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庭園にて


今日は私の誕生日パーティー……の2日目。

庭園で行われる挨拶会だ。

昨日より少しだけ軽い服装で領民達に挨拶をするの。

"軽い"って、手抜きって意味じゃないわ!

昨日のようなドレスは外を歩くには重いのよ!


名家と呼ばれる家にはそれぞれモチーフがある。

そのモチーフは紋章にも描かれ、

それに由来する色を大事な日に纏うのだ。

だから今日のドレスは金糸雀色。

昨日のドレスの刺繍糸もね。

我が公爵家が冠する色で、

紋章に冠するは危険を知らせる金糸雀。



領民は短時間の滞在で会話はそんなに多くは出来ない。

なにせほぼ全ての領民が集まるのだ。

我が家の庭が広いとは言え、全員は入らない。

だから数十名ずつ時間を別けて話をするの。


遠方の方達には、

明日の朝までだけど泊まっていただく用意もある。

彼らは代表者として数名のみ招いたから。

村長町長といった、地域の長達ね。



ホストは私と父のみ。私が主役の席だから。

今日は母と兄姉弟(きょうだい)達はお休みなの。

さて、そろそろ第一団のご到着ね。

少しの時間ではあるけど、精一杯もてなすわ!


次から次に来る人の波。

お祝いの言葉はとても嬉しくてたまらない。

だから精一杯もてなすと意気込んでいたけれど、

とっても疲れてしまった…。

第三団がやっと終わった所なのよ。

まだまだたくさんの領民が来るわ。

気合いを入れなくちゃいけないのに……。


……あぁ、そういえば私、4歳だったわね。

まだ死ぬ前の頃の年齢気分でいたわ。

完全に失敗だ。

公爵令嬢にあるまじき行動だわ…。

もう眠ってしまいそうなんだもの…。



「クリスティナ、疲れたか?」


「いいえ…、大…丈夫ですお父様…。」



自分でも説得力がない事はわかっている。

首がグラグラしてるんだもの…。

どうしましょう、叱られてしまうかしら…。

マナーにだけは厳しい方だもの。

まぁ、叱られても仕方ないんだけどね。


  ────フワッ…


突然体が浮き上がったのだ。

え?何?私もう死んだの?

まだその日じゃない筈なのに…。

混乱する私の体を浮き上がらせたのは、

父だった。


父が優しく私を、抱きかかえていた。

こんなの、知らないわ。



「少し眠ったっていいんだよ。

 お前はまだ子供なんだ。無理をする必要はない。」


「でも……、せっかく…来てくださるのに…。

 公爵令嬢…として、しっかり…しないと…。」


     『公爵令嬢としてしっかりしなさい。

      まだ眠ってはいけないだろう。』


「…っ。そう思うなら尚更だ。

 子供が無理してこの場にいても

 心配をかけるだけだろう。

 どうしてもこの場にいたいのなら、

 父がこうして抱いていよう。」


「???

 なんで……こ…しゃく……、

 ふさわ…し………く…な…。」


     『起きて、ちゃんとお客様をもてなしなさい。

      公爵家にふさわしい振る舞いをするんだ。』


「…お前が、…っ私の娘だからだ。

 大事な娘だ。どこでどんな態度を取ろうが、

 お前は私の娘で、誇り高い公爵家の人間だ。

 さぁ、余計な事は気にするな。

 ゆっくりおやすみ。」



こういう事は絶対に許さない筈なのに…。

今まで何度も何度も聞いてきた言葉と全然違う。

こんな事は初めてで、でも意識は勝手に落ちていく。


なんで?なんでなの?

どうしていつものように叱らないの?

人前では絶対に私を抱えたりしないのに…。

こんな事初めて言われたわ…。

あぁダメ…。本当に……ねむって………。


激しい混乱の中、私は眠りに落ちた。

何度も繰り返す人生の中で、初めての展開だった。







私の処刑まで………後、16年。

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