第十九話②
暫くして、ようやく城の姿が見えてきた。
バルサッツ王国首都の中心にデカデカと立てられているその城は、この見栄を張った国民性の城にはぴったりな姿をしていた。
何ともセンスの感じないただ乱雑に貼りつけてあるダイヤなどの装飾品に、城自体も無駄にデカく作られている。ここまで行くと威厳よりも、下品だと言った感想が溢れてきた。
「どうですか我が国が誇る城は、立派なものでしょう」
「あー……まともな感性を持ち合わせた人間には、良さがわからないだろうな…」
「そうでしょうそうでしょう。常人には理解など叶わない最高の城なのです」
思わず皮肉を吐いてしまったが、プラスに捉えてくれたみたいでよかった。
パンプキンはその間、城をじっと観察していた。城を見て何を思っているのか、被り物越しでは到底それらを理解する事は出来ず、かと言って質問するほどないと判断した俺は、ただこの後の作戦のことだけを考えていた。
――
門が開いて場内に入ると、騎士やら城に支えているであろうものたちが、横目で俺たちを観察してきていた。
どう言った意味での視線かはわからないが、兎に角歓迎されている雰囲気ではない。
俺たちは馬車を降りた後、すぐ様騎士らしき風貌の奴らに囲まれて、身体中を隅々まで調べられた。
恐らく武器などを所持していないかの確認だろう。
それは理解出来はするが、客人であるはずのパンプキンに対してこの行動は、あまりにも無礼ではないのだろうか。
いくら王に会う前だとはいえ、この行動は「自分たちはお前を疑っている」と言っているようなものではないのか。
暫く黙って受け入れていたパンプキンだったが、1人の騎士が被り物に触れようとした途端、勢いよくその腕に掴み掛かった。
「失礼、被り物にだけはお手を触れないようにお願いしたいのです」
「ダメだ。この大きさなら十分に物を隠し持ってられるからな、確認させてもらう」
「ダメだと言うのは、こちらの台詞です。被り物に触れた面積に応じて、貴方たちに制裁を加えることになってしまいますよ」
争いを避けていたパンプキンだったが、これには反論をしてみせた。どうやら余程あの被り物には、強い思い入れがあるらしい。
「制裁とは無礼な、これは王による命でもあるんだぞ!従わないのであれば、この場で貴様を!」
「もう良い! ……下がっていろ。ここは私に任せておけ」
荒ぶる騎士を怒鳴りつけて黙らせたのは、奴らの上司でもあると思われる王国騎士長だった。
彼らは何も言い返す様子を見せず、そのままその場から離れて、パンプキンと騎士長は向かい合った。
「パンプキン殿、その被り物の中を見せていただく事は…」
「こればかりは申し訳ない。事前に話しておくべきでしたね。こちらの落ち度です」
「……いえ、構いません。ですがせめて、こちらをお使い下さい」
そう言って騎士長は、パンプキンにタオルのようなものを手渡した。
パンプキンの被り物は、年季が入っているのもあるだろうがかなり汚れている。
タオルを手渡したのは、そんな姿で王の前には行かないで欲しいと言った意味だろう。
パンプキンは言われるがまま、仕方がなさそうにはしていたがそのタオルを使い、被り物を拭った。
それを確認した後に、王国騎士長は王の間までの案内をしてくれた。
俺たちは言われるがまま城内へと入って行く。
城内も外と同じく煌びやかな装飾が施されており、目がチカチカとし始めていた。
ここに住んでいる者は、このような環境で本当に良いと思っているのだろうか。とてもこんな環境では落ち着くことが出来ない。