プロローグ
雨が降るこの地球上のどこかの建物のオフィスで書類を見ながら深々と何か考え事をしている女性の元に電話がかかってきた。
「もしもし天根 瑠璃です。ああお疲れ様。ええ今、契約書のコピーを見てるわよ。珍しいわよねこの種の業務依頼は珍しいわよねそれも二か国共同での」
そう言いながら手に持っている書類の束をめくりながら話す。何やら国別に何かがリストアップされている。
「まぁ交渉はあなたに一任するけどメキシコ政府側に例のリゾート区域での指定区域の購入交渉権を、米国政府には新型装甲車開発への協賛とおよび購入契約もしくはゴーストホークの追加受注だけは要求しておいてちょうだい」
ゴーストホーク。UH-60ブラックホークをベースとして改良された機体だ。米国政府はこの機体については無言を貫いている。ことは2011年5月2日に米国がパキスタンで作戦実行中にこの機体が機材トラブルで不時着。破壊措置がなされたものの異様な形をしたロータ部分が残り発覚。また発見された場所がパキスタンの陸軍士官学校近くであるにもかかわらずパキスタン政府は米軍が撤収後に気が付くという機体だ。故に関係者、マニアの間ではゴーストホークと呼ばれてるとか。そしてそんなことを言いながらもう一枚の書類の束に手を伸ばし眺めながら話し出す。どうやらなにかスケジュール表が書いてあるみたいだ。
「そういえば例の新型輸送ヘリコプターの状況はどうかしら?もう今日中にロールアウトできるのね?分かったとりあえずそれも含めて必要な装備品を米国本土に空輸しておいて。送り先もついでに米国側に要請しておいてちょうだい。」
手持ちの書類を机に置き今度はフォルダーを手に取る。
「あぁそのことなんだけどワールドツアラーズ社としては今後食品サービス部門のスイーツ分野とヘルス部門の強化を進めたいとこだからピスタチオの生産拠点探していたからそういう面も持たせるようにしましょう。とりあえず食品管理部の生産課に連絡しておくから協力してベースキャンプ設置場所の検討を進めて頂戴。それじゃあ、あとは頼むわよ」
ワールドツアラーズ社。世界中でホテル業を営む大企業である。ビジネスホテルから高級ホテルまで様々な客層を相手にしている。近年コロナウイルスによる打撃を受け自宅でも楽しめる食品サービスを展開することにしたそこで新しく家でも楽しめる箱詰めスイーツシリーズと健康食品を始めることにした。受話器とフォルダーを机に置き葉巻を加え火をつける。
「ん~なんとかこれを機にあの一件に対し介入することができたらいいんだけどなぁ~」
といい憂鬱な気分で窓の外に目を向ける。雨はさらにひどくなり豪雨になりだしていた。