二十六話③
「おいパンプキン、もう通りに向かっているのか?」
「今城を過ぎたところです。マヤトさんはもう城を出た後ですか?」
「城を過ぎたところ……ならば直ぐそばにいるのか?」
城を出たばかりの俺は、城の近くにいるというパンプキンの言葉を聞いて辺りを見渡した。
すると妙に人だかりが出来ている箇所を見つけて、俺は好奇心からそこへと近づき、覗き込むようにして何に人だかりが出来ているのかを確認する。
そこには予想外な事に、疲れた顔をしたパンプキンがいたのだ。
よく見てみれば周りを囲んでいる者は女ばかり、そして被り物を脱いだパンプキンを被っている。
これだけで俺は自体を察して、その場から小走りで去ろうとする。
「ん? マヤトさん、こちらです」
俺は迷う余地なく無視をしたが、パンプキンは俺よりも少し早いペースで歩いて俺の元へと追いついてくる。
「何だお前は、俺がイカれ女と揉めている間に、まるで物語の主人公のようなハーレムを楽しんでいたのか?」
「まさか、とんでもない。皆さんには情報収集に協力していただいたまでです…寧ろ私は、あまり顔を見られる事は好きではないので、少し辛いまでもありました」
そうパンプキンが話す間にも、後ろからは黄色い声援が飛び交ってくる。
「かっこいい」だの「可愛い」だの、思いつく限りの容姿に対する褒め言葉を投げかけており、皆の目はまるでハート型になっているようにも見えてしまう。
「あんな言葉を投げかけられても、嬉しいとは思わないのか?」
「褒めてもらうこと自体は、嫌な気はしません。ただ皆が褒めているものは、皆に見せるつもりのない顔のことばかり、それはあまり嬉しいこととは言えませんね」
「そうか、その立場にいてまだ不安を嘆くとは、随分と図々しいとは思うがな」
「そう言った意味で言ったわけではありません。…それくらい、理解はしていただいているでしょう?」
「…理解していても、腹立たしいものは腹立たしいんだ。女に好かれる事に嫉妬していると言うよりも、主人公のような待遇が気に食わない」
何ともみっともない事を話しながら、俺は通りへと急いで戻っていく。
ひとまず通りについたら作戦を聞かなければならないわけだが、果たしてそれで問題は解決してくれるのか。
これ以上厄介事になる前に何とか蹴りをつけたいと思うが、そう言ったことを考えると妙に空回りをしてしまう傾向が俺にはある。
…癪ではあるが、アカリにも一度意見を聞いてみるか。
何とも迷いながらもそのような結論が出たところで、ようやく俺たちは通りへと戻ってきたのだ。