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第19話 業物

「此方がソーサラー証明書になります」


イフリートとシヴァを倒すというチュートリアルを終えた俺は、祖父母に連れられソーサラー協会へとやって来ていた。

ダンジョンにはいる為には、ソーサラーでなければならない。

そのための証明書を受け取るために。


いや、お前ソーサラーじゃないだろ?


うんまあ、本来なら魔力を覚醒していない俺にソーサラー証は出ない。

検査されたら一発でバレるからな。


けど、俺の祖父母は七魔天と呼ばれる日本屈指のソーサラーだ。

その祖父母が太鼓判(偽)を押し、俺が審査人の前でフレイムボディを使う事で、正式な検査はパスできている。


「ありがとうございます」


受付の女性から証明書を受け取った俺は、早々に協会を後にする。

人が多くて居心地がしこたま悪いから。


「ありがとう。爺ちゃん祖母ちゃん。これでダンジョンに入れるよ」


「いいか壮太、ダンジョンは危険な場所じゃ。安全をどれだけ熟慮しても、それでも危険な状態に陥る事だってある。仲間がいれば力を合わせて危機を脱する事も出来るが、お前は一人じゃ。一人で全てしなければならない以上、絶対に無理はしてはいかんぞ」


「そうですよ。もし万一、【奇跡の生還】が発動したら……魔物を倒すんじゃなく、逃げなさい。そして渡したマジックアイテムで身を潜めるのよ」


イフリートとシヴァは、【奇跡の生還】の能力を使って倒している。

だがそれは、安全が確保されているからこそ、だ。

ダンジョンでこれを使わされれば、たとえ勝ててもその後が続かない。


「うん、分かってる」


だから、【奇跡の生還】は倒すためではなく逃げる為に使う。

そして安全な場所を見つけ、マジックアイテムで身を隠せる結界を張り、パワーダウン中をやり過ごす。


一人でダンジョン探索する以上、切り札である【奇跡の生還】は生存用のアビリティとして扱わんとな。

後の無い状態に陥るあれに頼って魔物を倒すのは、どう考えても論外だ。


「ここじゃ」


爺ちゃんがダンジョン探索に当たって役に立つものをくれるって事で、証明書を受け取った後、郊外にある本格的な工房に俺は車で連れていかれる。


爺ちゃんが、勝手知ったる我が家の如く扉を開けて中に入っていくので、俺もそれについて行く。

きっとよく来る場所なんだろう。


「きたぞ」


「おう、来たか」


工房の中——大きな炉の前ににいたのは、こじんまりした背丈の、髭モジャマッチョな老人だった。

まあこじんまりと言うか、身長は1メートルぐらいしかない。

そのため、見た目がファンタジー物のザ・ドワーフって感じになってしまっている。


「壮太も久しぶりじゃな。目覚めて良かったわい」


なんか、相手は俺を知ってるっぽい。

俺の方は全く見覚えがないんだが?

誰?


声はどこかで聞いた事がある様な気がしなくもないんだが……


「あ、ども……」


取りあえず、適当に挨拶しておく。


え?

ちゃんとした挨拶をしろ?

コミュ障舐めんな!

知らない人間とすらすら話せる訳ないだろうが!


「なーにが目覚めて良かったわいじゃ。まったく顔を出さんかったくせに」


爺ちゃんの口ぶりからも面識があった事が分かるが、マジで誰かわからない。

こんな見た目の知り合いがいたら、絶対話ずれる筈がないんだけどなぁ……


「仕方なかろう。わしゃこの1年、軌道エレベーターの仕事で忙しかったんじゃから」


どうやらこのドワーフは、軌道エレベーターの制作に関係している様だ。


軌道エレベーターていうのは、地上から成層圏まで伸びるエレベーターの事である。

以前は実現不可能と言われていたが、ダンジョンから得られる今までにない資源によって、今やそれが実現可能となっているそうだ。


「で?ちゃんと用意してくれたんじゃろうな」


「ワシを誰じゃと思っておる?少々素材が足りんかったが、エレベーター建設用のオリハルコンをちょろまかして、ちゃーんと最高のブツを作ってやったぞ」


「でかした!」


二人のやり取りに、なんかろくでもない言葉が混ざっていたがスルーしておく。


「これがそうじゃ!」


ドワーフが二本の長物。

刀を手に取った。


「オリハルコンの業物……わしの最高傑作!その名もカヨとタエじゃ!」


何と言うか、独特な名前だな。

少なくとも、オリハルコンなんて仰々しい金属に付ける名前ではない気が……


「ふふふ。なぜ名前がカヨとタエか、壮太は気になっておる様じゃな」


「あ、はい。そうですね……」


「実はな……カヨとタエはわしの初恋の相手の名じゃ」


「……」


カヨとタエ、って言ってるよな。

つまり……カヨ・タエ的な名前じゃなくて、カヨさんとタエさんが初恋の相手……いーや、おもいっきり二人いるじゃねーか!


なんで初恋なのに二人いるんだ?

そしてこのドワーフは結局だれなんだ?


頭が混乱してしょうがねーわ。


「カヨとタエは双子の、まあ近所で評判の美人じゃったからなぁ」


ああ、双子だから一緒に好きになったって訳か。

まあそれもどうだろうかって気はするが、当然ながらコミュ障の俺は突っ込みなど入れない。

コミュ障ゆえ。


あれ、でもタエってうちの祖母ちゃんと名前が同じ……まあ、名前被りぐらいは別に珍しくねーか。


「それなのに豪気(ごうき)なんぞとくっついてしまって……妙ちゃんは美人じゃったが、いかんせん男を見る目が無かった」


豪気。

爺ちゃんの名前と同じ……って、完全にうちの祖母ちゃんの事じゃねーか!


「たわけ。婆さんは男を見る目が合ったからわしと一緒になったんじゃ。玄太如き、眼中に入れる訳が無かろう」


「なんじゃと!この糞爺!」


「糞爺はお主じゃ!」


玄太。

知っている人と同じ名前だな。

そういえば、この声も聞き覚えがある気が……


いや。

いやいやいや。

別人だろ、どう考えても。


だって全然姿が違うし。

俺の知る近所の玄太って爺さんは、俺と同じぐらいの身長(180センチ程)あったからな。


けど、爺ちゃんの喧嘩友達でこの声はやっぱ……


「あのー」


睨みあう二人に、俺は恐る恐る声を掛けた。

そして尋ねる

どうしても気になってしまったので。


「ひょっとして玄太さんって……よく内に将棋をしにきてた玄太さんだったりします?」


「おお!そうか!わしの今の姿を見せるのは初めてじゃったな!どうりで壮太が余所余所しいはずじゃ!」


「じゃあやっぱり……」


「うむ、こやつは玄太じゃ」


俺の疑問に、爺ちゃんが答えてくれる。

やっぱ玄太さんだった様だ。


「姿が全然別人に変わっていたんで気づきませんでした。いったいどうなってるんです?」


「はっはっは。これか?これは整形じゃ。制作生産と言えばドワーフじゃからな。どうじゃ、似合ってるだろう」


整形って……

何をどう整形したら、身長が半分ぐらいになるというのか?

まあ魔法の技術なんだろうけど……魔法ってスゲーな。


「そうですね。まあ確かに、生産って言えばドワーフですから……」


返答に困る問いに、俺は無難な返事をしておく。

こんな時のテンプレート回答があるのなら、是非見てい見たい物である。


俺は玄太さんかたタエとカヨを受け取り、その後、速攻で改名した。

いや、祖母ちゃんの名前の刀とか使いたくないからね。


でもそういや、話的に祖母ちゃんは双子なんだよな……


聞いた事ないけど、ま、いっか。

細かい事は気にしないで行こう。



拙作をお読みいただきありがとうございます。


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