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第三十話①

 目の前には目を見開いて馬鹿な顔を浮かべるアカリの姿と、冷静さをかく事を知らない女王様の姿があった。

 女王様の姿はあの国王と同い年とは思えない程若々しく、それなのに国王よりも威厳を感じさせる風貌を持ち合わせていた。


「アンタどうやってここまできたのよ? て言うか話聞いてたわけ?」

「あー、全て聞いていたとも、一言一句漏らさず丁寧にな」

「やってる事、ストーカーと変わらないって気づいてる?」

「まさか、俺はお前の安全を考慮したまでであって、褒められはしても貶されるような行為はしていないぞ」


 勿論そんな善人としての気持ちではなく、ただ早く話を進めたいが為にアカリの会話を盗聴していただけだ。


「貴方がマヤト様……最強の魔法使いの?」

「疑っているのか? ならば何か見せてやる。空を割くか、それとも太陽を2つに割いて見せようか?」

「いいわよそこまでしなくて、もっと簡単な方法はないの?」

「いえ、今はそれを証明しなくて結構です。仮に貴方が最強の魔法使いだとしても、私が動くかどうかは別問題ですから」


 強さのみで作戦を決行するか否かの判断はしないと言うことには納得がいく。

 仮に武力最強の仲間がいたとしても、知恵や作戦を練らない限り、目的を達成する事は困難だからな。


「急かすようで悪いが、出来れば今日中には答えが聞きたい。もしお前が動いてくれなければ、また別の作戦を探さなければいけなくなるからな」

「今日中ですか……仕方がない事なのでしょうけど、難しい話ですね……」


 すると女王様は床にハンカチを敷いて、そこにメイドさんの頭を退かした。

 そしてゆっくりと立ち上がった後、ドアを開けて辺りを確認して見せる。


「こちらです。監視が来ないうちに、急いで下さい」


 監視が来ることもある事を知り、アカリがそれにバレなくてよかったと思いながら、俺たちは女王様について行って、直ぐ隣の部屋へと入っていく。


「……凄いわね。圧巻だわ」


 中に入ると、先ほどの部屋がドールハウスかと思うほど大きさの部屋が広がっていた。

 スペースが広いのもそうだが、何よりも天井の高さがこの部屋の広さをより際立たせている。

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