第十九話③
「この先の扉を開ければ『王の間』となっています。くれぐれも、無礼の無いようにお願いします」
「承知しておりますとも」
俺は返事をしながらお辞儀をして見せた。
王国騎士長はそれを確認すると、ゆっくりと大きな扉に手をつけて開いていった。
その先に広がっている空間は、思っているよりも広いもので、学校の体育館の約3倍ほどはあるであろう面積に、天井は首を真上に上げなければならないほどに高いものとなっている。
その最奥には玉座が堂々と1つ置かれており、そこには深々とある1人の男が座っていた。
正しくそれがこの国の王なのだろうが、思っていたよりもあまりに雰囲気がない。
50代ほどの一般人のような顔つきであるが、それに似つかない程豪華なマントや杖を持ち、何とか威厳を出そうとしているようにしている。
俺たちは中央まで歩かされて、国王相手に頭を下げた。
すると王国騎士長は俺たちの下げた頭が真上を向いていると思わせるほどに、深々と膝をついて頭を下げ始めた。
「国王陛下、ご命令通りパンプキン殿をお連れ致しました。隣におります人物は、パンプキン殿の側近となっております」
「うむ、ご苦労だったな王国騎士長。少しはじの方にはけておれ」
王国騎士長が話終わると、国王が遂に話を始めたのだが、何だかその話し方に違和感を感じた。
「うむ」と言った返事に「〜おれ」といった語尾、あまりにも王様のテンプレが過ぎるぞ。
勿論そう言った王がいる事も理解はしているし、そう言った王がいるからこそテンプレになっているのもわかる。
だがこいつの話し方は何処か、演技くさいというか、王という存在を無理矢理作り上げて話しているかのように思えた。
「本日はこのような場を設けていただきありがとうございます。国王の広いお心に感謝します」
するとパンプキンが口を開いた。俺はそれに続いて何も話さないまでも、お辞儀はしておく。
「寧ろ我こそ感謝を申し上げたいものだ。はるばるよく来てくれた」
「滅相もございません。寧ろ今まで来ることを拒んでいた事を申し訳なく思います」
「そうか。そう思わせるほど我の名は、とどろいたというわけじゃな」
「いや、俺はお前の名前すらしらねぇよ。勘違いするな」と言ってやりたい。
何故この瞬間に調子に乗り始められるんだ。
俺はコイツの態度があまりにも腹正しく思えた。
すると王の直ぐ側にいた側近が、何やら耳打ちで話を始めた。
王はそれを聞くと「それくらいわかっておる!」と怒って見せ、そのまま俺たちの方へと視線を向けた。
「もう知っておるとは思うが、一応話しておこう。我が名は『バルクス・フレッツ』この国バルサッツ王国の2代目国王である」
高々とそう宣言しているのに対して、あまりに威厳を感じさせないその姿は、何とも滑稽なものであり、俺は笑いを必死に押し殺していた。