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     今度こそ

ある女の命が潰えた時の、ある男の後悔。




まただ…………また………こんな事に……。


また……救えない…。


何度も何度も繰り返す。


彼女の死を……。


何度も何度も突き付けられる。


己の不甲斐無さを……。




あの日私は心を見つけた。


あの日私の心を捧げた。


あの日彼女の心を貰って誓った。



そして私は、心を失った……。




ずっと失い続けるのだ。


彼女をこのまま帰してはいけないのに。


彼女は死んでしまうのに。


幼い私はいつもいつも止められない。



いつも笑顔で別れるのだ。また逢えると信じて。


いつも心の中で叫ぶのだ。もう2度と逢えないのだと。



何度も変えたいと思った。何度変われなくても…。


何度も言いたいと思った。何度言えなくても…。


絶望の未来を変えたい、その一心だったのだ。


でも口が、手が動かない。


何も…出来ないのだ。



再び逢えた時はいつも手遅れで。


私はまた…失うのだ……。




広場はいつも罵声の嵐で溢れている。


邪悪な王妃、極悪非道、悪魔の手先、…と。


無実の罪で処刑台へ(のぼ)り、ただ前だけを見つめている。



王の隣に侍る女は王妃を見つめ、醜い顔で嗤っている。


私は愚かにもその場を動けず、刑の執行まで佇むのだ。


心の中では動けと叫び、慟哭をあげても動けない。


彼女の首が落ちるまで………。



物言わぬ彼女を抱き締めて、いつも咽び泣いている。




彼女の首が落ちた時、いつも広場は静まり返る。


目の前の光景が信じられなくて。


何が起きたのか理解できなくて。


自分達が放った言葉を……受け入れられなくて。


まるで、おとぎ話の夢から醒めたように…。



愚かな王が立ち上がる。


愛する人を失い、声の限り叫んでいる。


恥知らずがそれを宥めようと言葉を掛ける。


そしていつも拘束されるのだ。


哀れな国民共は、未だ呆けている。


心を砕いた王妃様。優しく美しい王妃様。


大好きな王妃様の、(むご)い姿をひたすら見つめて。



1人、愚かな王をじっと見つめる者がいた。


私が救えなかった彼女の父だ。




何度も救えなかったくせに、浅ましくも縋りつく。


心を重ね合えた喜びを知ってしまったのだ。


愚かな私は、もう喜びを知る前には戻れない。


力の全てを以てして、何度も何度も時を戻す。


これが最後であるよう祈りながら…。




彼女の命が終わっていく………。


瞳から光が失われていく………。


次こそ必ず。そう思っては何度も絶望する。


それでも君との明日を見たい、愚かな私を許してくれ。


必ず、必ず救うから。


たからどうか、どうか頼むから…。


愚かな私と出逢ってくれ……。



今度こそ………今度こそ……。

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