第二話ピスタチオって美味しいよね
「Bienvenido a México!新人君と真面目君。長旅ご苦労様。結構体に来ただろ?」
声をかけてきたのは今回の現場総責任者イーサン・ミラーである。元CIAの特別行動センターに所属していた人間だ。明るい中年のおじさんに見えるが最前線でまだまだ戦える能力を持っている。様々な場所で活動していたことで習得した言語能力、様々な国の銃火器を使用することができ、さりげなくあいてから情報を聞き出す情報戦のエキスパートとこれ以外にも様々な技能を持っている。
「えぇ朝一で着くためにラングレーを夜中に出たのでもう体はクタクタです。」
そんな感じで歓迎を受け、車に乗りこみセーフハウスを目指す。
「お前さんはさほどつかれてなさそうだな」
「ああこんなの一週間、寝れなかったのあの時と比べるたら朝飯前だ。たいしたことは無い」
彼はフランス人のアントニー・ノワール。元GIGN所属の隊員だ。恐ろしいぐらい射撃精度が高いくなんとGIGNの中でも非常に高い射撃技術を持ってる。無口で完璧主義者。何かうまくいかないと機嫌がすぐに悪くなる。
「しかしなんでセーフハウス偽装にピスタチオ農園を選んだんですかね?」
彼の疑問は正しい。IT会社、映画のロケハン部隊など比較的簡単で長期的に滞在できる口実ならほかにいくらでもある。だが何故が手間のかかるピスタチオ農園をこの作戦だけのためだけに開墾したのだ。しかもピスタチオだ。メキシコの作物の代表例であるアボカドでもなければトウモロコシでもない。なぜか変に目立つピスタチオ農園だ。
「あぁそれはな親会社のワールドツアラーズ社の今度食品部門の事業改革の一環でスイーツ部門とヘルス部門のためにピスタチオがいるらしい。特にスイーツ部門がかなり消費する見立てらしくてだな。まぁピスタチオが入っているスイーツはおいしいし、綺麗だからじゃないのか?クーラーボックスに本部が試作したピスタチオを使ったスイーツが入ってるから試しに食べてみな。」
「どんだけ金の亡者なんですかね~あの親会社。この作戦を聞くまではうちの会社に親会社なんて無いって思っていたのに。依頼された任務とピスタチオで二兎取ろうと画策しているし」
彼らが所属しているPMCことユーロセキュリティーとワールドツアラーズ社との表向きの関係は警備業務を委託している程度の関係である。だが本当の関係はワールドツアラーズ社の子会社的立ち位置。屡々ワールドツアラーズ社からこのような任務が下されるのだ。
「まぁピスタチオのおかげで案外、防衛は楽だぞ。人工森林地帯が敵の侵攻を阻んでくれる」
「まぁそんなこと起きないに越したことはないんですけどねぇ~」と不安げにオリバーは言った
外に目をやると一面に広がる砂地に点々と緑が見える。小腹が空いていたのでクーラーボックスから件のスイーツを取り出し一口食べる。スイーツ好きでもなければ料理好きでも無い彼でもが分かる。普通においしい。