第20話 ランニング
「ここがダンジョンか……」
市街地にある、ソーサラー協会によって管理されていた黒い靄——ダンジョンゲートへと入ると、そこはザ・洞窟って見た目の場所だった。
本格的に意味不明な現象だが、まあ魔法使いがわんさかいる世界に変わっているんだから、むしろダンジョンぐらいあった方が自然と言えなくもない。
「さて……最低ランクのダンジョンだけど、気を引き締めて行こう」
ダンジョンにはランク付けがある。
Fが最低で、最高がSだ。
ランクは中の魔物の強さで決まるので、ランクが低ければ弱い魔物が。
そして高ければ高い程強い魔物が出て来る。
で、俺の初ダンジョンアタックは言うまでもなく、最低ランクのFだ。
まあ初心者だしな。
自分の力の程を慎重に知る意味も含めて、低ランクからぼちぼちやって行く感じだ。
「このボタンだったかな」
俺は腕に嵌めていた、腕時計型のマジックアイテムを起動させる。
爺ちゃんから貰った物だ。
起動させると、空中に3Dマップが表示されるアイテムで、今いるダンジョンの地形は元より、俺の位置まで示してくれる便利機能が搭載されている。
なので、これさえあればくっそ広いダンジョンと言えど道に迷う心配はない。
因みにこれ、非売品で、一般人なんかは入手困難だそうだ。
爺ちゃん達が有名なソーサラーだからこそ、入手できてるって訳である。
「とりあえず進むか」
マップで地図を確認した俺は、最奥の、ボスポイントに向かって進んで行く。
ダンジョンの脱出方法は二つ。
入口まで戻って出るか。
ダンジョンにはボスがおり、そいつを倒すと脱出ゲートが現れる感じだ。
まあ高ランク帯のダンジョンは中ボスがいて、そいつを倒してもゲートは開くそうだが。
なんにせよ。
入り口から出るのと、この2つだけが脱出方法となっている。
で、今回俺はボスを倒してダンジョンを制覇し、外に出るつもりだった。
だから地図で覚えた道を、奥に向かって真っすぐ進んでいる訳だ。
「出たな」
ダンジョンを進んで行くと、体の一部が石質化している狼が姿を現した。
ロックウルフ。
サイズは中型犬くらいで、このダンジョンで出現する最弱クラスの魔物だ。
まあ最弱クラスであるとはいえ、こいつら熊より遥かに強いらしいけど……
たぶん象でも狩れるレベルって、爺ちゃんは言ってた。
だから雑魚と侮って油断するなと言われている。
「ぐるぁ!」
俺に気づいた魔物が咆哮を上げ――空間把握があるので、俺の方が先に気づいていた――突っ込んでくる。
「来い!」
俺は右手と、そして左手に嵌めてある指輪を強く握る。
すると指輪は形を変え、握った拳に嵌る形で刀へと変化した。
玄太爺さんから貰ったタエとカヨ。
改め、虎徹と菊一文字である。
この刀、変形機能があって、普段は指輪の形で指に嵌めて持ち運ぶ事か可能だ。
因みに、刃は――普通についている。
つまり銃刀法違反。
なので、外では決して刀に戻して使うなよと、爺ちゃん達には言われていた。
まあ言われなくても、外で刀振り回す事なんてないけど……
「ふっ!」
ロックウルフの突進を躱しながら刀を振るう。
手応えはほぼ無い。
別に外したって訳じゃないぞ。
その証拠に、ロックウルフは真っ二つになって死んで消えたからな。
つまり、手ごたえを感じられないぐらい、俺の攻撃力が図抜けてるって事だ。
「動きも遅いし、これなら100匹同時に襲い掛かって来たとしても楽勝だな」
緊張して力を発揮できずに。
という心配は皆無だ。
なにせイフリートとシヴァみたいな化け物と戦ってた訳だからな、ロックウルフ程度に緊張する訳もない。
「これだとボスもたかが知れてそうだ」
俺はロックウルフの消えた後に残った魔石と呼ばれる物を拾い。
それを腰につけているポーチにしまい込む。
これもマジックアイテムで、収納量は見た目の100倍ぐらいあったりする。
「よし、トレーニングがてらここからは走ってくか」
ランニングがてら、俺はダンジョン奥に向かって走り出す。
いくら弱いとはいえ、流石に不意の遭遇で魔物に襲われたらまずいんじゃないか?
そんな心配はないよ。
俺には空間把握があるし。
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