第二十九話④(アカリ視点)
「最強の魔法使いですか……それを信用出来るほど、私の心は綺麗じゃないですよ」
そう易々と信用してくれるほど、女王様は馬鹿ではないらしく、私は信じてもらう為の説明を始める。
「今日の午前中に城の一部が破壊された事はご存知ですか?」
「勿論、物凄く大きな音が鳴りましたからね。……なるほど、そう言う事ですか」
「はい、それらを引き起こしたのは、全てマヤトの魔法によるものです」
何と言うか、マヤトの個人情報を漏洩させている気分になるが……仕方がない事だ。
後で軽く謝罪しておこう。
「ですが、それ程の魔法で世界一というのは……」
「あれはマヤトの使う魔法の極々一部でしかありません。アイツが本気を出せば……多分世界を壊すことすら可能でしょう」
大袈裟に言っているのではない。これは私の推測でしかないが、事実だ。
私自身、アイツの力がどれ程の物なのか底を知らない。
だがそう言い切れるほどに、アイツの力は巫山戯た代物なのだ。
女王様は疑いの目を止めようとしない。
だが、こんな無茶苦茶な話を蔑ろにしないで真面目に聞いてくれていると言う事は、少なからず本当に、できれば通りの事を救いたいと考えてくれているからなのだろうか。
「ならば何故その力を使って、通りを守ろうとしないのですか? その話が本当なら、この国を滅ぼす事だって可能な筈です」
「アイツは殺戮を好むほどのクズではないですし、……そして何より、魔法を制限して過ごしていますから」
「……それはどうしてですか?」
「私がなるべく強力な魔法は控えるようにといったのもありますが、何よりも魔法の使用を最低限にしている理由は、強すぎるとつまらないからでしょうね」
「強すぎるとつまらない……ですか?」
「えー、自分から力を手にしていながら、そんな事を口にする。馬鹿な奴なんですよ」
話を終えると、女王様は下を向いて考える素振りを見せ始めた。
私の話に乗るのかどうかを考えてくれているのだろう。
暫くして、ようやく考えが纏まったのか、私の方に視線を向けて、こんな提案をし始めたのだ。
「その方に、一度あってお話がしたいです」
確かにそう思うのが普通だなと納得して見せたが、直ぐにここにアイツを呼ぶ事は困難な為、その事を伝えなければならない。
「可能ではあると思うのですが、少しばかりの時間と、女王様にご協力いただきたいです。アイツをここに連れてくるとなると、変装用の道具などが必要になると思いますので」
「いや、そんなものはいらん。話をするのなら、とっと済ませるぞ」
「……は?」
横を見ると、先程から俺はここにいたと言うように、マヤトがその場に堂々と立っていたのだ。




