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第二十一話①

「おいパンプキン。確か、殺しは無しって話じゃなかったか?」

「交渉は無駄だと判断した、それだけのことです」

「「私の愛する人を」とか何とか言ってたのは関係ないんだな」

「……申し訳ない、怒りで我を忘れていました」


 案外すんなりと自分の非を認めるのだな。話がスムーズに進む事は助かるが、からいかいがいのない奴だ。

 だがそんなにも理性的な者が、あれ程までに怒りを露わにするとは、余程のことだったのだろう。

 

「……お前にとって先代パンプキンは、それ程までに大事な人物だったのか?」

「…後でしっかり話させてもらいます」

「あーそうしてくれ……ただその為にも、先ずはここから無事に脱出しない事には話が始まらないがな」


 俺たちの周りには、既に王国の兵士たちがこれでもかと集まり、剣などを構えられるなどして取り囲んでいた。

 国王はあんなにも粋がっていたのにも関わらず、銃を放たれた事が余程恐ろしかったのか、腰を抜かして倒れ込んでいる。

 そんな情け無い者を守るようにしながら、王国騎士長は俺たちに言葉を放つ。


「貴様ら、一体何をしたのかわかっているのか! この場で処刑されたとしても、文句を言えぬ愚行だぞ!!」

「「貴様ら」といった言い方はやめてもらいたい、俺は何もしていないからな」

「国王の前で許可なく魔法を使用した、それだけでも十分と言っていいほどの重罪だ!」

「めちゃくちゃだなコイツ……」

 

 国王を寧ろ守ってやったと言うのに、酷い言われようだ。俺はコイツの言い分に腹を立ててしまう。


「マヤトさん、作戦通り逃げるとしますよ」

「わかっている、そう焦るな」


 途端に地面は揺れ始める、王国騎士長は「地震か!?」などと言っているが、もしそうならば城だけが揺れている事に説明はつかない。

 城を壊す程の勢いで揺れを続けながら、徐々に城を包む影が伸び始めて、窓から何かが近づいているのがわかった。

 影が伸びていくのと同時に、兵士たちの怯えた表情はより情け無いものとなっていく。


「なんだあれは……何が起きているのと言うのだ」

「騎士長! 窓から何かが迫って来ています!!」

「そんな事はわかっている! 何かわからないから問題なのだ!!」


 その場にいる兵士は皆慌てて声を漏らす中で、遂にそれは窓を抉り取りながら姿を現した。


 窓のガラスが割れる耳障りな音と、壁を破壊する鼓膜を刺激するほどの重低音、砂埃が辺りを待って俺は目に入らないように目を細めた。


 窓から入ってきていた光を遮るように、ビルほどに巨大な手が地面から生えるようにして現れたのだ。


 遂に壁の一面は抉り取られて、室内だと言うのに強い風が入り込んできていた。

 兵士の一部が腰を抜かしてその場に倒れ込む中で、その手はゆっくりと動きながら、何かを掬い上げるように手のひらを上へと向ける。


「何をしている、あの手に飛び移るぞ」

「あれは貴方の魔法なのですか?…思っていた以上の実力ですね」


 これらは俺の魔法によるものだ。地底の砂を纏めて形造り、手や足などを生成する魔法、それらは生成後に自由に操る事が出来るといった優れものだ。

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