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第4話 七魔天

ダンジョン。

それは8年前に突如地球に現れた、謎の空間を指す言葉だ。

内部構造は洞窟だったり、神殿だったりと多種多様だそうだが、まるでゲームの様に魔物が出る事からその名が付けられている。


あの時、俺の事故の原因となったあの黒い何か。

あれこそが、世界で最初に出現したダンジョンだったらしい。


ああそうそう、俺は人を轢き殺してる訳だが……


どうもそれは無かった事になっているらしく、あの事故は物損として扱われていた。

意識を失う直前、坂崎裕也(さかざきゆうや)という若者の体は光の中に消えている。

恐らくその時、俺が轢き殺した痕跡も消えてしまったのだろう。


わざとではないとはいえ、正直、彼には悪い事をしたと思っている。

出来れば異世界でチート無双を楽しんでくれている事を祈るばかりだ。


っと、話がそれたな。


突如地球の各地に現れたダンジョンだが、それは人類に新たな恵みを齎していた。

ゲーム等でよく聞く、回復役(ポーション)の様なアイテムをはじめ、魔石と呼ばれる莫大なエネルギー資源など。

それらがダンジョンから手に入る様になった事で、人類の生活様式は大きく様変わりしていた。


言ってみれば、ダンジョンは資源庫の様な物だ。

但し、そこから何かを持ちだすには、そこに住まう魔物を狩る必要がある訳だが。


――魔物。


ダンジョン内に住まう、通常の生物の法則から逸脱した存在。

重火器なんかですら容易くはじき返す強靭な肉体を持ち、鉄を紙切れの様に裂いてしまうパワーを有した、化け物じみた生物。

それが魔物だ。


当然そんな化け物相手に、既存の兵器で太刀打ちする事はかなわない。

じゃあ、どうやってダンジョンから資源やアイテムを回収しているのか?


それを行うのが覚醒者――ソーサラーと呼ばれる魔法を扱う者達だ。


ソーサラーはダンジョン出現とほぼ同時期に、人類の中から生まれ出した。

まるでその力で、ダンジョンを攻略しろと言わんばかりに。


ソーサラーの扱う魔法の力は凄まじく、現代兵器の通用しない魔物達を容易く倒してしまう程だった。

正に奇跡の力と言えるだろう。


そして俺の爺ちゃんと婆ちゃんは、そのソーサラーとして覚醒した存在。

という訳である。


「おお!すげぇ!!」


家の庭に出て、爺ちゃんが掌を上に向けると、そこから火の玉が飛び出してきた。

婆ちゃんも同じ様に手を上に向けると、水球が。


「わしの属性は炎で、婆さんは水じゃ」


ソーサラーには属性がある。

中には複数の属性を持つ者もいるそうだが、基本一人一属性だそうだ。


え?

なんでそんなにソーサラーに詳しいのかって?


入院中は暇で、リハビリ以外はずっと有料のテレビ――お見舞いの際に、婆ちゃんが視聴用のカードをくれた――を見てたからな。

そこから色々と、今の世界の情報を得たという訳だ。


「わしらは今、神威と言うギルドに所属してての。そこでダンジョン探索をしとるんじゃ」


「え!?爺ちゃん達ダンジョンに入ってんの!?」


爺ちゃん婆ちゃんは、今年で80を超える。

そんな高齢の二人が、魔物の徘徊するダンジョンの探索をしてると聞かされて、俺はぎょっとなった。


いくら魔法が使えるからと言って、そんなの普通ならあり得ない話だ。

けど、二人はそんなありえない事を行っている。


それはきっと――


「それって、俺のせいだよね。ごめん、爺ちゃん……」


俺の入院費が嵩んだというのもあるだろう。

だけどそれ以上に、爺ちゃん達は、意識不明だった俺の事を何とか起こしてくれようとしていたんだと思う。


ダンジョンからはポーションなどの、それまでにはなかった画期的な薬品がいくつも発見されている。

きっと二人は、俺を目覚めさせる事の出来るようなアイテムを手に入れようとしていたに違いない。

だからダンジョン探索なんて無茶をしたんだ。


「まあ最初はな……ダンジョンで特殊な薬を手に入れて、なんとかお前を目覚めさせるためじゃった。けど、今はそれだけじゃない。なあ婆さん」


「ふふ、そうですね。壮太、お爺ちゃんのソーサラーとしての二つ名を聞かせて上げるわね。『炎王豪気(えんおうごうき)』よ。凄く厳つい呼び名でしょ」


「はっはっは。そういう婆さんこそ、水鬼妙(すいきたえ)なんて呼ばれとるじゃないか」


祖父母に付けられているという仰々しい二つ名。

それは俺の知る穏やかな二人には、とてもにつかわない物だった。


「ん?炎王豪気(えんおうごうき)水鬼妙(すいきたえ)?それ、テレビのニュースに名前が出てた様な……あっ!?まさか七魔天!?」


七魔天。

それは日本最強の7人のソーサラーを指す称号だ。


――そして其の7人の中に、炎王豪気(えんおうごうき)水鬼妙(すいきたえ)の名が入っていた。


「んむ。わしと婆さんは、第7サークルの魔法使いじゃ」



拙作をお読みいただきありがとうございます。


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