第二十八話②(アカリ視点)
兵士の後をついていき、大きな門を抜けると、難なく城の中に潜入する事に成功した。
兵士はそこら中を歩いており、多少動き回っても目立ちはしなさそうだ。
マヤトも潜入にはさほど苦労はしなかったと言っていたが、どうやらこの城は余程警備が薄いみたいだ。
本来潜入することが、そもそも困難な筈なのにこうもあっさり言ってしまうとは、城の管理のずぼらさが感じ取れる。
そんな事を考えながら廊下を進み、辺りを見渡してみるが、辺りには目を痛めてしまう程の装飾品やインテリアがそこら中に配置されていて、私は思わず目を細めた。
広い廊下だと言うのに何処にいてもそれなのだから、居心地がとても悪い、もう既に帰ってしまいたいと思うほどだ。
兵士はチラホラと見かけるが、固まった位置に大勢いるわけではないみたいで、今のところは見つかる気配すら感じさせない。
マヤトの書いた地図を頼りに、私はひたすらに歩き続ける。記載されている情報によれば調理場は一階にあるみたいで、階段すら利用しなくて済みそうだ。
「ここを真っ直ぐいったらつくみたいだけど……あいつ、かなり城の中を見て回ったみたいね……」
城の内装はとても広く、一つ一つ部屋を調べていれば数時間は掛かってしまうほどで、全部屋ではないにしろ、よくもまぁこれ程までの部屋の数を調べて回ったものだなと、少しばかり関心を覚えた。
すると少し進んだところで、何やら料亭から漂ってくるような、食欲を掻き立たせるいい匂いが鼻を掠めた。
どうやらマヤトの言うとおり、この先に調理場があるみたいだ。
私は真っ直ぐにその道を進み、そこでようやく目的の場所に辿り着く。大きなドアがあり、それをまだ開けてもいないがただ寄ってくる香りでわかる、ここが調理場で間違いないだろう。
私は周りを見渡し、人がいないことを確認して、この近くの目立たない場所で張り込むことにした。
料理の匂いがすると言う事は、既に調理を始めているということだ。時刻は夕暮れ時、間違いない。
これからここにくる人間は、きっと料理を運ぶもの達だろう。
もしそうだとすればそいつについていけばいいわけだが、ここで一つ問題がある。
「一体誰が、女王様の料理を運ぶのかよね……」
誰が女王の元に料理を運ぶのか、果たして目視でわかるのだろうか。そんな不安を抱えながら、私は人通りの少ない曲がり角で、調理場を覗きながら待機し続ける。




