第二十話②
「どうする? 話し合いなど無駄な気がしてきたぞ」
「それもそうですが…仕方がありません。ここで何かを起こせば、国と通りでの戦争が起きてしまいます」
誰にも聞かれぬように小声でそのような会話をしてみたが、パンプキンはやはりまだ交渉を続けていく考えを示した。
やはり俺よりも背負っているものが大き者の責任として、感情の思うままに行動が取れないという事だろう。
面倒な立場にいるなと、こいつを不憫に思った。
「はぁ……仕方がない、話すとするか……それで、どうしてあんな古びた通りを未だ守ろうとするのだ? 煌びやかさの欠片もない、広いだけの薄汚れた通りじゃないか」
「……通りは歴史的価値のあるものであり、我々にとって愛すべき故郷なのです。皆、これからも通りを盛り上げていく為に、日々通りの名物であるお菓子の制作に力を入れています。それも功を奏して、外部からの客人も年々増えているのです」
相も変わらず失礼な態度を取りながら、無礼な言葉を投げつける国王に対して、落ち着いた様子でパンプキンは通りの必要性を述べた。
だが残念な事に、パンプキンの発言が国王に響いている様子は見られない。
「あんな場所に歴史的価値などあるはずが無かろう。我の父上が滅ぼした国の残骸でしかないわ」
そう言えば、この国が出来る前から通りは存在するといった話が出ていた。まさかこの馬鹿国王の父親がそれを滅ぼしていたとは知りもしなかった。
そう考えるとよく通りだけでも生き残ったものだな、本来なら潰されてもおかしくないだろう。
何かその時には、特別に残しておく価値があると判断されたのだろうか。
「我は気が食わないんのだ、あの通りが残っている事がの……父上の唯一の心残りじゃ、腹ただしい」
なるほどな、今の発言で大体ではあるが話が見えてきた。
きっと、1代目の国王は通りを滅ぼす事が出来なかったのだ。
その理由まではわからないが、少なくとも現国王は、父親が滅ぼすことのできなかった通りをよく思っていないみたいだ。
「……お言葉ですが国王陛下、あの日通りは初代国王と友好条約を結んだ筈です。それも、初代国王の提案で…」
そうだったのかと、この国についての歴史を聞き入っていると、王は露骨に腹を立てた態度を見せ初めて、しまいには勢いよく立ち上がり、大声を上げながらパンプキンを怒鳴りつけ始めた。




