第二十四話①
「全く、今からする事があると言うのに、無駄な体力を使いたくはなかったのだがな」
「貴方がいちいち突っかかってくるからでしょ!」
体力をある程度使い切った辺りで、2人で言い合いを切り上げた。俺がそうであったように、コイツもこれ以上続ける事を不毛に思ったのだろう。
「あの……そろそろよろしいですか?」
「すまないなパンプキン。早速向かうとしよう、無駄な時間を過ごしてしまったからな」
「あんたのせいでしょ」
俺とパンプキンは店を出ようと扉を開ける、この際俺はアカリの方へと視線を向けながら、不要である気もしたが、一応一声かけておくことにした。
「何かあったら通信するんだぞ、忘れるなよ」
「わかってるわよ。私、馬鹿じゃないから」
「それはどうだろうな」
「いいから早く行きなさいよ。早くいって、早く解決してきなさい」
余程暇なのか、アカリに強くそう言われながら俺は店を後にした。
――
「ここからは別行動だ、お互い何かあればこの通信装置で話す、それでいいな?」
「えぇ、検討を祈ります、マヤトさん」
あの後早速街へと向かったが、既に時刻は14時を過ぎてしまっていた。思っていたよりも、徒歩だとここまで時間がかかってしまうらしい。
俺たちは今、城の近くへと来ているのだが、既にお互いが体力を半分以上削ってしまっていた。
ただ走るだけでも疲れるのに、俺たちはいくつかの約束事を、向かっている最中に相談しながら決めておいたのだ。
話しながら走るというのを生まれて初めてやってみたわけだが、ここまで疲れるものとは思いもしなかった。
早速パンプキンは街の中へと姿を溶け込ませるようにして姿を消して、その後すぐに俺は門を目指した。
2人で決めたことは大きく分けて2つ、1つは何かあれば逐一通信魔法でその事を相手に伝えること、そしてもう1つが、どちらか片方が有益な解決策を見つけた時点で、お互いに通りへの帰還を目指すというものだ。
解決策は大いに越した事はないが、今は時間がほしい、1つでも見つけた時点でそれを実行に移すのが得策だと考えたのだ。
俺は城門の前へと辿り着くと、城の中へと入ろうとする複数の兵士と共に中へと入った。
この城は外装から見て分かる通りあまりに広く、中を調べ上げるのにかなりの時間を必要としそうだ。
あまりもたついている暇はない、俺は小走りで城内を見て回ることにした。
――
愛も変わらず下品な程の明るい装飾品が目に触る、太陽の光が反射して一苦労だ。
さっさと何か情報を得たいところだが、どの部屋を見て回っても、置いてあるのは本やら金属類のインテリアなどのみで、大したものが見つからない。
俺は何かこの国の弱い部分を見つけ出せればなと考えている、それを盾に通りへ攻めいる事を辞めさせるのだ。
少しばかりヴィランのような行動かもしれないが、先に仕掛けてきたのはコイツらだ。これはきっと正義の行いなのだと自分で自分に納得させながら、先へと進んでいく。
「おい、何故一般兵がこんな場所にいるのだ」
すると突然、背後から力強い言い方でそのように声をかけられる。
俺は顔を見せないように帽子を深く被りながら、後ろを振り返らずに返事を返す。
「……まだ新人なもので迷ってしまったのです。宜しければ、元の道への経路を教えてはくれませんでしょうか?」
「ほう…迷ってしまったのか…」
今は2階の中心部にいる、そこまでうろついているつもりはまだなかったのだが、もう不審に思われてしまったみたいだ。
仕方がないが一度戻る事になりそうだ。
面倒ではあるが、バレて仕舞うのが1番面倒なのだから、仕方がない。
「元の場所へ戻る必要はないぞ」
「……ですが道が誤っていると…」
どういうわけか、俺に声をかけてきた者はそんな事を言い始めた。
そう言ってもらえるのは有難いが、何処か様子がおかしい。それにこの声…何処かで聞いた事があるような…。
「私は何故この場所にいるのか聞いただけだ、何故ここにいてはいけないものだと思ったんだ? 何かやましい事があるのか?」
「…滅相もございません」
「そうか」
そう言って俺へ声をかけてきた者が、背後から俺の被っていた帽子を剥ぎ取るように奪ってきたのだ。
勢いよく後ろを振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべる王国騎士長の姿があった。