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第三十話②

「ここなら誰も無断では入って来れません。お話を続けましょう」


 テーブルを囲むようにして椅子に腰掛けた後、女王は真っ直ぐに俺を見つめて話を再開する。

 こう言った重苦しい空気は苦手だなと感じながらも、俺は女王と会話を続けた。


「お話か……後はあんたの判断次第ではあるのだがな」

「その判断をする為にも、貴方達の覚悟を知りたいのです」


 覚悟がなければこの話は飲み込めないという事だろうか。

 だがその考えは間違いではないのだろう。途中で投げ出すような者が協力者であれば、作戦は失敗し、通りは守れないどころか、逆上した国王によってより深刻な結末になりかねない。

 それを避けたいが為の問いなのだろう。

 

「だが覚悟と言ってもな……。俺はただ、面倒ではあるが、物語の主人公として、あの哀れな男の手助けをしているだけだからな……」

「ちょっと、「覚悟はあります!」って返しておけばいいじゃない。なんでそんなに面倒な事を口にするのよ」


 それもそうだが、俺にそんな熱血じみた言葉は相応しくない。この女王なら俺のそんな言葉、直ぐに嘘偽りだと見抜いて来るはずだ。

 

「その哀れな男とは……誰のことを指しているのですか?」

「…通りの長であるMr.パンプキンだ。先代の為にも、通りの皆の為にも、我が身を犠牲にして通りを守ろうとしている」


 意外なところに食いついてくるなと思いながら、俺はパンプキンについての話をした。


 自分でも意外だったのは、俺はパンプキンの説明をするにおいて、褒めるような言葉を言い放っていた。

 誰かを褒めるなど、今までしてきた事が殆どなかったが、あの男はそんな俺でも褒めるに値する人物程の人物なのかもしれない。


「そうですか……つまり貴方達は、その通りを大切にしている人物のために、力を貸していると」

「その通りだ。それ以上でもそれ以下でもない、とても簡単な話だ」

「ひとまず貴方達の意思は理解しました。私で宜しければ協力致します」

「……今の話でよく協力する気になったな。一体どこで、俺たちにそこまでのやる気を感じることが出来たんだ?」

「正直、貴方のような人間は大抵の物事に対して興味がないのでしょう。とても偏った何かを愛していて、それ以外はどうでもいいと感じている。本来手を貸すのに値しない人物です」


 中々言うのだな、この女王…。


「ですが、そんな貴方でさえ守りたいと思わせるそのMr.パンプキンという男……きっと、余程通りのために頑張っているのでしょう。そんな姿が、貴方のような人間の心を動かした」

「……さぁな。その言葉には、賛成も肯定も出来はしない。ただ協力してくれるのならそれでいい」


 つまり女王は、何よりもパンプキンを信頼したという事なのだろう。

 俺を信頼していない事は癪に障るが、俺が相手の立場なら俺をきっと信用なんてしない為、まぁ仕方がない事なのだと飲み込むことにした。

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