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第十六話②

 俺たちはひとまず、クエストなどが貼られているボードを見つけて、その中から依頼を探す事にした。

 良いクエストが並んでいるのではと言った期待とは裏腹に、そこに貼られていたのは穏やかな内容ではないものばかりだった。


「……予想通り報酬はいいんだけど、気分が乗るものじゃないわね」

「当たり前だ。これは一体どういうつもりなんだ?」


 そこに貼られてあったのは、討伐依頼件暗殺依頼『パンプキンを討伐せよ』と言った内容のものだった。

 それも、そこに貼られている紙全てが、同じ依頼内容だったのだ。


 俺たちは露骨に不快な態度を見せた。


 冗談のような内容だ。本来こう言った依頼は表で扱われるようなものじゃない。

 こんな依頼を出すものは周囲から攻められ、最悪捕まってしまうからだ。それなのにこんな堂々と貼られてあるという事は、街の人間はこれを容認し、警察などそういった機関までもがこれを認めているという事になる。


 そしてこのイかれた金額、数十万ゴールドから数百万ゴールド、やけにリアルな報酬金がまた生々しさを際立たせた。

 

 アイツに対してまだ俺たちは深い関係を築けていないどころか、友人とも言えない間柄、言うなれば知り合い程度のものだ。

 しかし関係が深くないとは言え、アイツが善人である事は、昨日の会話を通して理解が出来た。

 まだそこまで深く話した訳でもないのに、その評価はあまりにも早いのではないかと思うかもしれないが、通りの人々の奴に対する接し方、そして俺たち部外者にも親切に寄り添う心、これは正しく善というべきだろう。


「おい、先程から睨んでる女。この依頼についての説明が聞きたい。頼めるか?」


 定員は少し不機嫌そうな顔を向けたが、少しして返事を返してきた。

  

「……見ての通りです。カボチャ頭を殺せ。ただそれだけの事です」

「内容の意味が理解できないわけじゃない。何故このような依頼があるのか知りたいんだ。薬草採取なら薬の為、鉱石採取は装飾品作成の為、そう言った詳しい理由が本来はあるはずだ」

「……はぁ、お帰りください。1から話すのはあまりに面倒です」


 俺は相手の返答に何も言い返すことなく、アカリを連れて外へ出た。

 何か心に湧き上がる不穏な感情を押し殺しながら、沈黙を続けて少し歩く。


「さて、どうしようかしら? やっぱりパンプキンにはこの街に近づかないようにと話しとくべきよね?」

「アイツはあの通りに住んでから長いと聞く、この街の情報くらいは……既に知ってるんじゃないか?」

「そうだけど、万が一の事もあるわ。話しておくべきよ」

「…ならば一度通りへ戻ってパンプキンを探すぞ。あの見た目だ、直ぐに見つかる筈だ」


 当初の予定とは大きくズレてしまったが、俺たちはそんな愚痴を溢すことをしなかった。

 今頭にあるのはパンプキンのことのみだ。

 恐らくアカリは本当にパンプキンのことを気にかけているのだろう。そう言った人間だ。

 一方の俺は、善人であるアイツに危害が及ぶことを良しとは思っていないが、それと同時にどうしてこんな事に巻き込まれないといけないのかと、少しばかりの怒りを感じ始めていた。

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