第四話 どうやって?
オリバーは所属している分隊のブリーフィングに参加するべくブリーフィングルームに向かっていた。
「Мальчик Оливер」
とロシア語で声をかけてくる女性がいた。イリーナ・セグネコフだ。家族が代々ソ連軍に従事して彼女もその道を歩むべくロシア陸軍に入隊を志願。その後女性初の空挺団員として空挺部隊に入隊。衛生兵として前線で活動していた。国連平和維持活動の一環で中東に派遣されそこで多国籍部隊と仕事を共にする。そこで様々な観点で物事を見れるよになってきた。いつしかロシア政府の政策が自国を守ると言いつつ侵攻しているように見えてきた。このとき両親は他界していた為もう2度と墓参りにいけないことと信念を貫くところで葛藤していたが結局、隣のイギリス軍基地まで逃げることに。
「まだ新人扱いですか?勘弁してくださいよ~」
オリバーはそう嘆く
「アンタとミハイルはまだひよっこよ。それでミハイルはどこにいんの?」
と言いながら探していると後ろから走ってくる足音が聞こえる。
「イリーナ姉さんにオリバーさんお疲れさまです」
ミハイル・アクサコーフ。もとロシア陸軍普通科所属の通信兵。そうこの強者揃いの中ではオリバーと同じかなり異色な経歴の持ち主だ。
というのも彼がここにいるのもイリーナが関わっている。と言うのも脱柵実行当日、BTR-90を強奪しようと向かっていたところミハイルに見つかる。ミハエルはその日乗車していたBTR-90に忘れ物をしていたため取に戻っていたところイリーナと出会う。二人は所属が違うものの何回か作戦行動中に顔を合わしているイリーナが工兵でもなければ。BTR-90の運転資格を持っていないことも。そして彼女が衛生兵であるとこも。脱柵していた彼女からしてみれば見つかることがまずい。そこで彼女はミハエルを脱柵に誘うことにした。ミハエルはイリーナと違い徴兵されて入隊した人間でイリーナ自身彼女は彼が前線ではなく後方での仕事にどちらかというと適していてそもそも軍に徴兵されるべき人間でないと考えていた。ミハエル自身所属している部隊でのいじめと軍での仕事に嫌気がさして辞めたいと思っていた。本来なら選択肢にすらないやめるという選択肢が今、目の前にある。彼はその誘いに乗り脱柵することに。幸い前に一度ミハエルは同期にBTR-90の運転方法を教えてもらったためどちらが運転するか決めるのはすぐに決まった。その後イギリスへ政治亡命する。そしてその情報を聞きつけたユーロセキュリティ社にBTR-90と共にイリーナは入社する。一方ミハエルはイギリスに亡命後仕事を探していたがなかなか仕事を見つけれず途方にくれていた。ネックになったのは英語が話せないことだ。一応かれを監視していたイギリス政府はこのままの状態だと下手したら生きるために犯罪ないしは裏社会に足を踏み入れるかもしれないと危惧していた。というのも当時イギリス国内では移民、難民による事件等で排斥運動が活発になりつつあった。なのでそれを避けるべく何とか働き口を探すことに。そこにてを差し伸べたのが皮肉にもユーロセキュリティ社。当時東欧系のアグレッサー教官を増員したがっていたため受け入れることを承諾してくれた。ミハエルも生きるために仕方なくかつて去ったところへ戻っていった。
部屋に入るとイーサン、マクレガー、ノワールが集まっていた。
「紅茶切らすと切れるイギリス人のためアルフォンスを含めた5人が今ヘリにティーポットを取り付けてるから先にブリーフィングを始める。」と言って施設図がプロジェクターによって映し出される。
「先ほどDEAからさらわれた捜査官の部屋から発見された資料が送られてきた。どこでこんな物を入手したか検討は付かないが少なくともこの建物と同じ物とみて間違いない。施設は基本2階建て。工場のみ事務所を除き1階建てだ。」といい誘拐された捜査官が撮ったと思われる写真が映し出される。豪邸のように大きな建物が3棟と工場が映し出される。
「我々はAlphaが正面玄関から侵入しやすくするため工場入り口から潜入する。作戦は次の通りだ。23時にこのポイントまでヘリで輸送。その後徒歩で工場入り口手前150m付近の草むらへ24時までに移動。尚ここまでの移動時間を計画通りに進めなければ警備棟の警備兵に露見する可能性がある為遅れることは許されない。」
カルテルのアジトは軽い丘で囲まれている。ヘリが着陸する場所はその丘の反対側になるそこから1kmを歩いて行くのだ。今度はアジトのマップへとスクリーンが変わる。
「150m手前まで接近後、迫撃砲による警備棟の破壊完了の後に我々が先行して裏口から侵入。横からAlphaの侵入援護と同時に工場内をクリアリングするこの際5人でAlphaの援護を残りの6人で工場のクリアリングを実施する。グループ分けはこの表の通りであるから確認しておくように。といってもその後工場内をクリアリングが完了したらその後B3内で人質捜索を開始。Alphaの状況によってはB2のクリアリングも実施する。この際Alphaへの誤射に気をつけるように。」
と言いながら説明していく。どうやらオリバーは工場内クリアリングのグループらしい。
侵入ルートが赤い矢印で書かれている。
「ほかに質問は?無いな!それでは各自装備を整え出発に備えよ。解散!マクレガー!まかり間違っても軽機関銃を持ってくるなよ!!!」
「マジかよわざわざストック取り替えておいたのに」
「CQBを100%起こる場所に機関銃を持っていくやつがどこにいる?」
「心配しなさんな。セカンダリーにグロスターを持っていくから」
グロスター。マクレガーが持っているカービンキットで改造されたグロックの愛称だ。ハンドガンと短機関銃を足して2で割ったようなものである。安く取り回しよく狙いやすい。毎回CQBの可能性があると必ずマクレガーはこれを持ち込む。CQBでは確かに適している。しかし彼はそれを免罪符代わりにか軽機関銃も持ち込む。ちなみにユーロセキュリティ社の銃火器販売部門がマクレガーの要望で作った特注品で現在市販化を目論んでいるとか。
「なんでそこまでして機関銃持ち込みたいんだよ!」
「弾幕展開しておけばなんとかなるから」
まるで犬の喧嘩を見ているようである。オリバーはそそくさと武器庫へと向かった。