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第5話 初めての染色体験

 話は途中までで、僕たちは布が色を変え始めるのを見た。端から黄緑色が徐々に消え、淡い青色に変わっていった。


 「すごい!」千紗が目を見開いて叫んだ。


 「これが一回目だよ、」白銀先輩が布を絞りながら言った。「綺麗な色にするには十回以上繰り返す必要がある。さあ、君たちの番だ。」


 僕と千紗はそれぞれ藍甕あいがめを割り当てられた。強烈な匂いで少し目眩がし、前かがみになるときは吸い込みすぎないように気をつけなければならなかった。


 「初めてだから君に任せるよ。」僕は言った。


 千紗は興奮しながら布を染液に浸したが、すぐにそれが簡単ではないことに気づいた。布が液体の中で重く感じられ、少し不注意だと底に沈んでしまう。また、均一に浸染させるために腕がすぐに疲れてきた。


 「あと一分だ、」僕はスマホのタイマーを見ながら、「取り出す準備を。」


 「はい…わかった!」彼女の声は少し震え、腕が耐えられなくなっていた。


 「僕が手伝うよ。」


 一緒に布を引き上げたとき、白銀先輩が言ったことの意味が分かった。これが軽い仕事ではない理由だ。一回で腕が痛くなり、染料の匂いで頭がくらくらする。しかも、これは一回目の浸染で、これから何度も繰り返さなければならない。


 「これがいわゆる…職人の道か。」千紗が息を切らしながら言ったが、目はまだ輝いていた。


 布がゆっくりと青く変わる過程を見て、本当に魔法のようだと思った。しかし、もっと驚いたのは千紗の忍耐力だった。腕が震えているのに、彼女は「もう一回やりたい」と言い続けた。


 「千紗、腕は大丈夫?」彼女の震える腕を見て、僕は思わず尋ねた。


 「全然大丈夫!」彼女は強く言ったが、顔には汗が浮かんでいた。


 「ちょっと待って、」中島先輩が近づいてきた。「無理しないでね。二人で交代してもいいから。」


 教室には染料の匂いと初夏の蒸し暑さが混ざった独特の香りが漂っていた。他の部員たちも各自の藍甕あいがめに集中し、時折疲れたため息が聞こえてきた。


 「あと何回くらいやるの…」誰かが小声でぼやいた。


 「少なくとも十回はね、」白銀先輩が額の汗を拭いながら言った。「深い色にしたいならもっと回数が必要かも。」


 「でもみんな見て、」千紗が窓際に干された布を指さした。「一回一回色が違うんだよ!」


 確かに、三回の浸染を経た布は美しい青色になり、特別な光沢を帯びていた。


 「これが藍染の魅力だよ、」白銀先輩が微笑みながら言った。「一つ一つの布はユニークなんだ。」


 「やっと僕たちの番だ!」千紗はタイマーを見て、急いで布を取り出そうとした。


 「待って、僕がやるよ、」僕は彼女の手を止めた。「少し休憩しよう。」


 「でも…」


 「バカ、」中島先輩が彼女の頭を軽く叩いた。「これは誰が頑張るかじゃなくて、テクニックと忍耐が重要なんだよ。」


 千紗が悩ましそうに腕を揉んでいるのを見て、僕は慎重に布を藍甕あいがめに浸した。今回は白銀先輩が教えてくれた方法で、布が液面下で軽く揺れるようにし、ただ攪拌し続けるのではなく工夫した。


 「その通り、」白銀先輩がうなずいた。「染料を均等に染み込ませる必要があるけど、『花』の表面は壊さないようにね。」


 「すごい!」千紗は隣で見入っていた。「こんな細かいところがあるんだ!」

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