第二十二話③
相手側は成す術を無くしたのか、何も口にする事も行動に起こす事も出来ず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
ならばもうここにとどまる理由はないと思い、俺は撤退する事にしてパンプキンに声をかけようとする。
一度通りへと帰り、作戦を考えるのだ。
「それじゃあ行くぞパンプキン。あの手のひらに乗ってくれ」
「何を、まだ戦いは終わっていないぞ!!」
「今日はここまでだ。これ以上続けたのなら、いよいよ犠牲者がで始めるからな」
お互いが人質をとった状況で戦闘を行うなど、どうなるかはわかっている事だ。
そのような事を俺はしたくないはない。
王国騎士長もそれには理解を示したようで、腹を立てた様子を見せながらも、これ以上俺たちに何かしようとはしてこなかった。
俺たちは手のひらの上に飛び乗って、それに運んでもらう形で先へと進む。
「貴様ら! ……もう後戻りは出来ないからな!」
すると後ろからそのような声が聞こえてきた。
そのような事はこちら側も既に理解はしている。今後の作戦を練らなければならない。
「あ、あー。聞こえてるかしらマヤト?」
「あー聞こえているぞ。何かあったのか?」
「何かありそうだったけど、どうやら大丈夫みたい。ずっと奥の方で兵士の姿が見えていたけど、既に撤退したみたいだから」
アカリからはそのような通信が送られてきた。
恐らく交渉は決裂した事を報告されて、撤退したのだろう。
俺はアカリとの通信を切って横に目を向けると、パンプキンは珍しくその場に座りながら俯いていた。
交渉が上手くいかなったどころか、王国を怒らせてしまったのだ。結果としては、どう言い訳をしようとも失敗だろう。
「やはり戦争しか…方法はないのでしょうか……」
「そうかも知れない。だが大切なものを守る為なんだ、これは争いというよりも、理不尽に対する抵抗でしかないと、俺は思うぞ」
「……ですが、先代は戦わずして奴らに勝利したのです。だからこそ、通りは未だ明るい心情で暮らせている。皆に悪意などと言った、醜いものを持ってほしくはないのです」
通りの長としての、悩みなのだろう。
こんな彼だからこそ、通りの皆に慕い、尊敬されているのだと思う。
俺はそんな彼を慰めるかのように、新たな提案を持ちかけた。
「何かまだ、方法はあるかも知れない」
「…信頼しても?」
「……確信などは持てない。だが、物語には案外都合のいい何かが転がっているものだ。それを見つけるか見つけないかで、シナリオは大きく変わってくる」
「あるのでしょうか。まだ方法が……いや、それを探すのも長としての務めなのでしょう」
パンプキンはそう言って、自分を鼓舞するかのように立ち上がる。
「一度俺は城の中を調べる。だからお前は、、」
「えぇ、城下町を調べ上げます」
「だが気をつけろ。お前は見つかり次第殺されてもおかしくない。そんな被り物もしてるんだからな、俺よりも目立ってしまうだろう」
「それならばお気遣いなく」
そう言ってパンプキンは自身の被り物に手を伸ばして、グッとそれを取ろうとし始めたのだ。




