第23話 精霊
「そうか。まあ事情分かったよ」
母のためにエリクサーを手にれる。
そのためにソーサラーとして頑張る。
まあ泣かせる話ではあるな。
けど……
爺ちゃんや祖母ちゃんレベルなら兎も角、ソーサラーの稼ぎが良いとはいえ、正直、並みの力量で手に入れようと考えたら、それこそ何十年もかかりかねない。
そして目の前の3人の実力は、正直、全然大した事ないレベルにしか見えなかった。
なにせ急に数が増えたとはいえ、俺に瞬殺できる程度のFランクボスに負けそうになってた訳だしな。
一応、ソーサラーには伸びしろがあるみたいだけど……仮に鍛えたからと言って、この子達が一流のソーサラーに成れるとは到底思えないんだよなぁ。
ソーサラーは訓練や実戦でその魔力を鍛える事が出来る様だが、それにも限界があった。
10の力を20や30にする事は出来ても、500や1,000にする事は出来ないのだ。
だからこそ、覚醒時の魔力がソーサラーにとって絶対的な指針となるのである。
「気持ちは分からなくもい。けど、君達の魔力量を考えると……」
爺ちゃん曰く。
ガーディアンの質や数は、魔力量の影響を大きく受けるそうだ。
で、爺ちゃんのイフリートの強さを100とするなら、さっき3人が呼んでたガーディアンの力は……まあ良く見積もって、3体合わせて1だ。
そして爺ちゃんはイフリートを同時に10匹以上召喚出来るとの事。
単純計算。
100×100で10,000の爺ちゃん。
1×3体で3の乾君達。
ガーディアン比で言うなら、その差は333倍ほどある事になる。
もちろんそんな簡単な比較で、正確な魔力量の差は測れないだろうけど、爺ちゃん達と乾君たちの間には、絶望的な程の魔力量の差がある事は疑いようがない。
流石にここまで差があると、爺ちゃん達クラスどころか、努力してもいっぱしのソーサラーに成れるかも正直怪しく感じてしまう。
正直、才能がないのなら、まだ別の道を模索した方がいいんじゃないかと個人的には思えて仕方がない。
が、まあそれは余計なお世話だよな。
彼らには彼らの考えがあるのだから。
「いや、余計なお世話だったな。君達が上手く行く事を願ってるよ」
俺が彼らにしてやれる事は何もない。
なので、話はここでお終い。
まあ、その気になれば乾君たちにエリクサーを用意してやれなくもないんだが……
爺ちゃん祖母ちゃんに頼めば、きっと多少時間はかかってもエリクサーを手に入れてくれるはずだ。
けど、俺はそれをする気はなかった。
可哀そうじゃないのか?
いやいやいや。
いくら可哀そうだからって、出会ったばっかりの人間に数十億プレゼントする超ド級のお人よしなんていないだろ。
常識的に考えて。
百歩譲って、百歩譲ってだよ。
俺自身が何とか工面するなら兎も角、爺ちゃん祖母ちゃんに頼って数十億する物を友人でもない人間にプレゼントとか、もう完全に頭おかしい人だからな。
なので何もできないし。
しない。
だ。
「じゃあ俺はこれで――」
ダンジョンボスのドロップが2つ落ちてるが、それは敢えて回収せず置いていく。
不幸な彼らへの、俺が出来る最大限の餞別だ。
「待ってください!」
脱出ゲートへと向かおうとすると、乾巧に呼び止められる。
「今のままじゃ……俺達の力じゃ、エリクサーを手に入れるのは無理です。だから……だから……俺を貴方の弟子にしてください」
乾巧がその場で土下座。
「………」
んん?
俺の聞き間違いか?
彼、弟子にしてくれって言ったのか?
意味が分からない。
ソーサラーは訓練で魔力量を増やせるのは事実だ。
その方法もネットで転がってる。
なので、誰かに弟子入りする意味とかはない。
ひょっとしたら、物凄い効率のいい魔力増強方があるのかもしれないけど……
当然俺がそんな方法を知る訳もない。
そもそも俺はソーサラーですらないしな。
まあある事を前提で考えるにしても、Fランクに来てる程度の奴が、そんなもの知ってる訳もないと思うんだが?
「巧君?」
「お兄……ちゃん?」
乾恵と神崎涙も、急な乾巧の言葉に驚いている様だった。
ま、そりゃそうだ。
初対面の奴に、いきなり意味があるかどうかも分からない弟子入りを申し込むとか、頭大丈夫かってなるだろうし。
「いや、急に弟子にしてくれって言われても……」
「俺……精霊属性なんです」
「精霊属性?」
属性って言うから、魔法使いの属性なんだろうけど……爺ちゃんから聞いた属性の中に精霊属性はなかった様な。
爺ちゃんは炎王の二つ名からも分かる通り、火属性を持つ魔法使いだ。
で、水鬼の二つ名を持つ祖母ちゃんは水属性。
まあ爺ちゃんは火以外にも風と土属性があって。
祖母ちゃんは冷気と、それに生命属性を所持している感じだ。
この属性ってのは、扱える魔法に影響する物である。
属性を持つ魔法は威力が大幅に上がるそうで、逆に属性外の魔法は魔力の消耗が激しかったりして、使い勝手が悪くなるそうだ。
因みに属性3つ持ちの爺ちゃん祖母ちゃんだが、属性3つが全部等しい訳でない。
爺ちゃんは火属性との相性が一番いいらしく、火の魔法が一番得意だそうだ。
そして祖母ちゃんは水属性。
だから他の2属性じゃなくて、炎王と水鬼って二つ名がついた訳である。
「はい……どうも特殊な属性っぽくて、誰にも俺の召喚した精霊は見えないみたいなんです」
乾巧が頭を上げ、掌を上に向ける。
まるでその上に何かが乗っかっているかの様に。
「そこに精霊が?」
「はい」
俺には精霊とやらが見えない。
空間把握の方も同様で、彼の掌の上にいる精霊とやらは感知できなかった。
ホントに精霊なんているのか?
揶揄われてるって事はないと思うけど……見えない感じないのにそこにいるって言われても、どうにもなぁ。
「それで……俺の呼び出した精霊が行ってるんです。貴方なら、俺を強くしてくれるって」
「本当なのお兄ちゃん」
「うん。だから……お願いします。俺を弟子にしてください」
「……」
見えない精霊が囁く。
『俺に鍛えて貰ったら強くなれる』
と。
普通に考えたら精神疾患か、薬でもやってんのかとしか思えないんだが……
ただ、俺は神様からナイスアシスト賞を、要は力を貰っている。
精霊って神秘的なイメージもあるし、その辺りに反応してって可能性は否めない。
まあ見えないから、ほんとにいるのかどうかも確認でき――
「ん?」
乾君の掌の上を凝視していると、唐突に俺の中にアビリティが発生する。
その名も【神秘感知】。
効果は、この世に存在する神秘的な物を感知する、だ。
そして【神秘感知】の影響か、先ほどまで見えなかった乾巧の掌の上にいる精霊が、今は俺の目にハッキリと映っている。
人型の、羽の生えた小人で。
色は全体的に白っぽい。
絵本なんかに出て来る妖精っぽい姿だ。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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