第十七話②
「変わった方達ですね。…それではお言葉に甘えさせていただきます」
パンプキンは俺たちの言葉を妄言として受け取らず、言葉のままを信じてくれたみたいだ。
あんな話、俺なら馬鹿らしくて疑うどころか呆れてしまうが、コイツの中身はあまりに純粋なものらしい。
その後暫く沈黙が続き、パンプキンは覚悟を決めたかのように事態の説明を始めた。
「我が国、バルサッツ王国がこの通りを無くしてしまおうとしているのです」
これは、やはり予想通りというかややこしい話になってきた。
国が絡むと言ってもどの程度かと思えば、通りvs国の状態じゃないか。
俺たちは通り側の人間な訳だから、当然国とやり合うことになる。
魔法を使えば国ごと消せるのだが、そうもいかないからこそややこしい。
「だからお前は狙われていたんだな。この通りの長を殺してしまうのが手っ取り早いと考えたんだろ」
だが少し待て、もし本当にそうだとすれば少し引っ掛かることがある。
あのクエストボードに貼ってあったのは、民衆のものばかりだ。つまりはこの通りを無くそうとしているのは国だけではなく、民衆との総意でもあるのか。
そう考えるとあれだな。何というか胸糞が悪い。
「でも、この通りは歴史が長いと聞くわ。どうしてそんな急に……」
「急、というわけでもないんです。これは数年前から向こうの国では出ていた問題だったそうで」
「何かやらかしたのか? 何の理由もなしに狙われるとは思えない」
「私たちの通りは創設当初から何も変わりません。強いていうのなら数十年前に増築したのが最後です。それも当時の国としては認められました」
当時の国という単語を聞いて、ようやく話が見えてきた。
「つまりはこの国が、バルサッツ王国になった事で話が変わってきたんだな」
「おっしゃる通りです。それ以前の国としては、寧ろこの通りを誇りに思ってくれていました。ですが今の国になってからというもの、この通りへの当たりが強くなり、無駄に広いだけの小汚い場所として扱われるようになりました」
この国の街に赴いた際、住人は皆見栄のはった姿をしていた。それがこの国の思想であり一般的な考えなのだろう。
そんな奴らだからこそ、この通りを小汚い場所と判断して消してしまおうと考えたのだろう。自分達にとって相応しくないと、自分たちのような高貴な人間の済む近くにあってはならないと、そう考えたのだろう。
アイツらならきっと、この通りを綺麗さっぱり無くした後、趣味の悪い煌びやかなことだけが取り柄の建造物で埋め尽くそうとするのだろうな。
「話は分かった。それで、俺たちはどう動けばいい? 指導者を始末しに行けばいいのか?」
「まさか、私としてはもっと穏便に済ませたいのです。…1週間後、私は王の間に招待されています。そこで交渉する際、貴方達には護衛を務めていただきたいのです」




