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第二話① アカリ視点

 打撲したような痛みが全身を襲い、私は意識を朦朧とさせながら、何もない茂みの上で倒れ込んでいた。


 そこに駆けつけてくれたのは複数人の男性。

 一体この人たち誰なのか、記憶が曖昧になっており、はっきりとは思い出せない。


「クラウン!!大丈夫か!!」

「しっかりしてよお姉ちゃん!!」

「こんなところで死んだら、ただじゃ済まないからな…」

「おい!!誰に許可取って目覚さなねぇつもりだ……許さねぇぞ」


 色んな言葉で、皆は必死に私に訴えかけてくる。

 余程心配してくれているみたいだ。

 

 そもそもどうして私はこんなところで倒れているんだっけ……そうだ、私は崖から突き落とされたんだ。


 パーティでいじめ紛いの事をする令嬢2人に注意をしたのだが、それで恨みを買ってしまったのだろう。


 私はパーティが終わった後、見ず知らずの人に崖で私を待つ人がいる事を聞き、そのまま崖へと向かった。


 そこで私を待ち伏せていたのは、いじめ紛いの事をしていた2人の令嬢、私を見るやいなやナイフを取り出し、崖へ私は追い込まれた後、そのまま突き落とされたんだ。


 あんなところへ、のこのこついて行ったのが間違いだった。 


 そんな後悔と同時に、ずっと不思議な感覚が私を襲っていた。


 この今感じている痛みが、一度味わった事がある気がするのだ。

 色んな記憶が混ざり合っている。気分が悪くて嘔吐してしまいそうなほどだ。


 そういえば私を囲んでいるこの人たち、何処かで見た事がある。

 

 そうだ、幼い頃からずっと一緒に遊んでいた幼馴染じゃないか。

 いや、確かにそれはそうだけど、何だかしっかりとこない。

 もっと前から知っている気がする。

 だがもっと前とはいつの頃だろう。

 それ以上遡れば赤子となる。

 

 もしくは前世だとか。


 頭の中で数珠繋ぎをする中で、私は全てを思い出した。


 それはこの世界で過ごした記憶、そして、前世の記憶だ。


「ここは……ゲームの中?」


 私は自分と言う人間がどう言ったものなのか、はっきりと理解する為に、記憶を辿り始める。


――

 

 あの日の私は、いつも通りの1日を過ごしていた。



「それじゃあまた明日ね」

「えー、一緒に帰ろうよー」


 終礼も終わりクラスから出ようとしたところ、友人のアリサに手を掴まれてしまう。

 

「今日は貴方、居残りでしょ?また明日一緒に帰ればいいでしょ」

「えーでもー」

「コラ、楠を困らせるな」


 アリサの手を私から離して、先生はアリサを注意するように睨みつけた。


「ホラ、楠は気にせず帰っていいぞ。今日も勉強で忙しいんだろ?」

「ありがとうございます先生、それじゃあねアリサ」


 私は駄々をこね続ける友達に手を振りながら、教室を後にした。


 この日から1ヶ月後には大事な試験が控えていた。

 その為この日も私は帰ってから勉強をするつもりでいたのだ。


「おっ?楠今帰りか?気をつけて帰れよ」

「はい先生、さようなら」


 私は通りすがった先生に軽く頭を下げる。

 すると後ろから、私にとって祐逸の後輩が走ってやってきた。


「楠先輩!また練習に付き合ってくれませんか?」

「いいよ。今日は難しいけど、また別の日なら大丈夫よ」

「ほんとですか?!やった!!それじゃあまたよろしくお願い先輩!!」

「うん。それじゃあね」


 私は挨拶を交わしながら靴箱へと向かっていた。

 そんなところに、靴箱近くで飲み物を飲んでいた親友のマヤが私に気づき、そのまま話しかけてきた。

 

「あっ!アカリじゃん!今日暇ならゲーセンいこうぜ!」

「私が暇じゃない事知ってて言ってるでしょ?マヤも帰って勉強したら?」

「アタシが勉強できない事知ってて言ってるだろアカリ?」

「あら、お互い様だったみたいね」


 私たちは共に笑う。


「あーそうだそうだ。話があって止めたんだった」

「何?話って」

「今週末にクラス会があるだろ?ほら、体育祭の打ち上げ」

「ええ、話は聞いているわ。勿論行くつもりよ」

「ほんとか?!よっしゃあ!!アカリが来ないと始まらないからな」

「大袈裟ねマヤわ」

「そんな事ねぇよ!楽しみにしてるぜ!!」


 そう言ってマヤは何処かへと走って言った。


 自分で言うのもなんだけど、私の学園生活は充実していた。

 元から気の強い私は、小中学校ではあまりクラスに馴染めずにいた。


 けれど高校に上がってからは、こんな私を頼れる人物だと皆は慕ってくれ、昔では考えられない程友達が増えた。


 ずっとこのまま、皆と楽しく過ごしていきたい。

 そんな幸せな願いを抱えたまま、私の人生は進んでいた。


「クラス会楽しみだけど、時間取れるかしら……不安がってても仕方ないわよね。取れるように努力しなくちゃ」


 私は帰り道でも勉強をしながら歩いていた。

 厳しい両親に勉強するように言われているからここまでやっているのだが、元から何かを学ぶ事は嫌いではない為、そこまで苦痛ではない。


 何よりこれは、将来の自分の為だと思い、私は努力を重ねていた。


「おーーい!アカリ!!ちょっと待って!!」


 すると後ろから、アリサがやってきた。

 アリサの息が切れた様子を見るに、居残りを抜け出してきたように見える。


 相変わらずだなとため息を吐きながら、一緒に帰宅できる事を嬉しく思った。


 私は少し離れた位置にいるアリサに見えるように、手を振ったあと、ゆっくりと近づいていく。


「全く、アリサ!居残りはどうしたの!」

「抜け出してきた!!それよりもマヤから聞いたよ!クラス会くるんだって!?」


 アリサは嬉しそうにしながらそう叫ぶ。

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