第7話 見て学ぶ
動画に出ているのは細身のイケメンだった。
登録者数は1,000ちょっと。
再生数も同じぐらい。
人気って程ではないけど、そこそこ見られてる感じだな。
「なるほど。特殊な魔法を使って肉体を強化しつつ、ゼロ距離で拳と魔法を叩き込むスタイルな訳か」
動画は、広い場所で大きな模型相手に動きを入れながら説明が入る感じで進んで行く。
対魔物戦は、近接戦では動きを止めない事が基本だそうだ。
魔物の攻撃は強力で、受ければ魔力の消耗が激しくなり――強い負荷を受けると身体強化魔法は魔力がゴリゴリ減るっぽい――さらに、体勢を崩され相手の連続攻撃を喰らう事になりかねない。
だから動きは止めず、常に相手との間合いを意識する必要があるとの事。
「相手を翻弄し、ヒットアンドアウェイで隙をついて瞬間的な火力を叩き込む。それが魔闘術の肝な訳だな」
攻撃に近距離魔法が混ざっていてそこは再現できないが、基本スタンスという意味では十分参考になる動画だ。
「動きを止めずヒットアンドアウェイを心がけるなら、蹴り技は微妙だよな」
手だけって条件だと、パッと思いつくのはボクシングだけど……
そんな俺の安易な考えを、動画内の男がすぐに否定する。
『こう説明すると、蹴り技が駄目と考える人もいるでしょうが……』
的な感じに。
「ほうほう。蹴りは動きの中に取り込む様に使え、ね」
例えば、間合いを詰めて攻撃を加え、そこから離脱する際に相手の体に蹴りを入れつつ、その反動でも間合いを離すとか。
その逆に、間合いを詰めた勢いで蹴りを入れるとかだ。
「纏めると、常に動き続けて間合いを、蹴り技はその動きの中に取り込む。それが対魔物戦での、魔闘術の戦闘スタイルな訳だな。まあ……実践向けでは無いっぽいが」
何故実践向けではないのか?
それは――動画のコメント欄に寄せられた多くの否定的なコメントから分かる。
やれリスクが高すぎるだの。
強化魔法は魔力の消費が大きいから、短期決戦しか出来ないだの。
そもそも、遠くから攻撃できるのに、なんで自分から近づくのか意味不明だとか。
集団戦には向かないとかだ。
「まあ確かに。遠くから強力な攻撃が出来る魔法使いが、相手から攻撃されるリスクを背負って態々近づくのはあれだもんな。魔法で壁を張ってくる様な魔物には、潜り込んで攻撃できるって点を評価している人もいるけど」
効率無視の趣味スタイル。
それが魔法使いから見た、この魔闘術って奴である。
「まあ俺は魔法が使えないから、この動画は非常に参考になったけど」
魔法使いにとっては非効率でも、魔法が使えず近接戦をしようとしてる俺なら話は別だ。
他の動画でいろんなタイプの魔物との戦い方の動画も上げてるそうなので、チャンネル登録とグッドボタンをぽちっとしておく。
「さて、他の格闘技の基本動画は……と」
それ以外の格闘技の動画にも俺は目を通す。
さっきの動画はためになったが、そもそも最初に求めていた物とは違う物だったからな。
近接戦の戦い方講座ではあっても、拳や蹴りの基本の動きとかなかったし。
「ん?」
1時間ほど、いろんな格闘技の基礎講座動画を見たところでアビリティが生成された。
格闘術Lv1だ。
効果は、格闘系に補正がつくって感じである。
「自分で体を動かさなくても、見てるだけでも良いのか」
肉体を使う系だから、訓練とかしないと駄目だと思ってたが、どうやらアビリティ生成は努力の方向性は問わないみたいだな。
―—翌日。
朝起きて、取り敢えず食パンを食べる。
祖父母は泊まりがけで3日は帰ってこない。
初日は作り置きされたものを食べたが、今日からは材料が冷蔵庫にパンパンに詰まっているので自炊だ。
まあ簡単なものしか作れないが。
「昨日見た動画を参考に、模造刀を振るか」
格闘技の動画を見て、アビリティも手に入りはしたが……まあ優先順位は武器有りの戦いだ。
なので、剣術がある程度形になるまでは剣の基礎を重点的に訓練する。
「剣術でも動きを止めず戦う必要があるんだろうけど、そういうのは基礎が出来てから考えりゃいいだろう」
俺は昨日見た動画を参考に、剣術の訓練を行う。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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