過ぎ去りし日
ある男の記憶を垣間見る。
王妃の命が終わった日の泡沫の記憶。
~ 夢の中 ~
これは……夢?
こんな夢初めて見たわ…。
ここは、静まり返った広場だ…。
私が死んだ場所。
何度も何度も、死んだ場所。
私の首が落ちた後…かしら。
誰かが、処刑台の上にいる…。
あの人も処刑されるのかしら?
…いや、様子が違う。
彼を処刑しようと動く人はいない。
取り押さえようという人もいない。
誰もが…動かない……。
私の体も…?あら?
私の視線ってこの高さだったかしら…。
私はもう少し低かった筈。
噴水の飾り彫刻と同じ高さだった筈。
夢だから浮いてるのかしら?
いいえ、地に足付いてる感覚がある。
もしかして…誰かの視線…かしら。
私はこの高さを知っている気がする。
どこか懐かしい気がするの…。
どこで…?なんで…?
思い出せない。
周りを見回したいけど指の1本も動かない。
真っ直ぐと、私の酷い姿を見つめてる。
ふと、視線が動いた。
視線の主が動いたんだわ。
何を見…て…………ヒッ!!
あの男だ。アイツだ!私を処刑台に送った男!!
何かを…喚いている?
あのクソ野郎は死んだ私にすら唾を吐くのね!
音が聞こえない事だけが残念だわ…!
視線の主は、あの男だけを見ていた。
じっと見つめて……、何かを言ったの。
でも、何を言ったのかわからない。
口が動いた感覚があった。
3回、動いた。3文字かしら?
音が聞こえないからわからないわ…。
そういえばあの人は処刑台で何をしてたの?
多分男性だと思う…。なぜか、そう思った。
何かを抱き締めていた。
あの場にあるのは……首?
なぜそんな物を…。
わからない…。
そう思った瞬間、世界が光に包まれた。
眩い光の中で、
視線の主の感情が今、伝わってきた。
『かえしてくれ……。』
何を?さっきの3文字は……。
もしかして『かえせ』?
何一つ…わからないわ……。
光が収束していく。
世界が終息していく。
潰れて…消えて…また、はじめから……。
……………………
……………
……
…
──プツン。




