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第22話 いきなり事情を話されても困るんだが?

ボスが死んでゲートが開いたのでさっさと帰りたかったが、流石に放っておくのも躊躇われる状況だったので――女の子達がわんわん泣いてる――出来るだけ不快感を顔や態度には出さず、とりあえず少年と話す事に。


「ボスが急に増えた?」


助けた三人の名は、唯一の男の子が乾巧(いぬいたくみ)

早々にへたれて泣いてた子が、彼の妹である乾恵(いぬいめぐみ)

そして眼鏡をかけたおさげ髪の女の子は、神崎涙かんざきるいだそうだ。


「はい。戦ってる最中に急にもう一匹増えて……それで僕達パニックになって……」


「ふむ……」


最低ランクとは言え、魔物のいる場所だ。

なので俺も事前情報として、ソーサラー協会のホームページから情報を仕入れていたわけだが……


そういや、ボスは単体って載ってたよな。

言われて気づいたわ。


しかしなんでボスは増えたんだ?

意味が分からん。

爺ちゃん祖母ちゃんから受けた講習じゃ、ボスが増える話なんてなかったんだけどな。


知らなかったのか。

極稀だから教えなかったのか。

単に度忘れで教え忘れてただけか。


はたまたボケが始まったとか?


いや流石にボケてはいないだろうけど。

まあ分からん。

帰ったら聞いてみるとしようか。


「まああれだ。ダンジョンは危険な場所だからな。君達も今回の事で身に染みただろうから、ソーサラーじゃなく普通に生活する事をお勧めする」


俺は人と絡むのが苦手なコミュ障だから進んでダンジョンに来てるが、若い子ら、しかもたいして才能の無い子ら――覚醒時の魔力量でほぼ才能は決まる。なのでこんな所で苦戦してるようなら、まずたいして才能ではない筈——が命を賭けてまで魔物退治をするのはお勧めできない。

なので痛い目に遭った事だし、これを気に生き方を変えるよう諭しておく。


ま、俺は一応良識のある大人のつもりだからな。

コミュ障だけど。


「辞めません!」


泣き止みつつあった乾恵って子が、俺の言葉に強く反発してきた。


「私達は……私達はソーサラーとしてやっていかなきゃ……だめ……だから……」


女の子がまた泣き出し。

メガネっ子の神崎類が彼女を強く抱きしめる。


なにこれ?

まるで俺が酷い事言ったみたいな構図なんですけど?


「すいません。俺達、ソーサラーとしてやっていかなきゃならないんです」


どうやら何か事情がある様だ。


「そうか。まあ、事情があるなら仕方ないな」


事情があって、ソーサラーとして生きると決めているなら、他人が口出しするのは余計なお世話以外何物でもない。

まあ危険な道ではあるが、頑張ってくれ。

俺も一人で頑張るから。


「じゃあ――」


「俺の両親、半年前に交通事故に遭ったんです」


じゃあおれはこれで。

そう言おうとしたら、乾巧が急に両親が交通事故に遭ったとか語り出す。


なんでいきなりこの少年は身上を語り出したんだ。

解せん。


「母は重体でしたが、なんとか一命をとりとめる事が出来て……でも、父はしにました」


「そうか……」


急にそんな話されても、マジでそうかとしか答えようがないんだが……

この状況で気の利いた言葉が吐き出せるようなら、俺はコミュ障になんてなってないだろうからな。


「でも……」


乾巧が辛そうに俯く。

話はまだ続く様である。


そして絶対、続くのは不幸話だよな……


直ぐ近くにあるゲートに猛ダッシュしたい気持ちを堪え、俺は乾巧の言葉の続きを聞く。


「母が治療中に覚醒してしまったんです」


「それって……」


覚醒ってのは、人に大きな変化をもたらす物だ。

そのため体にかかる負担も大きい。

重傷を負って治療中だった彼の母親にとって、きっとその最中に発生した覚醒は大きな負担となったはずである。


そのせいで死んだ?

いや、それだったら父と一緒に亡くなったって言うよな?


「命はそれでも取り留めたんです。でも……危険な状態で覚醒を遂げたせいで、覚醒不全が起きてしまって……」


覚醒不全?

なにそれ?


「すまないが、俺は覚醒不全って物を知らないんだ。どういう物か聞いても」


知ったかぶりで『そうか。大変だったね』とか返そうかと思ったけど、深刻な話にそれはどうなんだって気分になったので、止めて素直に聞いておいた。


「覚醒不全は、覚醒時に状態が悪いと起きる症状の事です」


俺の質問に、乾恵を落ち着かせていた神崎類が答えた。


「発生すると昏睡状態になって……今現在、その状態から回復した人はいないそうです」


植物人間状態になる訳か。


「どういう状態かも現代医学じゃ把握が難しいそうで、治療方法の確立の目途も立ってないそうです」


「不治の病か」


「だから、私達は……巧のお母さんを救うためにも、ソーサラーとしてやっていかなきゃならないんです。エリクサーを手に入れるため」


エリクサーと聞けば、ゲームなんかの最強の回復アイテムが思い浮かぶだろう。

実はこれ、ダンジョンから同じ様な物が産出されたりしてる。

名前が一緒なのは、効果が似てるからそうつけられらたんだと思う。


で、その効果は、欠損なども含めたダメージを完全回復させ、病気や健康被害を快復させるという、正に奇跡の霊薬と呼ぶにふさわしい物となっている。


あ、但し、病気は治せない物もある。

遺伝疾患系とかだな。

例えば先天的に腕を持たずに生まれて来た人間は、腕がない状態が正常と定義される様で、エリクサーを飲んでも腕が生えてきたりはしない様だ。


エリクサーに関してはこんな小話がある。


ある大富豪が重傷を負って、エリクサーによって助かった。

だが大富豪は自分のアソコを見てびっくりする。

何故なら、子供の頃に割礼されていた自分のアソコが包茎になっていたからだ。


まあ要は、エリクサーは遺伝子的に良好な状態に強制的に戻すため、整形なんかしてる人間が服用したら元に戻ってしまうって事だな。


……いや、俺は何を考えてるんだ?


他人と関わるストレスと、深刻な話から、ついつい現実逃避気味にどうでもいい事を考えてしまった。


「ソーサラーとして成功すれば、確かに一気に稼げるが……」


エリクサーはくっそ高い。

Sランクに分類されるダンジョンボスのレアドロップなので、とにかく数が出ない。

にも拘らず、効果は常備しておきたくなるほど有用と来ている。

そのため、その価格は軽く数十億になるといわれていた。


数十億とか、一般人に稼げる額じゃない。

だが、ソーサラーとして成功すれば一発逆転は確かにあり得る。


実際問題、意識不明の俺に爺ちゃん達はエリクサーを服用させたそうだからな。

ま、俺には効果が無かった様だけど。

その後も2年ほど昏睡してた訳だし。


完全に数十億をどぶに捨てた様なもんではあるが、爺ちゃん達は、孫が救える可能性があるなら安いもんだと笑ってた。

気持の問題もあるけど、実際、それ位の損失なんて簡単に取り返せるぐらい今の爺ちゃん達には稼ぎがある。


そう、優秀なソーサラーは超儲かるのだ。


よーし!

俺も頑張って稼ぐぞー!



拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


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