第二十話③
「何が……何が友好条約じゃふざけおって!! お前達のところの馬鹿女が卑怯な真似をしたから、父上は仕方がなくそれを提案したんじゃろうが!! 都合よく話を進めるなよこの若造が!!」
こんな大人にはなりたくないものだ。自分の気に触る事を言われ仕舞えば途端に声を荒げて、みっともないとは正にこの事だなとため息を吐いた。
呆れる感情と同時に湧き出たのは、愚かな国王が発した馬鹿女といった人物。それはもしやパンプキンの前任者であり、通りの創設者『Mrs.パンプキン』のことだろうか。
まだどんな人物かもわからないが、王国から通りを守り、友好条約を結ばざるを得ない状況にさせたと言ったのが事実であれば、その人物は只者ではなかった事になる。そう思うと途端に、関心が湧いて来た。
「…………」
パンプキンは珍しく下を向いて俯き、何も返事を返さないままでいた。
返事に困っているのかと様子を伺うと、被り物越しでもはっきりとわかるほど、怒っている事がわかった。
彼がここまでマイナスの感情を表に出すところをみるのは初めての事で、正直少し焦りを感じてしまう。
「国王陛下、本日は一度お開きに致しませんか。陛下は本日のお話の内容を、我々の不手際で何も存じておりませんでしたわけですし、また別の機会に話を纏めてから話をした方が良いかと思われます。」
不毛なやり取りを見かねたのか、王国騎士長が自分たちの不手際だと言った風にしながら、国王に対してそのような提案をし始めた。
流石にこのまま話を続けても埒が明かないとは俺も感じていた事だ。国王には一度脳みそを働かせる時間が必要だろう。
「何を言うか王国騎士長、今日決めねば我は通りに攻めいるぞ。我は話が長引くのが嫌なのだ、別日にまた話すなど真っ平ごめんだ」
この国王というものは…そんな軽い話ではないだろうに、立場をわかって発言をしているのだろうか。
するとパンプキンは途端に顔を上げて、国王をじっと見つめ始める。
それを不愉快に思ったのか、国王は「貴様、我を並んでおるのか?」と、怒りを見せ始めた。
けれどそれに屈する態度は見せずに、パンプキンは話を始めた。
「もう大丈夫です、愚かな国の王よ。そんな手荒に我々の愛すべき故郷を扱いながら、私の愛すべき彼女を愚弄するとは、もう我慢の限界というものです」
そう言ってパンプキンは国王に向かって拳銃を構えた。
何処から取り出したのかはわからない、急にそれが現れたのだ。
そしてそれの引き金を迷いもなく引いたその瞬間、俺は慌てて魔法を発動させた。
「視界の先に広がる我が不都合よ、塵も残さず砕け散れ!!」
特に必要のない魔法の詠唱を唱えた途端に、放たれた弾薬とパンプキンの所持していた拳銃は瞬く間に消滅する。
俺の所持する魔法の中でも、恐らくかなりの上位で強力な魔法だ。
一度使ってからこの魔法は2度と使う機会はないと思っていたが、まさかまた使用する機会が訪れるとは驚きだ。