障で人付き合いが苦手だから……でも、トラックで人を引き殺してるからあの仕事には戻れないし……」
罪に問われていないとはいえ、だからってあの仕事に戻れる程俺は厚顔無恥ではない。
別の仕事で、かつ人との接触を少なく済ませられる物と考えると、魔物狩りは俺にとって理想的と言えるだろう。
もちろん、熟せればの話ではあるけど。
「ふうむ……分かった。わしは反対せん。但し、条件を出させて貰う」
「条件」
「うむ。魔物を狩る事を生業にするには力が必要じゃ。お前にその力があるか、爺ちゃんを納得させなさい。それが最低条件じゃ」
それはこちらとしても有難い。
自己判断だけより、魔物と戦ってる爺ちゃんに力を確認して貰った方が絶対良いから。
◆◇
「本当に良いんですか?壮太の事」
「うむ。安心せい。」
壮太とのやり取りの後、風呂と食事を終えると寝室で妙が心配そうに訪ねて来た。
「イフリートを合格ラインにしておけば、壮太もきっと諦めるじゃろう」
わしの召喚出来るイフリートは不完全なものじゃが、それでも魔物のランクでいうならAランク相当である。
神から貰った力が――本当に神かは少々疑問があるが――あるとはいえ、魔法なしであれを倒すのは難しいはずじゃ。
イフリートを倒せんようでは、魔物を単独で撃破するのは難しい。
実際はそんな事はないんじゃが、そう言っておけば勝てなければダンジョン探索を諦める筈。
あの子は無謀な真似をする様な子じゃないからのう。
まあ孫に嘘を吐くのは、少々心ぐるしいが。
あのこを守る為じゃからな。
「もし、もしもですけど……万一あの子がイフリートを倒したら?」
婆さんが不安そうにそう聞いて来る
「ぬ……その時は……まあ認めてやるしかないじゃろうな」
余り考えたくはないが、そこまでの力を見せられては納得せざるえない。
流石にそれ以上となると、ワシや婆さんが本格的に相手取る必要があるレベルな訳じゃし。
日本トップランクであるワシらに勝つまではという条件は、流石にあれじゃからのう。
そんな条件出したら孫に嫌われてしまうわい。
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