第三十一話③
「今直ぐに逃げ出すのであれば、見逃してやる。ここに止まり続けることは、俺に挑む事だと思え」
相手は少し身を引く素振りを見せたが、勇敢にもその場に止まり続けた。
兵士としてはその行動は正しいのだろう。だが、生き残る事を望む生物としては間違った判断だ。
俺は中級クラスの魔法を生成し始める。
水と空気を混ぜ合わせて、水を使った竜巻を発生させる。
ただの水だというのに、風の力強さを混ざ合わせた事により、銃弾ほどの威力を発生させ始めた。
それを俺の身を包むように発生させて、俺はゆっくりと相手に近づいていく。
「何だこの魔法!?」
「……た、ただの水だろ? 俺が叩っ斬ってやる」
「待て! 奴に近づくな……周りの草木を見てみろ」
周りに落ちた葉や石などが、俺の魔法によって破れ、砕けていく。
そして俺は手を広げて、周りに発動させている魔法を自身の目の前に集中させ始めた。
発動させる水と風による魔法が、円を描くように俺の目の前に、一点に集中しているのだ。
この近くにいるだけでも髪が勢いよくなびき、地面は軽く揺れを覚えている。
「さぁ。優しい俺は、お前らに最後のチャンスをくれてやろう。今直ぐ地に頭をつけながら謝罪すれば、見逃してやる。勿論、しっかりと額を地面に擦り付けるのだぞ」
ここまで脅しても尚のこと、兵士たちはやはりこの場を離れようとはしない。
あんな馬鹿な国王のためにそこまでする事はないと思うが、奴らなりのプライドなのだろう。
「ならば仕方がない……お前たちの選んだ道だからな、恨むなよ」
俺はそう言って勢いよく魔法を発射させた。
皆は震える体を押さえながらも、そのやってくる魔法に身をかがめながら備えた。
そして魔法が奴らにぶつかる直前のこと、魔法は突如として消滅する。というよりも、俺がそうさせた。
こいつらをここで本当に始末する理由なんて一つもない、戦闘不能にさえして仕舞えばこちらのものなのだ。
奴らは俺の魔法が衝突仕掛けた寸前に、気絶をしてその場に倒れ込んでいる。
あの国王に使える兵士の為、逃げ帰るのがオチかと思っていたが予想が大きく外れた。
「あんな奴に使えているのが惜しいな……」
そんなどうでもいい事を呟きながら、再度俺はパンプキンの元へと急ぐ為、森の中を走り始めた。




