第二十三話①
「んぁ!?」
俺はこれまで生きてきて、一度も出したことのない声を喉から発してしまった。
アカリがいたのなら、一生揶揄うネタにされていただろう。ここにいなくて良かったと心の底からそう思う。
平然と被り物を脱ごうとしているパンプキンの態度もそうだが、既に半分顔が見えかかっている事に偉く驚いてしまったのだ。
見てみたいがこれまで絶対に取ろうとはしなかったものだ。果たして見てもいいものなのかと躊躇してしまう、俺は明らかに動揺してしまっていた。
すぐさま俺はパンプキンの腕を押さえて、それ以上被り物を脱がないようにしてみせた。
少し心の準備をさせてほしいのと、確認をさせてほしいのだ。
「少し待てパンプキン。そのだな…見てもいいのか、顔を…?」
「……そうですね。本来あまりみせたいものでもないのですが……今のうちにこれがない事に慣れておかないと、街への潜入の際には外さないといけないので」
そう言ってゆっくりと被り物を脱いでいき、案外あっさりと彼は顔をその場に曝け出した。
整った目鼻立ちに、何処か幼い容姿、いわゆる美少年というやつだろうか。
昔見ていたサイトでよく広告で出てきた、乙女ゲームの主要キャラにそっくりだ。
もっと話し方を見るに、容姿は紳士的なお兄さんのようなものを想像していたが、予想は大きく外れたな。
俺は何だか思っていたよりも整った顔立ちを見て腹が立ち、少しばかり頬をつねってやった。
「……何をするのですか」
顔に似つかない可愛げのある表情、こんなものギャップの塊だ、昨今の流行りでしかない。
自分の容姿に自信がないわけではないが、こんなにも整った顔立ちをしていながら隠していた事に、そして何だか性格も顔も良いコイツに腹が立ち、通りに着くまでの間ずっとちょっかいをかけてやった。
――
通りに着くとパンプキンは一度被り物を被り直して、俺たちは一度アカリの待つ喫茶店へと赴いた。
そこが最も辺りを見渡せる場所のようで、アカリはそこに移動したみたいなのだ。
「それで、結局交渉も出来ずに相手を脅して去ってきたってわけね」
喫茶店へ辿り着くいて早速、今日起きた事を問われた為答えると、アカリはその場でコーヒーを飲みながら座りながら天を仰いだ。
「俺が一方的に脅したわけじゃない。相手が先手で仕掛けてきたからな、仕方がなくだ」
「それはわかってる…あんた達が悪くないってことは……だけど、状況は最悪ね」
アカリが落ち込むのも無理もない、最初から相手が交渉などするつもりがない事など察してはいたが、出来る限り穏便に解決して通りの存続を約束する考えだったのだ。
それらが全て失敗に終わったとなると、嫌になってしまうのも分かりはする。




