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第二十一話③

「何だこの魔法は……舐めた真似を……」

「嫌だろ、不快だろ、腹正しいだろ? 俺がお前に抱いていた感情は、正しくそれだぞ王国騎士長」


 そう言って俺は相手の持つ花束を手に持って、体をグッと近づけながら煽るような視線を送り彼女を見つめる。


「お前の負けだ王国騎士長、これじゃあ戦えないだろ?」


 王国騎士長は、顔を真っ赤にして小刻みに震えている。

 余程悔しく、屈辱的だったのだろう。

 いやー、スッキリしたものだ。満足だ、早く帰ってこの気持ちのまま横になりたいものだ。


「舐めるな!!」


 そう言って拳をふるってきた彼女から、慌てて距離を取る。

 驚いた事に、彼女はまだ闘志が残っているみたいで、花束を投げ捨てながら殴りにかかってきたのだ。

 ならば戦いを続けざるを得ないわけだが、俺としてはある程度ストレスも緩和された事で、これ以上戦いを長引かせたいとは思えない。


 その為、ある程度威力のある魔法を発動させて戦いを終わらせようとした、その瞬間だった。

 彼女は何かを自身のポケットから取り出したのだ。

 見た目では一体それが何なのかはよくわからないが、宝石店などで売っている、ネックレスのような形状をした縦長の鉱石に見えた。

 

 それを勢いよく俺の前に突き出してきたわけだが、正直どのようなリアクションを取ればいいのかわかったものではない。


「何のつもりだ?」

「見てわからないのか? この石が何なのか」


 この世界についてまだ詳しくはない俺は、何のことか分からず反応に困ってしまった。

 辺りにいる人間は、遂にそれを出すのかと言うような顔をしているが、本当にそれほどの品物なのかは謎だ。


「それで、結局のところそれは何なんだ? 俺へのプレゼントか何かか?」

「ふざけるな、そんなはずがないだろ! ……全く、調子の狂う相手だ……」


 相手は俺を面倒がるような仕草をした後、仕切り直しだと言わんばかりに、再びそれを前に突き出した。


「これは言わば通信装置、かつて存在した伝説上の魔法使いが開発したとされている、魔道具の1つだ」


 伝説上の魔法使いとは大きく出たものだ。俺は普通に通信をする為の魔法を使用している為、そこまで通信魔法が大それたものとして扱われているとは知りもしなかった。


 だが考えてみれば戦いをするにおいて、指揮するにおいて、通信が出来るか否かだけで大きく戦況は変わってくるだろう。


 そう考えれば、これ程自信満々にこの魔道具についての紹介をした事にも、多少ではあるが納得が出来た。


「それで、その魔道具とやらで何をするんだ? 応援でも呼ぶつもりか?」

「……哀れなやつだ。自分が既に追い込まれている事にも気がついていないのか?」


 俺が首を傾げると、相手は絵に描いたような悪役顔でいかにもなセリフを口にする。


「通りは既に包囲してあり、指示も出してある。この魔道具で合図をすれば、すぐ様攻撃を始めるようにな!」


 俺とパンプキンが予想していた通りの展開となった。

 やはり王国は最初から交渉をする気などあらず、通りを人質にして会話をしようとしていたのだ。

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