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第8話 特別な任務

 「本当に…本当に成功したよ!」千紗は興奮で震える声を上げた。


 「うん、」僕も笑わずにはいられなかった。「想像以上に良くできてる。」


 「でも、」彼女は急に思い出したように言った。「そろそろ片付けないと?もうこんなに遅くなっちゃったし…」


 僕は時計を確認した。もう八時半に近づいていた。僕たちは慌てて藍甕あいがめを片付け、道具を整理した。全てが整った後、千紗は慎重に布をハンガーに掛けた。


 「明日には最終成果が見られるよ。」僕が言った。


 「うん!」彼女は頷き、突然僕に向き直った。「それで…ありがとう、一緒に残ってくれて。」


 月光が窓から差し込み、彼女のヘアバンドに映し出された。これは彼女が初めて染色に成功した布で作ったものだ。色は少し均一ではなかったが、この瞬間にはとても美しく見えた。


 「いいんだよ、」僕は顔を背けながら答えた。「僕も実験の結果を見てみたかったんだ。」


 「明日、」彼女の声が突然静かになった。「先輩はこの結果を気に入ってくれるかな?」


 「絶対に気に入ってくれるよ。」僕は確信を持って頷いた。


**


 「柊原くん!」


 化学実験室を出たばかりの僕は、千紗の馴染み深い呼び声を聞いた。振り向くと、彼女が大量の資料を抱え、ふらふらとこちらに向かって走ってきていた。


 「気をつけて!」


 僕は急いで前に出て、彼女の揺れそうになっている書類を受け取った。すると、それが古びたノートの束で、一番上のノートには「藍染研究手記」と丁寧に書かれていた。


 「これは…?」


 「へへ、」千紗は得意げに笑った。「家から見つけた宝物だよ!これはおばあちゃんが若い頃に書いた研究ノートなんだ。」


 僕はノートを開き、密に記された染料の配合や手描きの染模様を見た。文字は少し色あせていたが、書き手の藍染への愛情が伝わってきた。


 「そうだ!放課後、手伝ってくれない?」


 彼女の大きな瞳が期待に輝き、断るのは難しかった。しかし…


 「今日、部活動がないんだよね?」


 「それはね…」千紗は神秘的に笑った。「特別な任務があるの!」


 結果、僕はそのまま生徒会室まで連れて行かれることになった。


 工芸部は生徒会と密接な関係にあり、主に白銀先輩のおかげでその絆が強まっていた。彼女は工芸部の先輩でありながら、生徒会では文化事務部長として様々な校内イベントの統括を担当していた。この特別な立場が、工芸部と生徒会を繋ぐ重要な架け橋となっていた。


 「白銀先輩が生徒会の生徒会室にいるよ!」千紗は携帯電話を見せながら言った。「彼女が待ってるみたい。」


 「また文化祭の件?」


 「うん!それに、彼女にこれも見てもらいたいんだ…」千紗はバッグを軽く叩きながら言った。


 生徒会の生徒会室には紅茶の香りが漂っていた。ドアを開けると、白銀先輩が優雅に窓際に座っていた。


 「ちょうどいいわね、」彼女は言った。「淹れたてのアールグレイティー、一杯いかが?」


 千紗はバッグから精巧な箱を取り出し、「主に白銀先輩にこれを見ていただきたいの!」と言った。


 彼女は丁寧に箱を開け、中には一枚のハンカチが入っていた。

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