第三十話③
「ねぇ、さっきから思ってたんだけど、パンプキンさんもここに呼んだ方がいいんじゃない? その方が話も進みやすいだろうし」
「馬鹿を言うな。何の為に俺だけが魔法を使ってここにきたと思っている」
一体何の事かというように、不思議そうな顔を浮かべるアカリを見て、ようやく自分がパンプキンについて話しいない事に気がついた。
「アイツは今、通りに偵察に向かった王国側の兵士たちを食い止めに行っている。今現在パンプキンが通りを離れている事を知られるのは不味いからな」
「ふーん…だから貴方だけが1人でここにきたってわけね」
いよいよ偵察部隊を送り始めたということは、国王側が既に動く準備を始めているということだ。
急がなければ、もしかしたら明日にでも国王側は通りを攻め始めるかもしれない。
その事にいち早く気がついたパンプキンが、俺だけでも女王の元に交渉に行って欲しいと頼み込んできて、返事も聞かずにそのまま偵察部隊を追って行った。
極力戦闘以外で魔法を使いたくないとはいえ、切羽の詰まったあんな顔をされれば、今回限りは使ってやってもいいと判断した。
それに通りを救う為に動き始めてから、既に何度か通信魔法なども使用してしまっている。
やはり誰かの為に動くとなれば使う機会が増えてしまうな……これ以上の魔法の使用は控えたいものだ。
「まさか既に国王が動いているとは……あの方はいつも考え無しに突き進むからダメなんですよ……」
女王様が国王の愚痴を溢している、やはり彼女としても、あの馬鹿な王様には思うところがあるみたいだ。
「兎に角急ぎましょう。あの人なら明日に動いたとしても不思議ではありません」
「そこまで急な話なんですね……ただどう動くのですか?」
「ひとまず私が交渉に行きます。それが叶わなければ、貴方達に力を借りたい」
「具体的な案はなんだ?」
「……現段階では1つだけ、作戦を思いついているのですが、これはなるべく避けたい……。追って伝えに行きます。私が向かえない場合は、兵をそちらに向かわせますので」
「ならば俺は、一度パンプキンの様子を見て来る。出来れば合流して、話し合いにも参加してもらおう」
「それじゃあ私は……どうしようかしら」
「お前はここで待っていろ。ここなら安全だろうからな」
アカリはそれを聞いた瞬間、「また!?」と嫌そうな顔を浮かべながら叫んだ。
ずっと留守番というのは退屈だろうが、俺のようにずっと動き回るのもまた違ったダルさがある。あまり文句を言わないで欲しいものだ。