第二十話①
「マヤトさん…気をつけて下さいね」
「すまないな…気をつけるとする」
声を抑えていたとはいえ、肩を多少震わせてしまってた事で、俺が笑いを堪えている事をパンプキンには気付かれてしまった。
これに気がついたのが国王側の人間だったのなら、少し不味かったなと気持ちばかりの反省をしながら、再度姿勢を正して前を見つめる。
「それでは、国王陛下のお時間を奪うわけにも行きませんので、早速本題に入らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「そうだな。貴様のいう通り我は忙しいのだ。早速だが話を始めよう」
いよいよ、今後の通りについての話し合いを始めるみたいだ。
もっとテーブルなどを囲むなどして、話し合いをするものだと思っていたが、どうやらこのままお互いが離れた距離であるこの位置から、話をするみたいだ。
もっと近づくべきではないのかだとか、話しづらくはないのかと首を傾げながらも、口を挟まずに話に集中する。
「それで、一体何の話であったか……」
「通りについてです。国王陛下」
何処までも適当な奴だな。こんなんでよく国王としてやっていけているものだ。
「そうであったそうであった。あの通りを無くすといった話であったな。遂に決心がついてくれたみたいで、我は嬉しく思うぞ」
この発言で俺たちは勿論のこと、周りにいた国王側の人間までが驚いた態度を見せた。
慌てて側近らしき人物が国王に耳打ちで話をする。
「何、まだ決心がついておらんのか!? ではこやつは何をしにここへきたというのだ!!」
どうやら国王は、今回この場で何を話すのか理解できていなかった、もしくは知らなかったみたいだ。
呆れたものだな。ここまでくると笑いすらも枯れてくる、どんな馬鹿だってここまで失礼な事はなかなかできないというものだ。
「国王陛下、私としましては通りをこれからも存続させて行きたいと考えております。今日は、それについてのお話をさせていただきたいのです」
あのような態度を取られたにも関わらず、パンプキンは国王との会話を続けようとしている。
だがやはり怒りは感じているようで、拳を血が滲む程に強く握りしめていた。
それもそうだろう。自分がなんとしてでも守りたいと思っている大切な場所を、あろう事か既に潰す気でいたと言われてしまえば、腸が煮えくり返るほどに腹を立ててしまうだろう。
よくそれを言葉で吐き出さずに耐えているなと、自分にはできない事でもあり、感心してしまった。
一方の国王は、通りの存続についての話し合いだと知った途端、とても面倒くさいといったように、一気に体を崩してダルそうな態度を見せ始めた。
先程からの態度や言動を考えるに、この国王紛いの何かは、余程1代目の国王である父親に甘やかされて育った事がわかる。
いや、正直それだけで説明がつくのかはわからない程に、どうしようもない人間なのだ。




