暴力戦隊ヤクザファイブ
「ギャーッハッハッハ! オイ、もっと酒持ってこいよ!」
明らかに悪い見た目をしたチャラ男。彼はとあるお酒を飲む大人のお店で尊大な態度を取っていた。
彼は店の女の子を執拗に触り、ボーイの男の子には酒を催促したあげくに乱暴にケツを引っ叩く等、とても普通の客としては考えられないようなことをしていた。
「……っ!」
ケツを叩かれたボーイは、嫌な目つきで男を見る。しかしその視線が、乱暴な男にバレてしまったようだ。
「あ? おい、お前今ガンくれたろ。お前、俺を誰だか分かってやってんのか? 俺は『真里亞組』の幹部、SJだぞ! こんなことだってできんだ!」
すると彼は小さな針のついた瓶を、腕に刺した。瓶の中には紫色の液体が入っており、刺した瞬間にその液体が注入された。
すると、彼の身体はみるみる変色、変形して怪人の姿へと変わった。紫色の不気味な怪人、この変異体の名前は、ブラッドと言う。
「オラ! テメェ、ただでは済まさないからな!」
ブラッドと化したSJと名乗る男は、ボーイに殴りかかった。
「う、うわぁあ! 誰か助けてぇ!」
と叫ぶ。ボーイの助けを呼ぶ悲痛な声を聞いて、店の奥から彼らが出てきた。
「待て!」
透き通る大きな男声。その声によって、SJは手を止める。奥を見てみると、あの五人組がいた。そのうち、声を出したのは真ん中の、赤いスカーフをつけた男だ。彼は続けて
「この店で悪さをするブラッドは、俺らが許さない。」お前ら、行くぞ!」
「おう!」
赤いスカーフの男に呼びかけられて、他の四人が反応する。四人はそれぞれ個性的だった。青いフレームのメガネをかけた男、黄色いヒョウ柄のジャケットを着た大柄の男、なぜか一人だけスケバン姿の女、緑のTシャツを着た全然怖くないラフな男……。
彼らは共通して、手首にマシンをつけている。五人は揃って、そのマシンのボタンを押し、高らかに叫んだ。
「任侠チェンジ!」
すると瞬く間に五人の姿が変わっていく。それぞれ、赤、青、黄色、ピンク、緑の姿に変化していく――
「ヤクザレッド!」
「ヤクザブルー!」
「ヤクザイエロー!」
「ヤクザモモイロ!」
「ヤクザグリーン!」
それぞれが自分の姿の名前を叫んだ。
「お、お前たちが、噂の……!」
SJは先ほどと違って萎縮している。彼らに覚えがあるようだ。真ん中の、赤色に変身した男が高らかに名乗った。
「俺たち、五人揃って……」
全員が決めポーズをして
「ヤクザファイブッ!」
と叫んだ。
ヤクザファイブ。それは、裏社会で蔓延している特殊な違法薬物、BH、ブラッドに変身できる薬を許さない集団である。
「あ、あれがヤクザファイブか……、だがな、俺もこの薬で凄え力を手にしたんだ。負けるわけがねぇ!」
SJは一瞬萎縮したものの、薬による多幸感作用ですぐに自信を取り戻し、ヤクザファイブにガンを飛ばした。
それに対し、リーダーのヤクザレッドは
「あぁ? テメェ舐めてんのかこの野郎ッ!」
急にヒーロー感が全くない怖い口調で言い返した。
「ウチのシマで勝手なことしてんじゃねぇぞテメェ!」
「殺すぞゴラァ!」
後ろのヤクザファイブのメンバーも揃って、めっちゃ言う。
「えぇ、ちょ、そんな感じなんですか? ちょ、やめ……」
「テメェら、やるぞ!」
「おう!」
五人はSJを取り囲み、一方的にボコボコにした。戦い方は特撮のようなかっこいい感じではなく、普通にぶん殴ったり膝蹴りとかしたり瓶で頭をぶっ叩いている。SJはたまらずうずくまってしまうが、それでも五人はめっちゃ蹴りまくった。
そしてブラッドの効果が切れて人間の姿に戻ったとき、ようやく集団リンチは終わって店の外に叩き出された。
「二度と来んじゃねぇぞコラ!」
「死ねや!」
最後にヤクザイエローが尻に蹴りを入れて、SJは走って逃げて行った。
「ヒィイイ! お前ら、覚えてろ〜!」
という捨て台詞を残して彼は去っていき、五人は変身を解除した。
「あースッキリした。さて、また飲むか!」
「そうしよう。」
五人は店内へと戻っていく。特に、リーダーの赤いスカーフの男はかなり酒が入っているのか、ご機嫌である。
モモイロとイエロー以外は全員、黒いスーツを着たガチガチのヤクザである。彼らは今日も、夜の街の平和を守る。
そのリーダー、レッドの名は竹蔵。若頭だ。