第二十四話③
「どう言った……仕掛けだ?」
俺は首を絞められながらも、か細い声でそう問いかける。
意識が遠退かないように必死になっているのだ。
「私の魔法ですよ。触れた者は魔法が使用出来なくなると言った、神に与えられし最高の魔法です」
彼女はそう言っているが、それでは納得のいかないところがある。俺は彼女に拘束される前から魔法が使えなくなっていた、つまりは魔法が使えなくなったのは、彼女が俺に触れる前からだという事になる。
「もっと詳しく話せ……お前の言っていることでは、納得がいかない……」
「うーん、仕方がないですね。特別に教えてあげますよ」
俺を捕える事が出来て機嫌がいいのか、二つ返事で彼女は話す事を了承してくれた。
そのまま少し嬉しそうにしながら彼女は話を進める。
「私はこの魔法を何年もかけて強化してきたのです。相手に触れるだけで魔法を使えなくすると聞けば敵無しの力だと思われるかもしれませんが、実際そうでもありません。何故なら触れることは簡単な事ではないからです」
それはその通りだ。実際こいつがあの場で俺に急に触れようとしてくれば、何かを察して瞬時にそれを避けていただろう。何としてでも触れらる隙をつくろうとはしなかったはずだ。
「だから私は、触れずとも相手の魔法を使えなくする力を得ました。その正体は、匂いです。私の体から発する匂いを嗅いだものは、問答無用で魔法が使用できなくなるのです。ほら、分かりますか? 魔力が抜けていくのを感じるでしょう?」
そう言って手汗のかいた掌を、俺の顔に被せてくる。これ以上息を吸う事を制限するのはやめてほしいものだ。
魔法の使用がより困難になっていくのを感じて、コイツが言っている事が全て事実である事をわからされてしまった。
そこでようやく、先程コイツが急に脱ぎ始めた奇行の意味がわかった気がした。
肌をさらす事で、俺により匂いを届きやすいようにしていたのだろう。俺が数時間前逃げようとした際にこれを実行しなかったのは、国王の前だからといったところだろうか。
なるほどと徐々にコイツの行動理由がわかってきて、スッキリとした気分になっていく。
何とも馬鹿馬鹿しくもありふざけた魔法だが、あまりにも強力だ。相手の魔法を制限するとはな。
それにこの、コイツ自身の力の強さ…これでは俺のような魔法任せの魔法使いは彼女になす術はなく敗北してしまうだろう。
さて、そろそろ息も限界に達しているがどうしたものか。正直、今から巻き返す手段はいくつか用意はしてある。
当然だ。俺という人間は、そう言った事を怠らない。
この世界にきてまず恐れたことは、俺が死亡した場合、そして魔法が使えなくなってしまった場合のことだったからな。既に打開策は用意している。
では何故それをしないのか……理由は簡単だ。
コイツに接触されていることで、もう何も考えられなくなってしまっている。俺は女に手を触れられただけでも飛び跳ねてしまうような人間だ。
それなのに下着姿で肌を密着され、胸を背中に押し付けられているとなると、もうどうすることもできない。
逃げる事すら叶わないのだから、もう無理だと諦めさえ覚え始めているのだ。